川越芋太郎の世界(Bar”夢”)

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陰翳礼讃

2011-07-24 21:35:37 | 「美」発見
陰翳礼讃


原発事故を契機に節電が励行されている。
私の勤務先がある新宿駅でも、結構節電
がなされている。
従来の派手できらびやかな光が消えて、
暗い場所が増えてきている。
それは、陰翳という影の登場であろうか。


陰翳といえば、あの谷崎潤一郎氏の小説
「陰翳礼讃」を思い出す。
小説では、「明るさ」に代表される欧米
近代化に抗して、陰翳のあわい中に存在
するわびしさやはかない光を礼讃する。


純日本的なものを連想する。
茶に代表される日本文化のわびさびの
世界観である。


陰翳の大切さ。
それは、私の子供の頃まであった世界
でもある。
障子を通して入る光。
日本家屋に代表されるほのかさ。
光だけではない。
風や音の世界も同様である。
風鈴・水きん沓・欄間にみられる風の道
明と暗、喧騒と静寂、自然の息吹
このよな物が古来日本の文化に彩りを
添えてきた。


森林大国、森の国、日本であろう。


私たちは、明治以来の工業化社会を目指し
取り込んできた欧米的人工物の便利さ。
それは、便利と同時に人口的なものを
最優先してきた。
人と対立する「自然」観である。
自然を崩壊させてまで、拡大してきた。


しかし、地球という生命機構には、自然
の持つ浄化力があることを知るべきで
ある。
地球という生命がもつ、自助浄化力。


人間は、人工的なものをいかに自然に
取り込めるかをこれからは課題とする
時期にきているのではなかろうか。
自然の利用、人口物と自然の融合。


さて、自然といえば、人間自身も自然
の一部であろう。
人間もまばゆい光だけでなく、
陰翳を楽しむ心を回復する時期に来て
いるのだろう。
日本文化はこれから、世界の鍵となる
ような気がしてならない。
それは、この課題ひとつをとっても
いえることである。


光は必要だ。闇は怖い。
しかし、強烈過ぎる光と人間は本来
同居できないのではなかろうか。
先人が教える淡い光、陰翳の味わい
に何やら鍵がありそうである。

東洋思考も少し勉強してみたいと
思うこの頃である。


平成23年7月24日 川越芋太郎


参考図書
陰翳礼讃
谷崎潤一郎

陰翳礼讃 (中公文庫)
クリエーター情報なし
中央公論社