歌うKANOKO

クリスタルボイス
Singer 野村佳乃子のひとりごと

フォアグラのように・・・あるいは地獄

2006-04-26 | Weblog
わりとよく訊かれるのが
「…当たり前なことかもしれないですが…KANOKOさんは毎日歌の練習をしていらっしゃるんですよね?」という御質問です。
何度も同じ質問をいただいてきたのに、わたしときたら満足に答えられたためしがない気がするので
今日はそのへんを書いてみます。

なぜうまく答えられないかというと、
質問に対して真剣に考えすぎてしまうからかもしれません。
っつーのは、毎日練習する…といっても毎日均一な練習方法をとっていないからです。
お稽古に多くの時間を割く日もあるし、
まったく歌わない日もあります。
咽喉は休めた方が調子が良い場合もあるので、必ずしも毎日発声を怠らないのがベストとは私は思わないのですが。。
んなわけで、「ハイ、必ず練習しています」と言うとウソになるし、
「時々しか練習しません」ではサボっているようでイヤだし。
お答えに迷ってしまうというわけなのでスた。

私が何より大切にしているのは歌う心です。
歌というのは「思わず鼻歌が出てしまう…」っちゅうのが良い歌だべ!という
信条があります。

全ての歌がそうやって生まれてくるものではありません。
例えば苦しみや苦労から歌を搾り出すタイプの歌い手さんもいるでしょう。
苦い人生経験が歌に深みと説得力を与えるような。。

私の立場や目指す方向性からしか語れないことですが、
私は音楽で皆さんの心を楽しくしたい…という願いをもって歌っていますので、
常に歌が心に溢れているような生き方をしたい・・・というのをもっとも大切に考えています。

だから出来るだけ美しいものに触れたり良いものに触れていたい…
想念をきれいにしていたい…という心がけを重要視しています。
そうやって自分の心中の美の理想ができあがってから
それをカタチ(歌)にする技術を考えるという方法です。

世の中のモノづくりはそういう仕組みになっているのではないでしょうか。
「こんなものあったら便利だな」「こんな世の中になったら幸せだな」という理想があって、その後必要な技術が開発されるんじゃないかなあ。。
余談ですが、
偉大な先人の歌を聴くと「同じ人間が出来たことなんだから、私にも歌えるんじゃないかな…」と思い込んだりします。
もちろん、資質には個体差がありますから、黒人のように歌うのはとてもムリ!!ですけれど、まあこのセンなら私もがんばってみよう…、と
これってなりきりやすい私の性格ならではなのかしらん。
思い込みっていうより考え方の話のつもりですけれども。

大きく分けると2つのタイプの歌があって、
A.メロディーを聴いただけで私の心にイマジネーションがあたたかく広がっていき、お手本がなくても自然と完成できる歌

B.その歌に関しては完璧なアレンジと名唱が残されていて、模倣するのが最も完成度を高められると感じる歌
私もオリジナルのように歌いたいし、お客さんもオリジナルに忠実であることを期待している。

ま、どちらにしても
その歌の世界に「頭のてっぺんから足の先までドップリ!」体験は不可欠です。
私は独りでこれを「地獄作戦」と呼んでいる。。

なにしろ
「この歌をモノにしよう!」と惚れた歌があったら、
一日中その歌しか聴かないのです。その歌しか歌わない。
家ではステレオで。外ではMP3に入れて歩く時も、どこでも暇さえあればリピートかけて聴く。お風呂の中でも歌う。ぶつぶつ念仏のように呟いているので、ハタからみるとかなり不気味な人物かと。

私が赤ちゃんのように若かったら2,3回聴けばOKなのかもしれないけれど、
とりあえず母国語は一日中聞いているから喋れるようになるっちゅう理屈の応用で、言い方を変えれば洗脳宗教の方法とおんなじだけど。潜在意識に刻み込む!っていう感じです。

大好きな歌なのに、一日中聴いているってものすごく苦痛になってくる。
だから「地獄」って呼んでいるんですけれど。。
さっき思いついたけれど、
フォアグラ用の鴨に似ているかも。
ムリヤリ餌を食べさせられている状態。
ある意味非常に不健康な状況ですが、結果はなんとも美味ではありませんか。。

こうやって叩き込んだ歌っていうのはなかなか脳ミソから出て行かないんですよね。
だから辛くっても確実な方法として最も活用しています。

私は専門家ではないからいい加減なことを言わせていただきますが、
これって「大脳」の運動を司る部分にインプットしているって気がします。なんらかの事故で記憶を失った人でも、歩き方や水の飲み方は忘れないというけれど、死ぬほど繰り返して「刻み込んだ歌」はそういう本能的な部分に属するというか。。
っていうのは、本当に身に付いた歌というのは、いかなる状況でも「スラスラ~」と歌えるのです。再生スイッチを入れた機械みたいに。

んでもって、記憶された情報に「情感」といった味付けをするのは前頭葉クンなのかなあ・・・?
歌う時に余計なこと考えたり、「ちゃんとおぼえているかなあ」と感情が不安定になったりすると、前頭葉クンが余計な部分で活発化しすぎちゃって、記憶再生との連携がうまくいかないような気がします。

…なんだか話があっちゃこっちゃいってしまいましたが、
要するに
いつも心爽やか!でいることが、良い歌を歌うための必須条件でありますゆえ、
せっかくなら楽しい人生を目指したいという話なのでした。
お歌を練習するのも大切だけれど、一番大切なのはハートの健康維持努力。

たまにはマジメに語ってみたのでした。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿