ところで、デパス(エチゾラム)の断薬による離脱症状は、1-2週間で元に戻る。重篤な場合は1-2ヶ月続く場合もある。と記されている。
その1-2週間のことをこれまで書いてきたが、実は私の場合は、「重篤な場合」に該当する。
つまり、エチゾラムの断薬による離脱症状が既に2ヶ月もの間、続いてしまった。
皮膚のつっぱりという離脱症状の有無を推し量るバロメーターが機能したのも実は先週のことなのだ。途端に朧げではあるが、夢から覚めたのではないかと五感がしゃしゃり出てくる。
音楽が、痛快に聴こえる。つい数時間前までは、エアコンの音、車の往来の音、バイクの騒音などに埋もれてしまっていた音である。
私は、特に趣味を「音楽鑑賞」とするほどに音楽を楽しむ。CDならず、生音に近しいといわれるアナログレコードを収集して、自室の壁が全てレコードで覆われるほどである。
音楽は、楽器のアンサンブルで成立している。ロックバンドのそれは、非常にラジカルでわかりやすい。リズムを刻むドラムやベース。ギターやキーボードはボーカルのメロディーを際立たせる別のメロディーを奏でる。その音の合奏に言葉が乗って音楽になり、聴き手を圧倒する。その素晴らしさは、子供の頃も今も大きな違いはない。
音楽は、聴くという能力がもたらす芸術でもある。ということは、聴けなくなることもあるのだ。正しくは、聞いても感じる力がなくなる。実際に老化等で可聴域が狭まることもあるのだろうが、聞いて「良い音楽だ」と感じる認知が軽薄になることもあるのだと考えている。
断薬により四感の減衰した耳では、音楽はそれまで通りには響かなくなった。
常に耳では不快な音が鳴っているのだ。喧騒やノイズが鳴っているのだ。その中で音楽を鳴らしても全然聞こえない。
私は、そこで文明の利器としてノイズキャンセリングヘッドフォンを使ってみたりもした。音は消えるが、感じる力のモヤモヤは消えなかったような気がする。
とにかく、1-2週間で戻るとされた四感は、ついに2ヶ月の経過をして、ようやく、ようやく昨日くらいから回復が実感できるようになっている。
つまりは、毛穴が開いたり閉じたりしているのか、ヒゲや鼻毛が伸びたり縮んだりしている。狂気の沙汰である。