黒竜江に昇る龍

2011-12-04 22:04:16 | 鳥(Birds)


コウライアイサ(Mergus squamatus) Scaly-sided Merganser


早朝。まだ薄暗いうちに川原に到着した私達は、身をかがめて歩いた後、水辺の大きな岩の陰に身を潜めた。この場所から見える範囲は、コウライアイサの塒と言われている場所だ。コウライアイサが塒から採餌に出かけるまでの僅かな時間を狙えば、きっと見られるはずだ。私が身を隠すことに必要以上に神経質なのは、コウライアイサがとんでもなく警戒心の強い鳥だというイメージがあったからである。でも、実のところまだ見たことが無いものだから、どの程度警戒してくるかは推し量れない。
昨シーズン、別の川に出現した雌タイプ雄若鳥を探しに行った時から数えて今回が4回目のトライになる。

日が昇り始め、辺りの様子が伺えるようになった時。中州で寝ていたアオサギ達が目を覚まし、カルガモ達もモゾモゾと動き出した。
私はすぐに見回せる限りの川面や中洲を注視してみたけれど、コウライアイサはどこにも見つからない。
その後、しばらく川原を歩いてみたけれど代わり映えがせず、そのうち無情にも雨が降り出した。橋の下で雨宿りを始めた私達は意気消沈して、やがて会話も無くなった頃、私がポツリと言った。「もう今日は帰ろう。最後に、下流だけちらっと見て。」

もう殆ど希望を無くした私達が最後に立ち寄ったのは、コウライアイサの採餌場の1つと言われている場所。川原が見える位置まで堤防を上った私は、あっけにとられてしまった。中州で休む数羽のカワアイサ雌タイプに混ざって1羽、コウライアイサの雄が確かに居たのだ。
冠羽はウミアイサの比じゃない位にツンツン逆立って長く、脇には美しくて気品のある龍鱗模様がある。
コウライアイサはしばらくするとカワアイサと共に飛び立ち、また数100m先で着水した。飛び立った時にはウミアイサみたいに翼上面の2本の黒線が目立った。
堤防の道を散歩をする人が行き交う中で、平然と休んでいたコウライアイサ。警戒心がある程度強いということは確かだったけれど、思っていた程では無かった。それは、この場所の環境のためかもしれない。川原から見える堤防上を毎日、散歩やランニングをする人が沢山通りかかることで少し馴化していったのではないだろうか。今まで私が見つけられなかった大きな原因は、その移動性にあると思う。今回私が見ていた時にも、数10分おきに休息・採餌場所を行ったり来たりしていた。さらにこの休息・採餌場所さえも変遷していくから、逢うにはある程度「運」が必要になるのかもしれない。



【2011/11/15/神奈川 Kanagawa,Japan/Nov.2011】


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