歌うKANOKO

クリスタルボイス
Singer 野村佳乃子のひとりごと

Rock 曽根崎心中

2005-05-26 | Weblog
昨夜は国立劇場始まって以来 初のロックバンド登場の文楽公演 桐竹紋寿先生と宇崎竜童さんの「曽根崎心中」を観てきました。
桐竹紋寿先生と親しくしている方に御紹介いただき、開演前の早い時間に楽屋にお邪魔してきました。
紋寿先生は文楽の人間国宝。恐い方だったらどうしよう…と、緊張してのれんをくぐりましたが、
満面の屈託のない笑顔で迎えてくださり、一気にホッとしました。
と同時に、ドキッとしました。紋寿先生が本日のヒロインお初の人形を手にしていらしたのですが
「ここに女性がひとりいる」という感じがするほど、人形が生きているように見えたのです。
紋寿先生のちょっとした指遣いで人形が首をかしげたりするのが、まるで命があるように見えるのです。この道一筋の方のすごさを垣間見たような気がしました。
ほんとうにきれいなお人形でした。
この紋寿先生という方は、一体どうして人生を文楽に生きることに決めたのだろう…と、紋寿先生をもっと知りたくなりました。

紋寿先生が宇崎竜童さんの楽屋に案内してくださり、宇崎さんにも「今度6月8日はノヴェンバーイレブンスに出演させていただきます、よろしくお願いいたします。」とご挨拶できました。
宇崎さんは「お世話になっています、よろしくお願いします。」と、丁寧に挨拶してくださいました。以前阿木さんと事務所でお目にかかった時もそうでしたが、とても優しく色々心遣いをしてくださり、細やかで丁寧だなぁ…と、感じます。おふたりとも本当に素敵な方々…憧れます。さ・す・がです。

開場したロビーに行くと、紋寿先生の自伝本「文楽・女方ひとすじ」が売られていました。
早速買おうとしたら、スタッフが本を抱えて走ってきて、「今サイン入りのをお持ちしました!」と。タイミング良かったなあ♪このサインがまた墨で書かれて趣があってすてき。

ステージは素晴らしいものでした。奥行きと立体感。完成度の高い世界でした。
文楽とロックがこんなに相性が良いとは。というより、お互いの良さがクローズアップされる感じ。阿木燿子さんの詞も素晴らしかったです。
(何度か見に来ている人の話だと、毎回内容が違う印象だと言うのです。
終演後紋寿先生にお聞きしたら、毎回趣向を凝らして演出を変えると仰っていました。少しでも良いものにしていきたいという情熱を感じます)

近松門左衛門の
この世の名残、夜も名残、死にに行く身をたとふれば、あだしが原の道の霜、一足づつに消えて行く、夢の夢こそあはれなれ。あれ数ふれば暁の、七つの時が六つ鳴りて、残る一つが今生の、鐘の響きの聞き納め、寂滅為楽と響くなりー
なんという名調子。これも心に響きました。

終演後、国立劇場からほど近いお鮨屋さんへ。
スタッフ総勢150名という打ち上げを終えた紋寿先生が駆けつけてくださり、近しくお話をうかがうことが出来ました。
紋寿先生が、宇崎さんと「ロックと文楽」を国立劇場でやりたい。という話をしてから20年の歳月が流れ、悲願の公演実現だったそうです。最初は国立劇場は「ロックをやるための劇場ではない」と、にべもなかったらしい。
ここに至るまで、さまざまなご苦労があり、紋寿先生は、これを失敗したら、もう自分は文楽をやめなければいけない…と思い詰められたことさえあったとか。

しかし、各地での公演の内容の素晴らしさ、反響の大きさが、評判に評判を呼び、ついには国立劇場の方からオファーが来たことの喜びなどを、噛みしめながらお話ししてくださいました。

紋寿先生に「最近私は日本のものにとても惹かれるんです。」とお話しすると、
「そう、みんな食べず嫌いなところが多いんですよね。私がこのロックとの融合で目指したところは、ロックを好きな若い世代が、へえ、文楽っておもしろい、と興味を持って古典に足を運んでくれるようになることなんです。」と仰いました。感想など自由に書き送ってください。これからの公演案内も差し上げたいですから、と名刺を下さいました。
自分の芸を極めることだけではなく、文楽の未来まで考えて地道な啓蒙活動をなさっている姿に感動しました。懐が深いというか、スケールが大きいというか。
素晴らしい出会いに感謝。

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