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世田谷一家4人殺害事件の各種報道記事ファイル

世田谷一家殺害から3か月、進まぬ捜査に不安も

2007-01-24 | 世田谷-2001年報道
[2001年3月29日 読売新聞]

 東京都世田谷区の会社員宮沢みきおさん(当時四十四歳)の一家四人が惨殺された事件は、昨年十二月三十日の発生から間もなく三か月が経過しようとしている。警視庁成城署の特捜本部は、異例の百五十人体制で聞き込み捜査を続けているが、いまだ見えぬ 犯人に遺族や周辺住民のいらだちと不安は消えない。

 今月二十日過ぎ、特捜本部に一つの情報が寄せられた。現場近くのアパートで一人暮らしをしていた十九歳の少年が、昨年末から、荷物を残したまま姿を消し、年明けから勤務先に出社していなかった。

 血液型は、犯人と同じA型。遺留品のトレーナーや、韓国製テニスシューズの足跡から推定される「大柄な若い男」という犯人像とも一致した。しかも、通 勤経路は、現場近くを通る。

 特捜本部は色めき立ったが、間もなく、少年は帰省したまま無断で帰ってこなかっただけで、事件には無関係と判明した。

 同様に、これまで十数人が不審者として浮かんでは消えた。いずれも現場に残されていた犯人の指紋と一致しないことが決定的理由になった。犯人の生活圏とみられる世田谷区から杉並区にかけての聞き込み捜査で、指紋採取への協力者はすでに千人を超えている。

 捜査幹部は「まだ網にかからない情報がある」とする一方、「捜査手法を考え直さなければならない点もある」と率直に話す。

 情報提供は、匿名の電子メールによるものを中心に千五百件を超えているが、「当初はすべての裏付けに走り、多過ぎる情報に振り回されたところもあった」(捜査幹部)という。

 閑静な住宅街で起きた事件に「かかわり合いを避けたい」という傾向は根強く、生活パターンの変化から、不在がちな民家が多い点も捜査を難しくしている。

 聞き込み重点エリアのローラー作戦は八割以上を終え、遺留品や痕跡の追跡は、大量 生産の壁にぶつかっている。みきおさんと泰子さん(当時四十一歳)夫婦の周辺にも、事件につながるようなトラブルは見えてこない。

 しかし、特捜本部は、殺害方法や侵入ルートから、「犯人は必ず一家か現場を知っているはずだ」という見方を変えておらず、「指紋という有力な証拠がある限り、必ずたどりつくはず」と、解決へ向けた自信を崩していない。


 ◆「言いようのない喪失感」と宮沢さんの父親◆

 「道を歩いていても、ひげをそっている時も、『四人はもういなくなってしまった』と思うと、言いようのない喪失感に襲われ、ため息が出てしまう」と、みきおさんの父・良行さん(72)は話す。

 最後に会ったのは、昨年のクリスマスの前後。長女にいなちゃん(当時八歳)と長男礼ちゃん(同六歳)の二人の孫が「手作りでケーキを作った」というので出かけていった。新年には一緒に箱根旅行を計画していた。

 良行さんは、今月二十二日、にいなちゃんが通っていた小学校を訪れ、二年生の修了証書を受け取った。二学期の所見欄には「編み機を使ってクラスで一番早くマフラーを編み上げました」と記されていたが、三学期は空欄のままだった。

 宮沢さん宅前の都立祖師谷公園では、事件前に比べ、子どもを遊ばせる母親の数がめっきり減った。

 住民の不安の声を受け、都では、背の高い樹木の枝切りや、水銀灯の清掃などの夜間照明対策を緊急実施した。

 近くに住む主婦(50)は「事件が忘れ去られるのが怖い。解決しないとストレスがたまるばかり」と不安気に話した。

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