雑感2011~軽井沢高校校長室から

校長の視点で書いた折々の感想や校内外へ寄稿した文章を掲載します。ご愛読ください。

 9月20日(火) “ここにしかいない”特別講師~軽高生は本当に恵まれています 21

2011年09月20日 | エッセイ

 台風が近づいていて、朝から雨。
 昨日までとは打って変わって肌寒い日になりました。
 朝少し迷いましたが、長袖を着て来て正解でした。


 今日の4時間目、「フードデザイン」の授業に、特別講師として赤荻一也さんに来ていただきました。
 赤荻さんは、世界ピザ選手権で3連覇をしている「世界一」のピザ職人です。
 その際立ったパフォーマンスからマスコミの注目も集め、『クイズヘキサゴン』『スッキリ!!』『めざましテレビ』『行列のできる法律相談所』などなど、たくさんの番組に出演しています。
 私も偶然テレビで観たことがありますが、きっとご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 赤荻さんが軽高に来ることになったきっかけは、赤荻さんご本人からの電話でした。
 「NHKの番組の取材があります。軽井沢高校の生徒にピザのアクロバットをお見せし、その場面を撮影してもらいたいと考えていますが、いかがでしょうか」とのことでした。
 赤荻さんに来校してもらい、教頭さんと家庭科の岩下先生とで話を聞いてもらいました。
 「家庭科の授業なので、ピザ回しに加えて、実際にピザを作る指導をしてもらえないか」「文化祭の一般公開日にも、ピザのパフォーマンスを披露していただけないか」と、何ともずうずうしいお願いをしたところ、どちらも快く引き受けていただき、噴煙祭(軽高文化祭)一般公開日のイベントと今日の特別授業という形になったのです。

 文化祭の時には、野外ステージ上で行われた見事なパフォーマンスを、たくさんの観衆に混じって少し遠くから拝見しましたが、行き違いで残念ながら赤荻さんに直接お会いすることはできませんでした。
 (この日の詳細は、この『雑感2011』の8月28日(日)の記事をご覧ください)

 

 今日の授業は、4時間目、11時55分からでしたが、赤荻さんは、準備のために、マネージャーの木原さんと一緒に、10時過ぎには学校にお見えになりました。
 準備前の本当に短時間、校長室でお話を伺う中で、二度も本校に来てくれた理由を問うと、赤荻さんは「軽井沢にお世話になっているので、地元にも軽井沢にある高校にも何かできないかなあと思ってやっています」と言います。
 赤荻さんは現在、中軽井沢の「ハルニレテラス」にあるイタリアンの店『イル・ソーニュ』(イタリア語で「夢」の意)で、パフォーマンスをしながらピザを作っているのです。
  お礼を言う私に、マネージャーの木原さんは「人柄のよさがこの人の取り柄ですから」と言って笑っていました。

 4時間目に調理室に行くと、教示用と生徒用合わせて9つのテーブルすべてに、赤荻さん自ら持ち込んだ材料がきれいにセッティングされていました。
 「台もすべて消毒しておきましたから、すぐに調理できますよ」と赤荻さん。
 「でも、その前にピザ回しを見てもらいます」と言い、緊張からか最初は硬かった生徒たちをグイグイ自分の世界に引き込んでいきます。

 

 パフォーマンスだけでなく、話術も実に巧みです。
 次第に生徒たちの緊張がほぐれていくのがわかりました。
 パフォーマンスは体力勝負の力仕事、汗がどっと噴き出ています。

 アクロバットを終え、間を置かず、すぐに2種類のピザ作りに入りました。

 

 作り方を説明する赤荻さんを見る限り簡単そうに見えたのですが、生徒が実際にやってみるとそううまくはいきません。
 赤荻さんは8つのテーブルを回り、オーブンの様子を確認しながら、休むことなく生徒に作り方を教えています。

 

 赤荻さんの指導を受け、次々と個性的でおいしそうなピザが焼き上がっていきます。
 
 生徒は、話を聞いているときには気付かなかったと思いますが、この時点では自分でやってみて難しさがわかっているので、自分と赤荻さんとの違い、つまり赤荻さんの技術の高さが理解できるのです。
 こういうところに、机上の学問だけでは本当の意味では理解できないこと、「体験」を通じてしか学べないことがあります。

 下の写真ですが、右2人がNHKのスタッフです。
 中央が取材に来てくれた、いつもお世話になっている軽井沢新聞の島崎さんです。

 
 
 授業を最後まで見届けて校長室に戻りましたが、生徒たちは昼休みを利用して家庭科室で自分たちの作ったピザを食べたようです。

 昼休みが終わり、しばらくしてピザが届きました。
 最初は生徒たちが作ったもののおすそ分けかと思いました。
 でも焼きたてだったので、「変だなあ」と思って岩下先生に訊くと、授業が終わったときには「今日は疲れました」と言っていた赤荻さんでしたが、生徒たちが帰った後、「先生たちのために」と、持ってきた材料を使ってあらためて何枚もピザを焼いてくれたのだと言います。
 焼き具合も味も最高でした。
 ピザをいただいたから言うわけではありませんが、本当に人柄のよい方だと思いました。

 
 軽井沢高校の生徒たちは幸せ者、実に恵まれています。

 9月だけを見ても、特別講師として学校に来てくださったのは、「高校生」のレベルをはるかに超えた、ものすごい方々です。

 今日は「世界一のピザ職人」赤荻さんが、すぐ目の前で「世界一の技」を披露し、ピザの焼き方を指導してくれました。

 9月18日(土)の信濃毎日新聞「信州ワイド」(全県版)やFM軽井沢でも取り上げていただきましたが、軽井沢の芸術家と地元とを結び付けているNPO「アート・コントラーダ」のおかげで、美術の授業で、プロの染織家飯田竜子さんを講師に、藍の生葉染めのワークショップを体験することができました。

 

 飯田さんは、この日に使う藍を自分で種から育ててくれていました。
 こちらも材料から器具から布からすべて飯田さんが教室に持ち込んでくれたものです。
 飯田さんの指導の下、生徒たちは全員、それぞれオリジナルのデザインを考えましたので、「世界に一つしかない」きれいな色のショールを作り上げることができました。

 

 また、9月16日(金)の軽井沢新聞「軽井沢新着情報」に掲載されましたが、昨年に引き続き今年も音楽家の周防義和さんに特別授業をお願いしています。
 周防さんは、現在軽井沢町に在住。
 映画「Shall we ダンス?」で日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞しているほか、数々の映画音楽、テレビドラマや舞台の音楽、(必ず聞いたことがある)CM音楽などを手がけています。
 今年も、昨年同様、音楽の授業で、第一線で活躍されている商業音楽に関する講義をしていただきますが、それに加えて「総合芸術」の授業ではさらにグレードアップして、生徒が軽井沢に関するCMを作るのと平行して、さまざまな形でプロとしてのアドバイスをいただくことになっています。

 

 先週末に行われた2年国際文化科の English Camp(英語合宿)では、「軽井沢ガイドサービス」の永島千絵さんに特別講師として来ていただきました。
 永島さんも軽井沢在住、通訳案内士という資格をお持ちで、海外からのツアーなどに同行して観光案内をするほか、接客英語研修や通訳・翻訳など、幅広い分野でご活躍です。
 ホテルなどで使う接客英語がまとめられている著書『軽井沢発 基本の接客英会話』を、ありがたいことに昨年度から本校に寄贈いただいていますし、英語・観光系に進学する3年生の長期インターンシップを毎年受け入れていただいています。
 英語版の県のホームページや町の観光案内も作製しているそうですが、その一部に本校生も関わらせていただいています。
 以前から様々な形でお世話になっている永島さんですが、今回は久しぶりに特別講師としてお迎えしました。
 今後本校が導入する学校設定科目「観光」などでもお力添えをいただければありがたいと考え、お話を進めているところです。

 軽井沢町にある唯一の高校、軽井沢高校。
 軽高の生徒たちは、国際親善文化観光都市として世界的に知られるこの町にある高校に通うが故に、他の学校ではまずあり得ない、夢のような学びを体験することができています。
 本当に恵まれているなあとつくづく思います。


 今日収録された赤荻さんの特集は、今度の日曜日、9月25日(日)22時50分から、NHK総合の『特ダネ!投稿DO画』で放送されるそうです。
 お時間のある方は、ぜひご覧ください。
 私も、録画予約をしつつ、当日も観るようにしたいと思っています。 

 9月12日(月) 情報誌『KURA』の取材を受ける 20

2011年09月12日 | エッセイ

 今日は「中秋の名月」。
 6年ぶりの満月、朝から快晴ということで、大いに期待していたのですが、夕方になってだんだん雲行きが怪しくなってきました。
 大きな月が拝めると嬉しいのですが・・・。


 午後、『KURA』の取材がありました。

 『KURA』は2001年創刊の「信州を愛する大人のための情報誌」(編集部)で、月刊で発行されています。
 発行エリアは、長野県をはじめ、近隣県、関東圏、中京圏にまで及んでいます。
 長野県内の書店では、店内の目立つところに、当たり前のように平積みになっていたりする、かなり有名な雑誌です。
 
 その『KURA』を発行している「まちなみカントリープレス」が、『別冊 KURA 信州の教育』(仮)という冊子を、9月下旬か10月上旬に5万部発行する予定で現在制作しているのだそうで、その中で軽高のことを取り上げたいということで、編集部の蟹澤さんから事前に打診があり、ライターの早川さんとカメラマンの阿部さんがみえたのです。

 『KURA』の別冊本は、これまでにも数冊出されていて、軽井沢、安曇野、八ヶ岳などの観光地を扱ったものや、信州の住宅、葬祭、医療・介護の特集をしたものが発行されているようですが、上の写真は、そのうち、信州の住宅について特集したものの表紙です。
 私も別冊本の中の軽井沢の特集号や、月刊の方の『KURA』を何冊かこれまでに購入したことがありますが、「ローカルの出版なのに、本当によくできた本だなあ」という印象があって、そこからの取材ということで、ちょっとワクワクしながら今日を迎えました。

 ただ一つ疑問だったのは、『KURA』と言えば、観光やグルメなどの「情報誌」のイメージが強いのに、「なぜ教育を?」ということでした。
 早川さんにお訊きすると、一度通常の月刊誌の中で、私立高校を中心に信州の特色ある教育を取り上げたところ、大きな反響があったため、今度は別冊でいこう、ということになったそうです。
 今回は、本校以外にもいくつかの小・中・高等学校を取り上げるようなことを言っていました。

 カメラマンの阿部さんは軽高英語科の第1期生で、名簿の番号も1番だったそうです。
 なんという縁、しかも1期生の1番。
 栄村のご出身で、下宿をしながら学校に通ったそうです。
 「それでうちの学校を選んでいただいたんですか?」と訊くと「それは関係ないと思いますけど・・・」との答え。
 阿部さんに「『KURA』ってどこにアクセントを置いて読めばいいんですか?」と訊ねたところ、「お蔵の蔵と同じ発音です。いろんなものが詰まっているイメージと、事務所のある長野市にたくさんある蔵を守っていきたいという思いと。実際、今の事務所は蔵の中にあるんですよ」とのことでした。

 私への取材の中心は、軽井沢高校が来年度から何を目指してどう変わるのかということでした。
 お二人は、校長室で40分ほど取材をし、その後、教頭さんの案内で校内を一回りして、写真を撮ったり説明を聞いたりして行きました。

 「校長先生の写真も1枚お願いします」「軽井沢ですから、緑がバックの方がいいですね」とのことでしたので、外に出て、正門を入った左手にある室生犀星の校歌碑の前で写真を撮ってもらうところまで3人に同行しました。
 下校する生徒たちが大きな声で挨拶をして行きます。
 早川さんが「軽井沢高校の生徒さんたちって明るくって楽しそうですよね」と言ってくれました。
 最高の褒め言葉です。

 お二人は、先程すべての取材を終え、校長室にご挨拶にお見えになりました。
 ホームページに書かせていただいていいですか?とお訊きし了承を得ました。
 お二人は「戻ったらホームページを見させてもらいます」とおっしゃっていました。

 校内を回る時に、生徒にも話を聞きたいようなことを言っていましたが、それも含めてトータルで今日の取材が、あの『KURA』で、どんな形になって表れるのか、発売が楽しみです。

 読者の皆さんも、今回の『別冊KURA』のことを周囲で話題にしていただきつつ、発売の暁には(できれば購入して)お読みいただければ幸いこの上ありません。


<9月13日(火)追記>

 編集部の蟹澤さんからお礼のメールが届きました。
 「さっそくのブログアップ・・・。ものすごく嬉しいです。本日はどうしても阿部カメラマンに行ってもらいたくて、いろいろな手段で取材日程を組んでみました。」とあります。
 きっとこういう「気持ち」や「思い」が、いい雑誌を作ることにつながるのでしょうね。

 昨夜は、少し雲はあったものの、まん丸の大きな月が空にぽっかりと浮かんでいるのを見ることができました。
 なかなかゆっくりと「自然を味わう」時間が持てない日常ですが、たまには何も考えずのんびりと空を見上げるのもいいものです。 


<10月7日(金)追記>

 写真部の阿部さんが学校に掲載本を届けてくれました。
 
 
 献本がいただけるのは郵送でも十分嬉しいのですが、軽井沢に他の何かの用事があったのかもしれないとはいえ、それにしてもわざわざ学校まで来てくださるとは、本当にありがたいことだと思っています。
 中を開いてみると、確かに軽高のことが載っています。
 用事のついでに何軒か書店に寄ってみましたが、どの書店でも平積みにされていました。
 さすが「KURA」です。