NPO法人石川県茅葺き文化研究会だより

茅葺き民家が繋ぐ人の暮らし、自然との関わり。

ふるさと文化財の森「金沢湯涌茅場」。

2012-01-30 | ふるさと文化財の森

 

私たちが毎年秋に茅(カリヤス)を刈っている「金沢湯涌茅場」は、

 

金沢の街はもとより日本海まで一望できる湯涌温泉ちかくの山のなかにあります。

 

この森は文化庁の『ふるさと文化財の森』に、2009年に指定されました。

 

 

『ふるさと文化財の森』とは、

 

国宝や需要国宝や重要文化財などの文化財建造物を修理し、

 

後世に伝えていくためには、木材や檜皮、茅、漆などの資材の確保と、

 

これらの資材に関する技能者を育成することが重要ということで、

 

資材の供給林、研修林となるように全国に設定されています。

 

★他府県にある「ふるさと文化財の森」はこちら です。

 

 

この金沢湯涌茅場の管理者として私たちの石川県茅葺き文化研究会は指定されており、

 

茅葺き屋根の材料としてとても貴重なカリヤス(イネ科)を、

 

毎年秋に刈りとって、管理、保管をしています。

 

 

 

  

 

夏の茅場

 

 

 晩秋の茅場 金沢湯涌茅場より遠望。右奥の山は医王山。

 

 

 

 


まだまだ茅刈りシーズン!

2012-01-30 | ワークショップお知らせ

まだまだ茅刈りシーズンといっても、雪国の北陸では茅刈りシーズンは12月上旬が限度。
しかし雪の降らない地域では今も茅刈りシーズンまっさかりです。

日頃から茅文研がWSや講座でお世話になっている茅葺屋・塩澤さん主催の【カヤカル】は今週末。
須磨ニュータウンという街中で作られた茅場のススキを刈ります。

また、昨年7月輪島でおこなったWSに愛知県からご参加くださった
立松さんと星野さんの【かろまい】は3月に国営木曽三川公園で行われます。

以下、茅葺屋さんのブログから引用させて頂き、ご案内します。

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 茅刈り体験会ススキ編「カヤカル@神戸落合」

期日:201225() 雨天順延2月12()
会場:神戸市須磨ニュータウン内茅場 (神戸市須磨区落合団地白川ランプ周辺)
集合:AM:45 神戸市営地下鉄名谷駅北側ロータリー(TAXI乗場)  :AM10:00 現地
解散:PM15:00 予定
内容:ニュータウンを貫く幹線道路に沿って、四季折々の豊かな表情を見せるススキ野原。
茅刈りで街中に甦った里山の原っぱにて、茅葺き職人の指導を受けながらの茅刈り体験と、茅と茅葺きに関するレクチャー。(屋外)

参加費:¥100(保険、資料代含)
申込:保険加入と緊急連絡用にお名前とご住所電話番号
当日朝に連絡可能なEメールアドレスをこちらまでお送り下さい。雨天時の開催、延期の判断は当日朝行います。
持物:弁当、水筒(会場近くにコンビニ有)、タオル、滑り止め付きの軍手、長袖上下の汚れても良い動きやすい服装、斜面で作業できる靴でお越し下さい。
主催:茅葺屋 問合:info@kayabuki-ya.net
ご注意:中学生以下は同伴の保護者の責任下でのみご参加頂けます。会場周辺には駐車場がありません。自家用車でご参加の方は須磨パティオ駐車場(有料)等をご利用下さい。

 

茅刈り体験会かろまい '12@木曽川 

期日:20123/3() 雨天順延3/() 
会場:河川環境楽園 自然発見館(国営木曽三川公園三派川地区)
集合:AM10:00 自然発見館前
解散:PM15:00 予定
内容:環境共生型テーマパーク「河川環境楽園」で、生き物たちの棲処としてデザインされた公園植栽のススキを刈り取り。
5月頃には刈り貯めた茅を使って、園内に移築された茅葺き民家の屋根での茅葺き体験会も開催予定。
人の営みもまた「茅の循環」の一部であることを実感する機会です。

参加費:¥500(保険代)
持物:弁当、水筒、タオル、軍手(滑り止め付きのもの)、長袖上下の汚れても良い動きやすい服装でお越し下さい。
申込・問合:立松・星野 住所、氏名、年齢、終了後の懇親会参加可否を明記の上、お申し込み下さい。
主催:かろまい実行委員会+共催:河川環境楽園自然発見館

 

 

 


初めてのヨシ刈り。

2012-01-29 | 茅つれづれ雑記

茅葺き屋根の材料になる植物はいろいろあります。

一番多いのはススキやヨシ、稲藁。

五箇山や白川郷、湯涌など標高の高いところではカリヤス。

珍しいところでは、麻の栽培地では繊維をとったあとの麻殻なども。

外国でも小麦わら、ヒース、北欧の方では海藻によるものもあったり、

身近に豊富にあり、毎年生えてくる植物を利用して屋根に葺いていました。

 

私がこれまで茅刈りとして刈ったことのある植物はススキとカリヤスだけで、

先般訪れた石巻で初めてヨシを刈らせていただきました。

いつも湯涌で刈っているカリヤスは柔らかく、

株立ちした株を小脇に抱えこみまとめて刈りとるのですが、

ヨシは株立ちしておらず、背丈が2~2.5メートルと丈も高い。

慣れないこともあり1本1本刈りとっていくという塩梅でしたが、

結果、丁寧に刈りとれてよかったのかと。

初めは恐る恐るでしたが、ご準備いただいていた鎌がとてもよく手入れされていましたので、

カツンカツンという手ごたえを次第に小気味よく感じつつ刈ることができました。

刈りとったあとのヨシは、余分な葉を落とす「すぐり」の必要もなさそうなことが羨ましかったりもしました。

冬の風物詩、北上川のヨシ刈りは春まで続いています。

 


北上川のヨシ刈りボランティアにて。

2012-01-26 | 茅つれづれ雑記

河北潟湖沼研究所の高橋さんからご案内を頂き、

さる1月8日()、宮城県石巻市を流れる北上川で行われた「ヨシ刈りボランティア」に参加させて頂きました。

 

北上川には日本有数の美しいヨシ原約200ヘクタールが広がっており、

1月から3月にかけてのヨシ刈りは冬の風物詩でもあります。

川の水と海の水が混じりあう汽水域で育つ北上川のヨシは硬くて丈夫。

茅葺き屋根やヨシ簾の資材として最高級のヨシが採れる場所でした。

 

 

しかし震災時、川湊として栄えた石巻の町も、ヨシ原も甚大な津波の被害に遭われました

大切な人の命も失われ、そしてヨシ原の半分も土砂に埋まったり、

地盤沈下で水に沈んだりと打撃を受けたのです。  

 

 

このヨシ刈りボランティアを主催されたのは震災を機に石巻に設立された「NPO法人りあすの森」です。

その中心は石巻市北上町にある茅葺屋根工事一式・熊谷産業の熊谷秋雄さんです。

湖沼のヨシを守る団体に声がかけられ、鳥取、滋賀、石川、栃木などから18名が参集しました。

熊谷産業さんご自身も茅葺き屋根の社屋や倉庫を流されてしまい、

一時は金沢に避難されていらっしゃったそう。

震災当時社員の方々はヨシ原でヨシ刈りの最中でしたが、

先代社長の「津波がくるから逃げろ」の一言で、皆さんご無事だったとのことでした。

 

 

この熊谷産業さんの対岸には、児童74名、教職員10名がお亡くなりになった大川小学校があります。

熊谷さんは以前から子供と自然を結ぶ学校づくりを想っていらっしゃいましたが、

この大川小学校のことをうけ、

「子供たちの命に報いるためにも、本当の教育が受けられる学校を作りたい」と考え、

NPO法人りあすの森」を設立されました。

 

熊谷さんの復旧、復興への気概は、補修をおこなったこの倉庫にも現れていました。

どうでしょう、わかりますでしょうか。

壁が、なんと茅葺き、ヨシで葺かれているのです。

  

 

近づいて・・・・

 

 

 

近づいて・・・さらに近付くとこんな風。

熊谷さんが説明くださいました。

手にされているのはヨシ。長いまま葺いてあるのです。

 

 

新築の茅葺き民家が今も普通にあるオランダから、

日本茅葺き文化協会に依頼してオランダの茅葺き職人さんを招いてもらい、

その茅葺き技術を教えてもらいながら葺き上げられました。

オランダの職人さんたちも復旧復興のためならと、

快諾され遥々と来て下さったそうです。

 

 

  

熊谷産業さんの事務所と倉庫を見学しヨシ原に向かう前、

大川小学校にお参りにうかがいました。

 

川からすぐ、低い土地に建てられた学校。

玄関部分は3階建てですが、校舎のほとんどは2階建て。

杉の植林がされた裏山は急な斜面で、大人でも登るのは容易ではありません。

ぱっと見渡して裏山を除く高い場所といえば北上川にかかった橋でした。

色んな不幸な事象が重なって、尊い命が失われてしまいました。

鳴らされた慰霊の鐘の澄んだ音色、子守りの像が、

より哀しみを誘いました。

 

 

 

お参りのあと、小学校から3キロほど上流の比較的被害の少なかったヨシ原へ向かいました。

ここも津波の折は漁船が打ち寄せられていたと聴きしました。

そのため今もヨシ原には瓦礫がのこっており、ヨシ刈りのほか瓦礫の取り除きもしました。

 

 

途中、先代の社長さんも寒いなか、ヨシ原に。

風が冷たいから風邪をひかないようにと労いのお言葉をいただきました。

 

 

 

 

このヨシ原をフィールドに、ヨシの果たす水質浄化や生物を研究されている大学教授のお話によると、

地盤沈下している箇所に土を盛り、ヨシの復活を実験する予定だとお話されていましたが、

以前のようなヨシ原の姿にもどるのは、ずいぶんと時間がかかることと思います。

 

けれどもヨシ原のなかには、5センチほどに伸びたヨシの新しい芽もしっかり育っていました。

津波にも負けずヨシの芽が伸びるように、石巻の町も必ずや活気を取り戻していくと信じます。

それにはこれから本格的に動き出される「りあすの森」の活動に、

心を寄せて少しでもお手伝いできたらと思います。

 

「りあすの森」は事務局の方がtwitterもされています。

アカウントは@riasnomori 

どうか応援ください。

 

 

#K

 

 

 

 


茅の整理。

2012-01-12 | 茅つれづれ雑記

茅文研ではこれまで湯涌ですくすく育った茅(カリヤス)を、
金沢湯涌江戸村にある茅葺き農家群の補修や葺き替えなどに使ってもらうために、
ふるさと文化財の森「湯涌茅場」で茅刈りを行ってきました。

その茅たちが
、今春、江戸村にもう1棟移築される茅葺き民家の屋根工事に、
いよいよ使ってもらうことになりました。
そのためこれまで刈りとってきた茅を整理する作業をしてきました。

茅は少し根元の葉っぱをすぐる必要があったり、
束ねた一束が均一になるようにするために、
すぐりと束ねの道具を特別に作って進めました。

根元部分の余計な葉っぱをすぐっていく作業はこんな風です。

そしてすぐったあとは束ねていくのですが、
誰がやっても同じ分量の茅を束ねることができるよう箱を作り、
そこへ茅を収めて束ねています。

とんとんと根元を揃えて箱いっぱいに茅を詰めたら、
3か所を縄で縛って、一束出来上がりです。

そして束ねた茅は小屋裏に収納して、
茅葺き工事がはじまるまで
保管しておきます。

埃っぽい仕事になるので、ストック小屋の出入口は開けっ放し。
暖房のないなか、うちの茅ガールたちも頑張りました。
お疲れさま~!!

 


あけましておめでとうございます。

2012-01-04 | 茅つれづれ雑記

新年おめでとうございます。

旧年は茅葺きに関わるさまざまな方々と交流が深められ、

また草の文化、草の可能性を新たに知った一年でした。

お世話になった皆さま、大変ありがとうございました。

本年も何卒宜しくお願いいたします。

 

「草からみえる未来 2」のアップもまだですが、

その折、ご講演いただいた河北潟湖沼研究所の高橋さんからのご案内で、

1月7日~8日にかけ宮城県石巻で行われる「北上ヨシ刈りボランティア」に

参加させていただくことになりました。

岩手から宮城に流れる北上川河口は日本有数のヨシ原が広がり、

冬のヨシ刈りは季節の風物詩でもあったそうです。

昨年の震災で、このヨシ原も地盤沈下のため大きなダメージを受けました。

ボランティアでは川のゴミ除去、ヨシ刈りを行い、ヨシ原の保全の一助につとめます。

 

この活動を主催する「NPO法人りあすの森」は

石巻の茅葺き屋根工事熊谷産業さんが中心になって運営されているそうです。

私どもの活動拠点のひとつ「金沢湯涌江戸村」の茅葺き農家群も熊谷産業さんによるもの。

微力ながらお手伝いにいかねばと思ったしだいです。

 

いつもの茅刈りとはちがい震災の被災地へ向かうということで、緊張しています。

熊谷さんの取り組みや被災地の今をみつめてきます。

 

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