
昨日、近畿大学建築学部・鈴木毅教授の最終講義についてご紹介しました。鈴木さんが提唱する「居方学」という言葉を初めて聞いたのは、かなり前のことだったように記憶しています。鈴木さんが1997年に大阪大学へ行く前、高校時代の仲間うちと東京で時々会っていた時のことでしたから、もう30年は経つでしょうか。私が「居方学」について尋ねた時「人が居心地が良いと感じる空間を研究する、新しい学問分野を立ち上げていきたい」といった言葉が返ってきたように記憶しています。上の写真は皆で名古屋城「本丸御殿」を一緒に訪ねた時のカット。下の写真は、愛知県の日間賀島へ旅行した時の夕食。芸術的な「てっさ(ふぐのおつくり)」に、身を乗り出して撮影をする鈴木さん。箸をつけるのがためらわれるほど、美しい料理でした。
当時、私たちは上野の美術館や東京駅近くの三菱美術館で落ち合うことが多かったのですが、熱海や甲府、東北の温泉地などへも足を延ばしました。甲府は前検事総長・林眞琴さんの初任地でしたので、ミレーの『種まく人』で話題になっていた、竣工間もない山梨県立美術館を訪れたのも懐かしい思い出です。訪ねる場所が美術館が多かったのも、建築を研究する鈴木毅さんの影響が強かったのかもしれません。そうして皆でどこかに出かけるたび、鈴木さんだけが知らないうちにするすると私たちから離れていき、あちらこちらの景色をカメラに収めていたものです。常日頃から「人が居心地よいと感じる」素材に対して、目を凝らしていたのですね。最終講義でも、世界の至るところでストックした街角風景を、解説されていました。そんな鈴木さんの「居方学」のコンセプトについて、大学ホームページに学生と対話している次の記事に、凝縮されているように感じます。「居方学」には頼もしい後継者もいると聞きましたが、一つの学問領域を立ち上げて引き継いでいくというのは、本当に素晴らしい偉業ですね。
●近畿大学
新しくまちをつくる際の計画として、かつては「まず住宅、次に病院、そして学校や幼稚園、大きな商業施設……」という定番の流れがありました。でも今なら、出勤前に子どもを預ける施設が駅の近くにあったら便利です。あるいは、自宅やコワーキングスペースで働くことも十分ありうる。また住宅地に公募型のマルシェがあれば、出店してみたい人もいるでしょう。このように、今の時代にふさわしい、新しい脚本が必要だと思っています。
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