雑感2011~軽井沢高校校長室から

校長の視点で書いた折々の感想や校内外へ寄稿した文章を掲載します。ご愛読ください。

 3月23日(金) 終業式・離任式 38

2012年03月23日 | エッセイ

 春弥生は、別れの季節です。

 今日は3学期終業式と離任式が行われました。
 ステージのある旧体育館が耐震工事中のため、新体育館で実施しました。
 今日は冷え込みが厳しく、外は雪も降っていましたが、生徒たちはそんな中、きちんとした服装で、長時間にわたって身体を動かすこともなく、真剣な眼差しで聞いてくれました。
 その雰囲気が上の終業式の写真からも伝わると思います。
 本当にいい集団になってくれました。

 本校勤務年数の長短はありますが、今年度末、私も含めて12人の教職員が転退職します。
 転退職の教職員は、職員朝会で職員向けに、そして離任式では生徒向けに、様々な「思い」とお別れの言葉を口にしました。

 卒業生がお世話になった先生にお礼の挨拶をしに来校したり、在校生が転退職の教職員と写真を撮る姿があったりして、つくづく学校という所はいいもんだなあと感じました。

 4月には、今の1・2年生はそれぞれ1つずつ進級し、新しい1年生が入ってきます。
 4月卯月は出会いの季節です。
 今日は軽井沢は雪でしたが、心弾む春がすぐそこまで来ています。

 昨年度の「校長日記『つれづれ軽井沢だより~乞う「ちょうどええ」』」、そして今年の「雑感2011~軽井沢高校校長室から」では大変お世話になりましたが、この記事をもってすべて終了いたします。

 ご愛読をありがとうございました。

 引き続き、軽井沢高校へのご理解とご支援・ご協力をお願い申し上げます。


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     平成23年度3学期終業式 校長講話


 みなさん、おはようございます。

 「だいぶ暖かくなりました」と言おうと思っていましたが、意に反して雨が雪に変わり、冷え込んできました。
 短めに話しますので、集中して聞いてください。

 昨年の3月11日、東日本大震災があり、その翌朝には長野県北部地震が起きました。
 東日本大震災では、地震そのものがかつてないほど大きかった上に、津波が押し寄せ、更には原子力発電所の事故があり、多くの人たちが亡くなったり行方不明になったり、遺族の人たちや被害にあった人たちは、いまだに苦しんでいます。

 そんな中、テレビで観たある映像と発言がとても印象に残っています。
 原発のある自治体にはお金が出ます。
 東北には、大きな産業もなく冬は出稼ぎに行かねばならない、そういう場所がいくつもあります。
 いろいろな議論を経て原発を受け入れるという結論を出した自治体は、原発誘致後に立派な建物を建てたり、町が豊かになったり、活気が出たりしたようですが、今度の事故で、自分たちの住みかから離れ、避難生活を余儀なくされている。
 誘致後に得たものばかりか、誘致前に持っていた自然や家までも失ってしまった。
 一体何のための誘致だったのだろうかというのです。
 地域住民は、いろいろな要素を考えて、原発を受け入れるという「選択」をしたわけです。
 その「選択」がどうだったのか、と今問われているわけです。

 君たちもそんな大きな選択ではなくても、日々選択をして暮らしています。
 生きることは選択をすることだと言ってもいいかもしれません。
 5時に目覚ましが鳴る、まず、すぐに起きるか起きないかを選択する。
 朝ごはんを食べるか食べないか、どの電車で行くか、そういう選択を積み重ねて日常生活が成り立っています。

 私が生まれた頃には、蛍光灯はなく、裸電球でした。
 炊飯器もなくかまどでご飯を炊いていました。
 風呂も薪を燃やしていました。
 有線電話と言って、町内の限定した人としか話ができませんでした。
 小学校の頃、家にテレビが来ましたが、四本足で白黒、ブラウン管といってものすごく厚みのあるものでした。
 私たちの選択はそんなに難しくありませんでした。
 生活が豊かになること、それが最優先でした。

 でも今は選択の幅が圧倒的に増えています。
 カタカナの職業をはじめ、職業の種類も当時よりはかなり増えました。
 海外旅行に行くのも当たり前になりました。
 みんな携帯電話を持って、どのサイトにアクセスしようか選択をします。
 当時はそんな選択をする必要はありませんでした。
 携帯電話を持っていなかったからです。
 君たちはコンビニに寄ろうか寄るまいか選択します。
 でも当時はその選択の必要はありませんでした。
 コンビニ自体がなかったからです。

 このように、昔の高校生に比べて、君たちは良くも悪くも選択の幅が増えた。
 その中で君たちは日々選択をしていきます。
 「選択していない。何も考えてないから」という人がいるかもしれません。
 しかし、「何もしない」のも選択肢の一つです。
 あるいは、「よくないことをする」というのも選択肢です。
 どうせならいい選択をしてほしい。
 いい選択をするには、学び続けることが必要です。
 学ぶことで情報が増え、判断力も増します。
 そして、選択をしたら、実行する勇気を持ってほしい。
 それが今まで君たちに言い続けてきたことです。

 腰の曲がった小さなおばあちゃんが電車に乗ってきた。
 それを見たらこの中の誰もが例外なく、席を譲らないといけない、と思うでしょう。
 でも、全員が実行するでしょうか。
 実行できないのは、恥ずかしいからでしょうか。
 いい所を見せたくないからでしょうか。
 善悪の判断、選択をしたら、実行する勇気を持ってほしいと思います。

 新年度、ここにいる君たちは、それぞれ一つずつ進級し、3年生と2年生になります。
 4月の頭から、自分が考える、こうありたいという自分、こうなりたいという自分に、少しでも近づけるように精一杯の努力をしてください。

 君たちには「期待しています」と言い続けてきました。
 それは、人間は変わることができるからです。
 よりよくなれるからです。
 新学期の君たちに期待しています。
 がんばってください。

 終わります。

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