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夫の母が倒れたら

ある日、突然。備忘録。

2019年07月01日 | 日記
某月某日;

20:15。夫の携帯の着信音が、一瞬鳴った。

遅めの夕食を準備していた私は、横で甘える子をあしらいながら
リビングのソファに寝転ぶ夫に声をかける。

「電話じゃなーい?」

スウェットのズボンをずり上げ、夫が充電器に近づく。

「あれ… 母ちゃんか。どうしたんだ」

着信履歴を確認すると、夫は姑に電話をかけた。
一回、二回。コール音をカウントする夫の不思議そうな表情。
一度切って、電話をかけなおす。つながらない。
二度・三度・・・繰り返すたび、夫の顔つきが険しくなる。

私は夫のしつこさと、姑の無神経ぶりにウンザリしていた。

(昼間に顔出したばっかりなのに・・・お義母さん、週末のこんな時間に何?)

夫が電話をかけはじめて10分。
空腹に耐えかねた子が、並べたおかずと私の顔をチラチラ見ている。
親子して、目で笑いながら浅漬けキュウリをつまんだ。

「この子ガマンできないから、悪いけど先、食べてるねー」

と声を張り上げると同時に、夫が言った。

「俺、母ちゃん見てくる」

え?これから?
車で1時間以上かかる実家に行く??

「どうしたの、お義母さん何かあったって?おばさんも(電話に)出ないの?」

冗談かと思いながら聞いていると、夫がおおっ!と携帯にかみつくように
しゃべりはじめた。

「大丈夫か?母ちゃん!母ちゃん!!」
正直に言えば、私はこの時までも大事ではないと思い込んでいた。
親子ベッタリの夫と姑。大ゲサだなぁと心の中で舌を出していた。

「やばい、やばい、やばい。実家行くから。な。」

夫は明らかにテンパっている。
15分経ってようやく電話がつながった姑に、本当に何事かあったらしい。

「もう、電話かわって。どうしたのよー。」

電話に出た姑は、今まで聞いたことのないふわふわとしたおだやかな喋り方だった。

「お義母さん、どうしたの?大丈夫?気分悪いですか」

「わぁかぁらぁなぁいい・・・」

「お義母さん、電話で救急車呼べます?」

「よーべーなーいぃー」

「こちらから呼びますからね。私たちもすぐ行きます!」

「うーん・・・」


この時、夫は祖父(没)が倒れた時と同じだ、と直感したらしい。
20年も前の話だが、脳梗塞で倒れた祖父と、母親の今のしゃべり方は
まったく同じだったと後に言う。