貧乏性が故に・・・/プロランナーの食生活から学ぶべきこと

2015年01月07日 | 食事
今日はLSDラン。店の開店時間との兼ね合いもあり、最初は1時間+αで切り上げようと思っていたのですが、走りだすとつい「折角の機会だから・・・」と生来?の貧乏性が顔を出し、ついつい走りこんでしまいました。

【今日の昼稽古】
内容     :しっかりLSDラン。
走行時間   :2時間01分47秒
走行距離   :
21.7km(月間累計:68.3km)
消費エネルギー:
1,272kcal(月間累計:3,777kcal)

寒の入りも過ぎましたが、今の所順調に走り込めてます。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
久し振りの”Competitor Running"誌からの転載です。
「風邪予防/早期治癒の為には積極的な水分補給」当たりは今すぐ役立つ知恵ですね。
あと、(3)は耳に痛いです。

プロランナーの食生活から学ぶべきこと
by Adam Elder, Jan. 05, 2015


 アメリカを代表するエリートアスリートは栄光をほしいままにしているが、彼らの運動能力を食事面から支えているのはAlicia Kendigである。全米五輪委員会に所属する栄養士(5名)の一人である彼女は、Ashton Eaton(陸上十種/七種競技の世界記録保持者、ロンドン五輪金メダル)やKim Conley(陸上トラック中長距離選手、5,000m走で2012年全米五輪予選3位→ロンドン五輪出場)といったエリートアスリートの食事をレースの数カ月前から担当し、彼らが潜在能力を十二分に発揮できるよう努めている。

 kendigは「私は数多くのアスリートと一対一で面接し、食事計画を立て、彼らが希望する人生を送れるようその案内人を務めている立場です。彼らに提示するのは基本的なことです。例えば、『スーパーetc.で購入すべき品物はこれらです』といったこととか、食品に関する科学的な事実(消化の良し悪しとか、栄養的なプロファイルとか)などです」と語る。

 しかし彼女の仕事はそのようなことにとどまらない。全米五輪委員会は最近、コロラド州コロラドスプリングスにあるオリンピックトレーニングセンターに新設した実験用キッチンを公開した。そこではKendigらが新たな食品の開発に取り組んでいる。それは例えば「体温を効率良く下げるスポーツドリンク」といったようなものである。

 我々はKendigに、エリート選手の食生活に関する”秘密めいたもの”を公開して欲しいと依頼した。しかしそれらは驚くほど単純な事実ばかりであった。つまり、
・天然物を摂取する
・こまめに給水する
・レース当日は特別なことをしない
などなど、である。以下に、彼女が公開してくれたアドバイスを幾つか記す。

【エリート選手が犯しがちな誤り】
①加工食品 vs. 天然物:「(エリート選手が)心情としてある種の加工食品(スポーツドリンク/ジェル食品/グミ類etc.)に頼るのは理解出来る。しかしここ数年間、スポーツ界は極端に傾き過ぎていた気がする。我々は改めて天然物に注目すべき時期に至っていると思う」。

②炭水化物の摂り過ぎ:「『ラントレーニングの後には、トレーニングで消費した炭水化物の貯蔵分を完璧に補う必要がある』と考える人は多い。しかし科学的な事実を鑑みると、高強度のトレーニング期間とは体組成が自然に変化している期間でもある。そのような期間に於いては、消費した炭水化物の貯蔵分を完全に補充する必要は無い」。

③一度に食べ過ぎる:「多くのアスリートは、『摂るべきエネルギー量を計算すると約3,200kcalだった。だから夕食ではそれを満たすだけ食べなければならない』と語る。そして彼らは自らの言葉を実現するべく、夕食はとてつもなく盛大なものとし、必要とするエネルギー量の大半を摂取しようとする。しかし食事を少量/多頻回とすれば、トレーニングの効果が最大限得られる」。

【ホビーランナーがエリート選手の食生活から学べること】
(1)毎日正しく食べる:「エリート選手たちは、レース直前の3日間だけでなく、毎日『何を食べるか?』に注意を払っている。我々が『パフォーマンス向上の為に食べる』と語る時は、レースでのパフォーマンスだけを対象にしているのではなく、普段のトレーニングでのパフォーマンスをも対象にしている」。

(2)常に給水する:「私が見るエリート選手達は、ロング走の後だけでなく、常に水分を補給している。水分をきちんと補給していると、病気の予防にもなる。特に冬場は、風邪/インフルエンザの予防や早期治癒につながり得る」。

(3)食事は栄養補給の為であり、ご褒美ではない:「食事を健康、特に栄養補給という観点から考えることが大切である。食事はキツいトレーニングのご褒美ではない。よく『しっかりトレーニングをしたから、食べたいものを好きなだけ食べていいんです』という人がいるが、これは全く逆である」。
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糖類/人工甘味料が健康に及ぼす影響について

2014年12月08日 | 食事
寒さに負けず、というか年末年始のおいしい御飯&お酒に備えてボチボチとLSDに勤しんでました。

【12月6日の昼稽古】
内容     :アフリカLSDラン
走行時間   :1時間48分32秒
走行距離   :20.0km(月間累計:
31.0km
消費エネルギー:1,236kcal(月間累計:
1,882kcal

続いて、
【12月7日の昼稽古】
内容     :つなぎ&回復Jog
走行時間   :1時間03分06秒
走行距離   :10.7km(月間累計:
41.7km
消費エネルギー:608kcal(月間累計:
2,490kcal

寒いと、筋肉が温まった所でゴールでした(涙)。

で、今日はスケジュールとしてお休みです。
明日からまた楽しく走ります。

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標記の件、米国国立衛生研究所(NIH)のニュースレターです。

やっぱり、天然物を摂るのがベストみたいです。

~糖類/甘味料が健康に及ぼす影響について~

 殆どの人はお菓子やジュースが好きである。しかし、甘い物を口にした後で、それらが体重や健康に及ぼす影響を心配してしまう。糖類は本当に身体に良くないのだろうか?。人工甘味料はどうなのだろうか?。それらについての科学的な知見はどうなっているのだろうか?。

 人体が生存に必要としているのは、グルコース(ブドウ糖)である。米国国立衛生研究所所属の小児科医/甘味料の専門家であるKristina Rother博士は、「脳がエネルギー源として利用出来るのはグルコースだけである。またグルコースは人体にとって極めて重要なエネルギー源である」と説明する。しかし、グルコースをわざわざ食事で摂取する必要は無い。というのも人体は、食品に含まれる炭水化物/タンパク質/脂質といった分子を消化/分解してグルコースを取り出す/生成することが可能だからである。

 糖類は果実/野菜/乳といった食品に天然に含まれている。米国国立衛生研究所所属の小児科医/甘味料の専門家であるAndrew Bremer博士は、「(果実/野菜/乳といった)天然物を食事で摂取すれば良い。例えば、オレンジを食べたら、天然の糖類が多くの栄養成分/食物繊維と同時に摂取できるのだ」と語る。

 Rother博士によると、「糖類そのものは”悪者”ではないが、我々アメリカ人が糖類を過剰に摂取しているから汚名を着せられている。糖類は殆ど全ての食品に含まれている」とのことである。

 現代アメリカ人の食生活で糖類が過剰に摂取され、それが肥満の蔓延の原因であることは多くの専門家が認めている。アメリカ人が摂取する糖類の大半は、天然の食品に含まれているものではなく、加工食品に添加されているものである。

 アメリカ人が摂取するエネルギーの約15%(=一日当たり小さじ22杯)は、食品に添加されている糖類由来である。それらの糖類は、加工食品の風味を改良する目的で添加されている。しかし一方で、それら加工食品はエネルギー量が多いし、果物等の天然物に含まれる、健康に”効く”成分は何ら含まれていない。

 加工食品の内、糖類を多く含むのは清涼飲料/エナジードリンク/スポーツドリンク等の飲料である。清涼飲料には本来、果汁由来の糖類が多く含まれている。なのに、それらをより甘くする目的で糖類が添加されている。

 Bremer博士は、「(清涼飲料の原料として用いられる)果汁にはビタミン類を始めとする栄養成分が含まれている。しかしそれらの有益な効果は、過剰に添加される糖類の有害な効果によって打ち消されてしまっている」と語る。

 繰り返すが、糖類を過剰に摂取すると、健康に悪影響が及ぼされる。この点についてBremer博士は、「糖類の過剰摂取と肥満/循環器障害の直接的な関連については、世界中で複数の研究結果が報告されている」と指摘する。

 その有害性を根拠に、多くの医学研究機関が、食品に添加される糖類の摂取量を減らすことを推奨している。しかし、それらは様々な形で添加されるので、きちんと特定するのは困難である。加工食品の原材料表示では、それらは
・ショ糖
・コーンシロップ
・高果糖コーンシロップ
・果汁濃縮物
・ネクター
・粗糖("raw sugar")
・モルトシロップ
・メープルシロップ
・果糖甘味料("fructose sweeteners")
・果糖液糖
・蜂蜜
・廃糖蜜/モラセス("molasses")
・無水ブドウ糖
・その他糖類を示す「~オース("-ose")」という接尾語の付いた物質
と記載されている。これらが原材料表示の先頭近くに記載されていれば、その食品は糖類の含有量が多いことを示す。また、加工食品に含まれる糖類の総量は、栄養成分表示の「炭水化物」として記載される。

 多くの人達は、糖類を甘味料として使用している食品を、いわゆる低カロリー/ゼロカロリーの甘味料を使用した食品に切り替えることで、摂取エネルギー量を減らそうと務めている。これらの人工甘味料は、従来の糖類に比べ数倍甘いので、同じ程度の甘味を実現するのにより少ない使用量で済む。

 人工甘味料の安全性については、数十年間に渡り議論が続いている。現時点では、米国で使用が承認されている人工甘味料については、発ガン性を始め重大な健康問題を引き起こす明確な証拠は報告されていない。

 しかし人工甘味料は、減量に寄与し得るのだろうか?。この点については、科学的な意見/研究結果は賛否様々である。いわゆるダイエット飲料に切り替えることで、短期的には減量が可能とする研究結果が報告されている一方で、それらの長期的な摂取で体重が元に戻るとする研究結果も報告されている。Rother博士を始めとする研究者達は、人工甘味料が人体に及ぼし得る複合的な効果についての研究を行っている(同研究には米国国立衛生研究所が資金を提供している)。

 齧歯動物(ネズミなど)を用いた動物実験/小規模の臨床試験の結果から、人工甘味料を摂取すると腸管の微生物叢(消化に役だっている)が変化する可能性が示唆されている。この結果を拡大解釈すると、グルコースの消化/吸収にも何らかの影響が及び、その結果体重の増加につながる可能性も考えられる。しかし現時点では大規模な臨床試験は行われていないので、人工甘味料の摂取が腸管の微生物叢/体重変化に及ぼす長期的な影響は明確にはなっていない。

 エール大学のIvan de Araujo博士は、「人工甘味料が健康に及ぼす影響/人工甘味料と糖類の違い等については、現時点では様々な見解が示されている。人工甘味料が何らかの生理学的変化を誘起すると結論づけている動物実験の結果も報告されている。しかし現実には、どの評価指標を採用するかによって、結果も異なっている」と語る。

 Araujo博士らの研究グループは、糖類/低カロリーの人工甘味料が脳に及ぼす影響を研究している。動物実験の結果では、糖類/人工甘味料では、大脳の報酬系と呼ばれる部位に対する活性化の様式が異なっており、糖類の方がより強力に快楽を誘起する効果がある事がわかった。

 Araujo博士は、「いわゆる『やめられない止まらない』的な行動に関与する脳の部分は、糖類に対し極めて敏感である一方、人工甘味料に対しては相当無反応であるように思われる。我々の最終的な目標は、糖類/人工甘味料が永続的な食習慣に何らかの影響を及ぼし得るかどうかを明らかにすることである。噛み砕くと、仮に大量の糖類を摂取した場合、脳の機能が変化し、糖類の大量消費を主導するかどうかを明らかにする、ということである」と語る。

 複数の研究結果から、人工甘味料で甘味を強くした食品を摂取すると、いわゆる「甘いもの好き」になることが明らかになっている。これは、甘いものの過剰摂取につながる可能性がある。ただこの点については、追加の研究が必要と考えられている。

 Rother博士は、「長期的に減量をしたいのであれば、健康的な生活習慣(加工食品を摂らない/エネルギー摂取量を適正化する/運動量を増やす)を確立する必要がある」と指摘する。

 小児期に甘いものを多く食べていると、その子は「甘いもの好き」になる傾向が見られる。しかし小児期に果物/野菜など様々な食品を食べさせていれば、その子はそれらの食品を好む大人になる傾向がある。

 この点を踏まえBremer博士は、「子供には早期から様々な味に馴染ませるのが重要である。それには手間暇がかかるが、あっさり諦めては駄目である」と語る。

 健康状態を良好に保つ秘訣は、様々な食品を摂ってバランスのとれた食生活を営むことと、適度に運動することである。食品に関しては、糖類が添加されていない、栄養成分を豊富に含む未加工の食品に注目したい。

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エリートランナーの食べ方ルール

2014年12月03日 | 食事
一気に師走モードの気候になった大阪市です。
それでも、走り始めたら気にならない程度です。

【今日の昼稽古】
内容     :ウダウダっとLSDラン
走行時間   :1時間01分23秒
走行距離   :11.0km(月間累計:
11.0km
消費エネルギー:646kcal(月間累計:
646kcal

因みに11月は
走行距離   :235.7km
消費エネルギー:13,440kcal
でした。最後に少し失速してしまいました。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
標記の件、"Competitor Running"誌の記事です。

「エリートランナーの食べ方」と言っても、特殊なことは何もありません。
普通に食べることが大切、と説く内容です。

エリートランナーの食生活を真似すべき理由
by Matt Fitzgerald, Oct. 1, 2014


 ランナーは「特別な食生活」を実践すべきなのだろうか?。世間では様々な食事方法が喧伝されている。例えば、菜食主義/パレオダイエット(旧石器時代の食生活を再現したもの)/グルテンフリー(グルテンを含む小麦粉を用いた食品を排除したもの)/低炭水化物ダイエット、などなど。

 興味深いのは、エリートランナーで上記のような特別な食生活を実践している者が殆どいない、ということである。以下に、Molly Huddle(訳者注:1984年生まれのアメリカ人女子プロ長距離ランナー。5,000mの全米記録保持者)の経歴を見てみよう。

 彼女はニューヨーク州Elmiraで育ったが、いわゆる「典型的なアメリカ人の食生活」を営んでいた。つまり、
朝食:シリアル食品
昼食:サンドウィッチ
夕食:肉+ジャガイモ
といったものである。このような食生活を営みつつ、彼女はFoot Locker高校クロスカントリー選手権で4位となり、2マイル(3.2km)走の高校記録(10分01秒)を樹立した。

 大学(ノートルダム大学)に進学した後も、彼女の食生活は大学スポーツ選手の典型そのものだった。つまり、主食は「シリアル食品+牛乳」か「ベーグル+ピーナッツバター」である。多少は野菜類を摂取する必要性を意識したので、「時々は」サラダを食べていたとか。それでも彼女は全米代表に10回選出されたし、2006年のNCAA選手権(5,000m)で2位となった。

 2007年にプロ転向してからは、食事全体の質を向上させることを意識するようになった。そして流石に、夕食でシリアル食品を半箱食べるようなことはしなくなった。しかしそれでも彼女の食事内容は、21世紀のアメリカ人としては極めて当たり前のものだった。普段の食事内容は、
朝食:全粒粉のパンケーキ
昼食:サンドウィッチ
夕食:肉類+野菜類
といったものである。このような食生活を営んだ結果、彼女は複数種目の全米選手権で9回優勝すると共に、5,000m走でアメリカ新記録を2度樹立している。

 彼女の”食歴”は、エリートランナーとしては特に珍しくない。世界新記録を樹立するようなエリートランナーの殆ど全ては、各々が育った文化に典型的な食生活を営んでいる。これはアメリカ以外の国にも当て嵌まる。Vincent Onyweraはエリートクラスのケニア人ランナーの食生活を2週間調査した(2004年発表)。それによると、彼らの食事内容は「普通のケニア人と何ら変わりなかった」とのことである。

 殆ど全てのエリートランナーがユース年代で経験しているのが、「レースで勝った」ということである。このことからも、普通の食生活を営みつつ好成績を収めるのは可能であることが分かる。

 しかし残念ながら、彼ら程の才能に恵まれていない普通のランナーがレースで勝った経験などまず無い。だから、つい「好成績を収めるには特別な食生活が必要では?」と考えがちだし、そのような考えを排除し切れない。そして「持久力を最大限発揮するには特別な食事方法が必要」と喧伝されれば、素直に信じてしまいかねない。

 しかしそれは誤りである。エリートランナーこそがその「生ける証拠」である。プロレベルでの競争は熾烈なので、たとえ才能に恵まれたアスリートであっても、トレーニング/食事に問題があれば、勝ち抜くのは不可能である。その上で、殆ど全てのエリートランナーが「文化的に普通の食事」の範囲内で質の高い食事を摂取していることを鑑みると、そのような食事こそが、最高レベルの運動能力の発揮にとって必要十分であると言える。このことは、我々のようなホビーランナーについても当て嵌まる。

 しかし異論もあるだろう。例えば、ケニア人ランナーはウガリ(ugali、とうもろこし粉の粥)を大量に摂取するが、アメリカ人ランナーはウガリなんか食べない。又、日本人ランナーは魚を積極的に摂取しているが、エチオピア人ランナーはテフ(teff、穀類の一種)をそれこそ偏食している。これらについては、次のように考えるのが適切だろう。つまり、エリートランナーであっても、その住んでいる地域が異なれば、食事内容も異なっている。なので、エリートランナーの食事をそっくりそのまま真似するのは不可能だし、不必要でもある。

 「エリートランナーのように食べる」というのは、彼らの食生活をそっくりそのまま真似ることを意味しない。大切なのは、その基本を構成する要素を真似ることである。世界中のエリートランナーの食事に共通する基本は5つ存在する。以下に、それらを見ていく。

基本(1):満遍なく何でも食べる
 天然の食品は以下の6カテゴリーに分類される。

①野菜類(豆類を含む)
②果物類
③種実類
④加工していない肉類及び魚類
⑤精製していない穀類
⑥乳製品

 殆ど全てのエリートランナーは、これらを一日の食事で漏れ無く摂取している。 例を挙げると、Shannon Rowbury(訳者注:アメリカ人女子中距離ランナー。北京/ロンドン五輪の女子1,500m走に出場。2009年世界陸上選手権の女子1,500m走3位)の典型的な食事内容を見てみよう。

朝食: 発芽小麦のイングリッシュマフィン(⑤)+アーモンドバター(③)
蜂蜜、バナナ(②)、ミルク(⑥)入りコーヒー
昼食: 鶏卵(便宜上④)、野菜サラダ(①)、チーズ(⑥)
夕食: 茹でた鮭(④)、キノア(⑤)、サラダ(①)

と、上記①~⑥が一日の食事で漏れ無く出てくる。

 何故エリートランナーが①~⑥を満遍なく食べるかは、そうでないランナーの姿を見れば簡単に理解出来る。肉類(④)を食べないランナーは鉄欠乏性貧血になりやすいし、穀類(⑤)を食べないランナーは慢性疲労状態に陥りがちである。他の食品群に関しても同様の問題は発生し得る。

 特定の食品に対するアレルギー/不耐症でない限り、上記①~⑥を欠かすことは、運動能力を向上させるより損なわさせる可能性の方が高い。

基本(2):質の高い食品を摂る
 上記の基本(1)とは逆に、質の低い食品群というのも4つ存在する。それは
(a)精製した穀類
(b)菓子類
(c)加工した肉類
(d)揚げたもの
である。エリートランナー達はこれらを出来る限り避けている。

 「私は、シーズン中は(d)を全く摂取しないようにしている」と語るのはGabriele Grunewald(訳者注:アメリカのプロ中距離ランナー。800~5,000mが主種目。2014年全米インドア陸上選手権の3,000m走優勝。2014年IAAF世界インドア陸上選手兼アメリカ代表)である。彼女は食事について、
・出来る限り(a)でなく⑤を選択する
・赤身肉/(c)より魚類/鶏肉を選択する
・(b)は控える
を旨としている。

 自らのランニング能力を最大限発揮するには「普通の食事」で十分であるが、それは「何を食べてもOK」という意味ではない。多くのエリートランナーはこの点を重視し、食事の質を高めることを意識している。学生レベルでは、文化的に普通の食事で問題ないだろうが、世界レベルでの競争に勝つにはそれでは不十分である。

 ここでもう一度Molly Huddleの食事内容を見てみよう。高校~大学時代にもそれなりに成績は良かったが、全米選手権レベルの大会では優勝しなかった。プロに転向してから彼女は食事の質を向上させ、しかる後にアメリカを代表するプロランナーの一人となり、ケニア/エチオピアのランナー達と常に競争出来るようになったのだ。

 ここから得られる教訓はただ一つである。運動能力を向上させる為の特別な食事等は存在しない。必要なのは、食事の質を向上させることである。

基本(3):炭水化物をしっかり摂る
 多くのホビーランナー達は、炭水化物を過剰に警戒している。しかし、エリートランナーは全く逆である。ここでAmy Hastings(2012年の全米五輪予選10,000m優勝)の普段の食事内容を紹介しよう。彼女のエネルギー源は殆ど全て炭水化物である。例えば、
朝食:イングリッシュマフィンのサンドウィッチ
補給食:エナジージェル/スポーツドリンク
間食:オレンジ
夕食:長粒米+野菜炒め
といったものである。

 とは言え、昔からエリートランナー達が炭水化物を偏愛していたのではない。1910~1940年代にかけて長距離走界を席巻していたのは、伝統的に脂肪の割合が高い食事を摂取しているフィンランド勢であった。1950年代からフィンランド勢に取って代わったのはイギリス/アメリカ勢である。その頃から脂肪の割合がやや減り、その分を炭水化物が埋めるようになった。1960年代後半にGunvar Ahlborgが、習慣的な炭水化物の摂取と持久力の間には一定の関係があると発表した。この発表を受け、多くのエリートランナーが意識して炭水化物の摂取量を増やし、その結果持久力が向上した。具体的には、この「炭水化物摂取ブーム」が発生する直前のマラソン世界最高記録は2時間12分0秒(日本人のMorio Shigematsu)だったが、発生した直後のそれは2時間08分33秒(オーストラリアのDerek Clayton)だった。

 1980年代から台頭してきたのは、ケニア/エチオピアの東アフリカ勢である。ケニア/エチオピア出身のエリートランナーの食事は、炭水化物の割合(カロリー比)が約77%と極めて高いものである。こう見てみると、過去80~90年間に於ける、ランナーの能力の向上と炭水化物摂取量費の増大は軌を一にするものなのだろうか?。科学的にはそうとは言い切れない。ただ、強度の高いトレーニングを実践するアスリートが炭水化物摂取量を減らすと、低炭水化物食に身体が慣れたとしても、身体に加わる生理学的ストレスが増大し、無酸素/有酸素運動能力が低下する(具体的にはタイムトライアルの成績が落ちる)ということが、数多くの研究結果を通じ示されている。

 ホビーランナーも炭水化物を主体とした食生活を営むべきではあるが、その摂取量はトレーニング量に見合ったものとすべきである。例えば、200km/週も走るエリートランナーは炭水化物を10g/kg-体重/日摂取すべきであるが、50km/週走るホビーランナーはそんなに大量の炭水化物を摂取する必要は無い。目安としては3g/kg-体重/日から始め、走行距離が30km/週増える毎に炭水化物の摂取量を1g/kg-体重/日づつ増やしてみよう。その際、炭水化物源は上記⑤としたい(長時間のトレーニングランの間はスポーツドリンク/エナジージェルでも可)。

基本(4):沢山食べる
 エリートランナー達は、「食べ過ぎを避ける」よりは「しっかり食べる」ことを重視している。Stephanie Rothstein(女子ハーフマラソン選手。自己ベストは1時間11分) が自らのBlogで、大学時代に減量目的で摂取エネルギーを大胆に減らしたところ、生理が停まったと告白している。その後摂取エネルギーを健康的なレベルまで戻したら、生理が再開し、運動能力が向上する一方、体重は増えなかった。それ以来、彼女は「消費する以上に摂取する」を座右の銘としている。

 また、摂食障害は大学レベルのランナーではよく見られるが、エリートランナーの間では殆ど見られないという現象も興味深い。この理由として考えられるのは、エリートレベルではしっかり食事を摂取しないととてもやっていけないことである。

 勿論、多過ぎも少な過ぎもせず、いわゆる「適量」を摂取するのが最終目標である。ただ、多過ぎる/少な過ぎるのどちらがマシかと言えば、「多過ぎる」方である。少々程度の食べ過ぎであれば、デメリットは過剰な脂肪が付く程度である。しかし少々であれ、慢性的に摂取量が少なければ、最終的にはトレーニング/健康状態に何らかの問題が発生する。

 「大幅に食べ過ぎる」のと「僅かに食べ過ぎる」のどちらが修正し易いかと言えば、「大幅に食べ過ぎる」方である。なので、まずはしっかり食事を摂取するところから始めよう。その上で体重が増えた/それまで付いていた体脂肪が落ちないという状態になれば、そこから食事の摂取量を少しづつ減らすと良い。その内に体脂肪が徐々に減り、ランナーとしての適正体重に到達するであろう。
 
基本(5):食べ方には個人差がある
 人それぞれ、特有の食事歴/嗜好/食習慣/必要性がある。しかし特別な食事方法の大半が、それらをまるで無視している。曰く、「我々は、あなた方のこれまでの食事について何ら考慮していない。正しい食べ方は、我々が提供するものだけである。さぁ、始めよう」と。

 「万人に最適な食事方法」なんか存在しないということは、エリートランナーの食生活を見れば自明の理である。勿論、上記の基本(1)~(4)は正しいのだが、具体的にどのような食生活を送っているかは、個人差が甚だしい。Xhu Xiaolin(中国の女子マラソンランナー。2008年の北京五輪で4位。2010年のロッテルダムマラソンで3位)は中華料理を好むし、Marilson Dos Santos(ブラジルの長距離走ランナー。2006年/2008年のニューヨークシティマラソン優勝)はブラジル料理を好む。セリアック病(グルテンに対し免疫反応を示す自己免疫疾患)を患ったランナーは、小麦を食べない。甘党のランナーは、一日に一回は甘味を堪能している。

 あなたがエリートランナーでなければ、あなたの現在の食生活には改善の余地があるだろう。ただ、全てをゼロベースで見直す必要は無い。例えば、今食べている食品を天然の/精製していないものと入れ替えて食事の質を向上させるとか、炭水化物を積極的に摂取するとか、摂取エネルギーを増やしてみるとか、というので充分である。その際に注意したいのは、食事はあくまでも各人の好み/必要性を鑑みるべきである、ということである。
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低炭水化物ダイエットとランニング能力

2014年11月27日 | 食事
ちょっと小春日和な大阪市でした。
なので、今日も昼稽古に勤しみました。

【今日の昼稽古】
内容     :ノンストップLSDラン
走行時間   :1時間09分55秒
走行距離   :12.7km(月間累計:
217.7km
消費エネルギー:822kcal(月間累計:
12,345kcal

消費エネルギーの月間累計は、あくまでも偶然です。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
標記の件、"Competitor Running"誌の記事です。

アスリートとしては、しっかりエネルギー源を摂取し、しっかり走り、結果として痩せるというのがベストでしょう。


減量すれば良いってものでもない
by Matt Fitzgerald


-減量の目的とトレーニングの目的は、必ずしも一致しない

 各人には各々の「最適体重("Racing Weight")」が存在する。ここでは「最適体重=レースで一番良い成績が出た時の体重」と定義する。この最適体重より重いランナーが大多数なので、減量すれば運動能力が向上すると考えるのが一般的である。しかし中には、減量を主目的としてトレーニングに励み、逆に運動能力が低下してしまうランナーも出てくる。

 というのも、運動能力の向上に悪影響を及ぼす減量方法が存在するからである。実際、減量という観点からの最適な食事/運動方法とは、運動能力を向上させる減量方法とは全く異なる。減量効果が最大となる食事方法を実践したら、運動能力の伸びは緩やかになるか、場合によったら逆に低下しかねない。最悪の場合、体重が上記の最適体重を下回り、その上にランニングスピードが低下してしまった、ということにもなりかねない。

 言い換えると、運動能力を最大化するのが(減量の)目的であれば、あくまでも「運動能力が向上しているかどうか」を評価の指標とするべきである。より速く走る為に食事をし、トレーニングするのである。減量の為に食事をし、トレーニングするのではない。減量の進行に伴い運動能力が向上しているかどうか、常に意識すべきである。

 となれば、ランナーの減量方法は、世間一般のそれとは異なる。最も効率の良い減量方法とは、
・炭水化物の摂取量を減らす
・高強度のトレーニングを実践する

である。一方、運動能力を最大限引き上げるのに最も効率の良い方法は、
・炭水化物を積極的に摂取する
・低強度のトレーニングを長時間行う

ことである。ただ、私の言うことを盲目的に信じて貰っても困る。なので、これから様々な研究結果を見ていこう。

炭水化物の摂取量が少ない状態で運動したら・・・

 競技歴の長い持久力系競技のアスリートが、炭水化物比率が中程度~高い食事を同じく低い食事に切り替えると痩せることは、多くの研究結果で確認されている。ここで、Adam Zajac氏を代表とするポーランドの研究グループが実施した最新の研究結果を紹介する。同研究では、エリートクラスのMTB選手8名を無作為に2グループ(試験群/対照群)に分け、4週間に渡り、
試験群:炭水化物比率が低い食事=炭水化物15%/タンパク質15%/脂質70%
対照群:炭水化物比率が中程度の食事=炭水化物50%/タンパク質20%/脂質30%
という食事を摂取させた。

 その結果、体脂肪率(平均値)は
試験群:11.02%
対照群:14.88%
となり、炭水化物比率の低い食事を摂った試験群の方が痩せた(有意差有り)。しかし運動能力を比較すると、

<乳酸閾値での出力>
試験群:246W
対照群:257W

<15分間全力を発揮した際の平均出力>
試験群:350W
対照群:362W

と、試験群の方が低かった。この運動能力の違いについて研究グループは、筋肉が炭水化物をエネルギー源として使用する能力(=高強度の運動をする際に重要な能力)が低下した為と考察している。

速く走る為に、LSD

 筆者からすると理解に苦しむのだが、ランナーに低炭水化物ダイエットを薦める多くの専門家(と称する人)達が、同時に高強度のインターバルトレーニングを基本としたトレーニングプログラムを推奨している。これは全くの誤りである。というのも、スピード練習を重視するトレーニングプログラムは脂肪の燃焼=消費を促進するものの、低強度のトレーニングを重視するトレーニングプログラム程にはランニング能力を向上させないからである。

 ここで、ザルツブルグ大学(University of Salzburg)の研究グループが行った最新の研究結果を紹介する。同研究では、48名の持久力系競技のアスリート(大多数はランナー)を無作為に次の4グループに分けた。

①:低強度のトレーニングのみを行う
②:低~中強度のトレーニングを組み合わせて行う
③:全体の57%を高強度の、残りを低強度のトレーニングを行う
④:全体の24%を高強度の、同じく68%を低強度の、残りを中強度のトレーニングを行う

実験期間は9週間とし、期間の最初/最後に運動能力を評価する試験を行った。

 体重に関しては、高強度のトレーニングが最も大きな影響を及ぼした。具体的には、③では体重が3.7%減少した一方、①/②/④では殆ど変化しなかった。

 しかし、運動能力については異なる結果が得られた。段階的に負荷を増やしていき、オールアウトになる迄の時間を比較する試験では、④では17.4%向上(平均値)した一方、③ではその半分にとどまった。また、同じ試験で測定した最大スピード/パワー及び有酸素運動能力の向上程度に関しても、④の方が有意に向上した。

あくまでも、目的次第だが…

 上記の研究結果を鑑みると、選択肢は明確である。「痩せた体」になりたいのであれば「低炭水化物食+高強度トレーニング」を実践すべきである。それが最適である。しかしより速く走りたいのであれば「炭水化物比率が中程度~高い食事+低強度中心のトレーニング」を実践すべきであろう。


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ボチボチ走っています/鉄欠乏対策

2014年11月13日 | 食事
気が付けば更新を一週間以上怠っていました。

とは言え、その間もボチボチと走っていました。

【今朝の朝稽古】
内容     :LSDラン
走行時間   :1時間15分10秒
走行距離   :13.2km(月間累計:
102.5km
消費エネルギー:769kcal(月間累計:
5,571kcal

そろそろ、寒さと闘う季節です…。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
持久力系競技を嗜む人にとって大切な「鉄」に関する、Competitor Running誌の記事です。

日本でテフ(を原料とするパン)を入手するのは非現実的ですが、全粒粉パンで代替するのは可能です。
とは言え、鉄にはヘム鉄(肉類や魚に多い)と非ヘム鉄(野菜や大豆に多い)があり、ヘム鉄の方が吸収率が高い(ヘム鉄:15~35%、非ヘム鉄:2~5%)を考えると、肉類もそこそこは摂取する必要があります。

結局は「好き嫌いのない食事」がベストでしょう。


エチオピア人ランナーの秘密、それは「鉄分が多い食事」かも
by Matt Fitzgerald


 世界中で最も多く見られる栄養不足は「鉄不足」である。鉄不足は貧困地域で特に顕著である。というのも、最も優れた鉄供給源である赤身肉が高価過ぎて、滅多に食べられないからである。しかし鉄不足は、トレーニング量の多い持久力系アスリート(特に女性)でも多く見られる現象である。アスリートの場合、主たる原因は食事でなく、有酸素運動それ自体である。しかしそれでも、解決法は食事にある。

 練習量の多いアスリートは、それに見合った多量の赤身肉を食べなければならないのだろうか?。赤身肉(特に加工されたもの)を多量に摂取する食生活は、長期的には健康状態に良くないと考えられている。しかし有難いことに、赤身肉を多量に摂取しなくとも、持久力系アスリートの体内鉄分状態を改善する方法があることが最近の研究で明らかになっている。

 持久力系競技のアスリートの間で鉄欠乏状態が蔓延している理由について、様々な仮説が提唱されている。その中で最も確からしいのが、炎症によるものという仮説である。強度の高い有酸素運動を長期間行うことで筋肉が損傷し、その修復が始まる際に炎症反応が発生する。その反応においては様々な生化学的変化が発生するが、その中にヘプシジン(hepcidin)というタンパク質の生成量の増加がある。このヘプシジンは、鉄代謝を調節する因子である。
 
 ヘプシジン濃度が高い場合、小腸からの鉄の吸収が阻害される。ヘプシジン濃度が慢性的に高い状態は発生しないことが研究を通じて明らかにされているが、トレーニング後にヘプシジン濃度が一時的に高くなることで、鉄の総吸収量が低くなり、その結果として慢性的な鉄欠乏状態に陥ることが確認されている。

 持久力系競技のアスリートにおける鉄欠乏状態と聞いて、貧血を連想する人は多いだろう。貧血とは、血中の赤血球数が不足し、身体が正常に機能しない状態を指す。赤血球は筋肉に酸素を供給する役割を担っているので、鉄欠乏性貧血になると有酸素運動能力が著しく低下する。しかし、鉄欠乏性貧血にならなくとも、鉄欠乏状態に陥るだけで同様の結果に至り得る。というのも、鉄は赤血球の構成成分というだけでなく、それ自体がミトコンドリア(細胞内で酸素を取り込んで筋肉が必要とするエネルギーを産生する器官)に於いて酸素の代謝に直接関与しているからである。

 2011年にコーネル大学のグループが、ボート選手を対象に鉄欠乏状態と運動能力の関連を調査した。女子ボート選手(大学生)165名を被験者とし、彼女達の鉄状態を調べた。その結果、
①鉄欠乏性貧血である…16名
②貧血ではないものの、鉄欠乏状態である…30名
であった。一方で全員を対象に、過去3ヶ月間における2,000mタイムトライアルの成績を調べた。その平均値で見ると、身体の鉄状態に問題が無い選手に比べ②に該当する選手では約21秒遅かった。統計的には有意差は認められなかったものの、身体の鉄状態と成績の間には強い関連がある可能性が示唆された。有酸素トレーニング後半にやる気の低下を覚える場合、その原因は鉄欠乏(貧血の有無に関わらず)である可能性が考えられる。

 上記の調査結果から認められるもう一つの事実は、「①+②=全体の約30%」ということである。一般的に、鉄欠乏状態にある者の割合は、男性の方が低い。この性差は、運動をする/しないに余り関係しない。女性の場合、生理時の出血を考慮すると、鉄分を男性に比べより多く摂取する必要があると考えられているが、実際には男性に比べ鉄分の摂取量が少ないので、その結果鉄欠乏状態に陥りやすいとされている。更に問題なのは、女性アスリートは運動しない女性に比べ、赤身肉の摂取量が少ないことである。約40%の女性アスリートが「健康上の理由」から赤身肉の摂取を控えている、という調査結果も報告されている。

 赤身肉(特に加工されたもの)の摂取を出来る限り控える、という考え自体は悪いものではない。加工された赤身肉の摂取量が多い人は平均余命が短い、という調査結果もある。しかし他方、赤身肉の摂取量が少ない女性アスリートでは身体の鉄含有濃度が低い、という調査結果も複数報告されている。では、赤身肉を多量に摂取することに伴う健康上のリスクを避けつつ、鉄欠乏状態に伴う身体能力の低下という悪影響を避けることは可能であろうか?。

 結論から言えば「可能」である。サプリメントによる鉄の補給は対処方法の一つである。しかしそれも必須ではない。赤身肉は優れた鉄分の供給源であるが、鉄分を多く含む食品は他にも存在する。その一つは、エチオピア人の主食である「テフ(teff)」である。テフは小麦全粒粉に比べ鉄分を50%多く含む。そして言うまでもなく、エチオピアはケニアと並ぶ長距離走王国である。

 Manchester Metropolitan University(英国)の研究グループは、11名の女性ランナーを被験者とした調査を行った。最初に被験者の食事内容を調べたところ、鉄分摂取量(平均値)は10.7mg/日であった。この数値は、閉経前の女性に対する推奨摂取量である15mg/日を下回っている。そして被験者の内4名は鉄欠乏状態であった。

 次に被験者が普段食べているパンを、テフを原料としたパン(エチオピアでは"Injera"と称されている)に置き換えた。その結果、鉄分摂取量は18.5mg/日に増加した。またそれに伴い、身体の組織に対する鉄供給量も有意に増加した。

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歳をとったら、脂肪も必要

2014年07月11日 | 食事
台風一過の大阪は、一転して猛暑です。
こうなると、何が何でも7時以前にランをスタートしなあきません。

明日から、そうしよう←ココらへんが心の弱さ…。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
標記の件、"Competitor Running"誌の記事です。

吾輩が以前から主張していたこと=脂肪もそこそこは摂る必要あり、の正しさが裏付けられています。

日本なら、鯖缶(特に水煮缶)が扱い易くていいですね。

歳をとったら脂肪も必要
by Sabrina Grotewold


・成績が落ちてきた
・トレーニング後の回復に要する時間が長くなってきた
・体力がついてきた自覚が感じられない
なんてことを感じていない方、おめでとうございます。まだまだ若い証拠です。経験を積み重ねるに連れて成績がますます向上するなんて人は殆どいない。大半の人は、身体の老化(これ自体は自然な反応だ)に適応する必要がある。それはラントレーニングの内容の修正に始まり、筋力トレーニング/柔軟性トレーニング/休養等に積極的に取り組むことも求められる。そして、食事内容、特に摂取する脂肪の種類の選択の見直しも重要となる。ω-3脂肪酸の効果を耳にした人は多いだろうが、その点に注意を払った食事をしている人はどれだけいるだろうか?。

 "American Society for Nutrition"誌で2011年に発表された研究結果では、16名の健常な高齢者を2グループに分け、それぞれのグループにコーン油/ω-3脂肪酸を8週間摂取させた。その結果、ω-3脂肪酸を摂取したグループでは、筋肉の形成が促進された。研究グループの代表者は、ω-3脂肪酸の摂取でサルコペニア(加齢により骨格筋に筋肉量/筋力の低下が生じること)の予防/改善が図られると結論付けた。

 ω-3/ω-6脂肪酸は共に、多価不飽和脂肪酸/必須脂肪酸(=人体内で他の脂肪酸から合成出来ないので、外部から摂取する必要がある脂肪酸)である。この内、ω-6脂肪酸には
・LDLコレステロール(悪玉)を減らす
・炎症を抑制する
・心臓病を予防する
効果があると報告されている。ω-6脂肪酸を多く含むのはサフラワー油/コーン油/綿実油/大豆油等である。一方、ω-3脂肪酸には
・心臓病/脳卒中を予防する
・血栓の形成を制御する
・脳細胞の生成を促進する
効果があると報告されている。特に2及び3番目の効果は重要である。ω-3脂肪酸を多く含むのは脂肪の多い魚類(鮭など)/キャノーラ油/大豆油/亜麻仁の種子/クルミ/芽キャベツ・ケール・ほうれん草等の緑黄色野菜等である。

 ハーバード大学公衆衛生学部のFrank Sacks教授(博士、循環器病が専門)は、ω-3脂肪酸を多く含む食品を毎日少なくとも1品目摂取することを推奨している。「毎日」である。これを実践するには、ちょっとした工夫が必要となる。以下にその例を幾つか紹介する。

・サラダにかけるドレッシング類のベースとなる油を、キャノーラ油/大豆油/亜麻仁油等にする。原材料表示を注意深く見よう。

・大袋入のクルミを購入し、冷蔵庫で保管する(劣化防止の為)。そして、それをサラダやシリアル食品にふりかけて食べよう。また、バジルソース/パスタ/ピラフ/グラノーラ等に合わせて食べるのも良い。

・新鮮で/地場で捕れた/養殖でない鮭等の脂質の多い魚類が手に入れば最高だが、お金もかかることであるには違いない。買える人は買ったらいいが、それが出来なくても、例えば缶詰製品を買って、鍋料理/パスタ/サラダなどに用いるのも良い方法である。

・亜麻仁の種子を粉砕したものを一瓶購入し(開封後は要冷蔵)、シリアル食品/ヨーグルト等にふりかけて食べよう。また、パン類/マフィン/グラノーラバー/クッキー等を作る際に混ぜ込むと、焦げたナッツ類特有の風味が付与されて美味しくなる(だろう)。

 ω-3/ω-6脂肪酸は、新鮮であれば高温の調理で分解されることはない。ただ、種実油は劣化しやすいので、開封後は冷蔵保存が望ましい。冷蔵保存すると凝固するが、調理の前に室温に戻すと液状に戻る。購入する際には品質保持期限等に注意する。
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ランナー的減量

2014年07月10日 | 食事
今朝は、7時にベース走にいざ行かんと玄関を出たら、雨がパラパラっと…。
ということで、朝稽古はお休みしました。
まぁ、結果としては、それから本降りになったんですが。やはり台風には勝てません。

標記の件、"Competitor Running"誌の記事です。
本文中で言及している「クイックスタート期」とは、本格的なラントレーニングを開始する前の時期を指すので、日本だと2~3月に相当します。
なので、いまさら…という記事ですが、来シーズンの参考にしていただければ幸いです。

ランナー的減量の決め手
by Matt Fitzgerald


 アスリートには、一般人のような厳格な摂取エネルギー制限による減量は適していない。トレーニングを適切に行うと共に、その後に於いて身体を充分に回復させるには、適量(一般人に比べると多い)のエネルギーをきちんと摂取する必要があるからだ。厳格な摂取エネルギー制限による減量を行うと、トレーニングの効果が相殺される。

 過剰な体脂肪を限界まで減らし、運動能力をピーク迄高めた状態を維持/継続するなんてことに挑んではならない。シーズンを通じては、減量を主目的とすべき時期は存在するが、それはレースに焦点を合わせたトレーニング期ではない。減量を主目的とする時期は、本格的なトレーニング期に先立つ数週間である。この時期を、ここでは「クイックスタート期」と称する。

 しかし、クイックスタート期に於いても、一般人と同じような減脂肪を追求すべきではない。あくまでもランニングでの目的達成を助ける形でせねばならない。言い換えると「ランナー的減量法」を追求すべきである。

 では、その「ランナー的減量法」とはどういうものであろうか?。以下にその原則を5つ紹介する。

①摂取エネルギー制限は程々にする
 クイックスタート期に於いては摂取エネルギー量を、現在の体重を維持するのに必要な摂取エネルギー量から300~500kcal減らす。これ位であれば体重は眼に見えて減る一方、レースを見据えて本格的にラントレーニングを行う時期での摂取エネルギー量よりかはまだ多い。

②筋力トレーニングをする
 クイックスタート期は、筋力トレーニングを重点的に行うのに適した時期でもある。具体的には、筋力トレーニングを3回/週行うのを推奨する。これ位だと、筋肉量の増大→基礎代謝量の増大に伴う体重減(その主体は休養中に燃焼する脂肪)が発生する。また、運動能力の向上/故障の予防につながることも期待出来る。

③タンパク質摂取量を増やす
 クイックスタート期に於いては、摂取エネルギーの30%はタンパク質由来とするのが望ましい。これには理由が2つある。1つ目は、タンパク質の摂取割合が高い食事=満腹感が高いからである。なので、摂取エネルギー量を減らしても、空腹感を覚えることは無いだろう。2つ目は、筋力トレーニングを主としていることから、摂取したタンパク質が筋肉量の増大に用いられ易いからである。
 なお、本格的にラントレーニングを行う時期は、エネルギー源として炭水化物を積極的に摂取する必要があるので、タンパク質の摂取割合は相対的に低くする。

④短距離のインターバル走に取り組む
 クイックスタート期は、走行距離を増やす時期ではない。走行距離を増やすのは、レースを見据えたトレーニングを行う時期に於いてである。勿論、走行距離を増やすと体脂肪の消費量も増える。しかしクイックスタート期においては走行距離を増やさないので、他のトレーニング方法を通じて体脂肪の消費を促進する必要がある。筋力トレーニングもそのような方法の一つである。
 短距離のインターバル走もそのような方法の一つである。極めて短時間(10~30秒間)の短距離ダッシュを多反復することは、体脂肪の消費を有意に促進することが立証されている。また、パワー(=力×距離)の増大にも繋がり、レースを見据えた本格的なラントレーニングにスムーズに移行するのに役立つ。
 逆に言えば、レースを見据えたラントレーニングを行う時期に於いては、短距離のインターバル走はあまり行わない。そのような時期に於いては、よりレースを意識したトレーニング方法(長距離のインターバル走/テンポ走等)を主に行うことになる。

⑤空腹状態でラントレーニングを行う
 空腹状態でのラントレーニングとは、グリコーゲンが枯渇した状態で行う長距離のイージーペース走である。具体的には、トレーニング前/最中に食物を摂らないようにする。それにより、身体は脂肪をエネルギー源とすることを学習する。クイックスタート期に於いては、1回/週の頻度でこれを行うのが良い。なお、レースを見据えた本格的なラントレーニングを行う時期に於いては、長距離走の前/最中はきちんと炭水化物を摂取することが、トレーニングで運動能力を最大限発揮するのに必要となる。

 繰り返すが、アスリートにはアスリートとしての減量方法がある。
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減量の為の、炭水化物サイクル摂取法

2014年07月03日 | 食事
…という、"Competitor Running"誌の記事です。

恐らくですが、(摂取エネルギー量ー運動で消費するエネルギー量)≒1,200kcal/日となるように炭水化物で調整し、一方でタンパク質/脂質は必要量を摂取する食べ方かと思われます。

私としては、全体的にタンパク質摂取量が多い気もします。そこらへんは米国流かもしれません。
食事については、試行錯誤を通じて自己流を確立するのが大切だと思います。

減量の為の、炭水化物サイクル摂取法
by Jeff Gaudette


 ランナーにとって、減量する/原状の体重を維持することは常に優先度が高い。その目的は様々(運動能力の維持/一般的な健康状態の維持等)であるが、ランナーは体重に対する関心が高い。ただ残念なことに、減量とランニングは関係が深いように思われるが、それらを同時に理想的な状態にするのはかなり難しい。

 減量の基本は「摂取エネルギー量を減らす」である。それをきちんと実行するのであれば、摂取する食物の量を測定するだけでなく、摂取する食物を正しく取捨選択するのも必要である。特に、構造の単純な炭水化物(糖類など)の摂取は制限すべきである。なので、いわゆる低炭水化物ダイエットは有効なのである。

 しかしながら、ランナーが強度の高いトレーニングをこなし、その後に出来る限り速やかに身体を回復させるには、適量のエネルギーを構造の複雑な炭水化物(デンプンなど)から摂取するべきであるし、時には構造の単純な炭水化物も適切なタイミングで摂取する必要がある。常に摂取エネルギー量が不足している状態におかれ、筋肉に適切な形態のエネルギー源を供給しなければ、身体は常に疲労した状態に陥り、回復は遅れ、運動能力は低下する。

 ではランナーが、その運動能力を維持しつつ減量するにはどうすれば良いのか?。その答えは、ボディビルディング界にある。ボディビルディング界での経験の蓄積から生み出された「炭水化物サイクル摂取法」をランナー向けに改良することで、減量と運動能力の最適化を同時に達成することは可能である。

①「炭水化物サイクル摂取法」とは何か?。

 
 単純に言い切ってしまえば、炭水化物サイクル摂取法とは、低炭水化物摂取/低エネルギー摂取という日と、高炭水化物摂取/高エネルギー摂取という日を交互に繰り返す食事方法である。期間は、一般的には2日毎に繰り返すが、これはトレーニングのスケジュールに合わせるので構わない。なお、ボディビルダーの場合は、炭水化物/エネルギー摂取を極度に制限する「非炭水化物摂取日」と、炭水化物摂取量を意図的に増やす「高炭水化物摂取日」を交互に繰り返している。

 しかしランナーにとっては、ボディビルダー程極端な事をするのは好ましくない。というのも、ボディビルダーとランナーでは、競技で要求されるエネルギー代謝が異なるからである。ただそれでもなお、ボディビルダーが実践している炭水化物サイクル摂取法を改良すれば、ランナーもその恩恵を被ることが出来る。まずは、炭水化物サイクル摂取法の基本を学習しよう。

<炭水化物サイクル摂取法の仕組み>
 炭水化物サイクル摂取法をよりきちんと理解するには、まずは炭水化物の代謝系及びその減量との関係を理解することが必要となる。

 炭水化物の摂取を制限すれば、血中インスリン濃度は低下する。ある研究によると、血中インスリン濃度が低下すれば、血中への脂肪酸放出が促進され、その結果脂肪の消費量が増大する(だから、朝食前にランニングをすると脂肪燃焼が促進されると考えられている)。この事実を鑑みれば、ランナーが脂肪を消費して減量したいのであれば、まずは炭水化物の摂取を控える必要があると考えるのは当然である。

 しかし一方で、早急な疲労回復/適切な運動能力の発揮という観点に立ってエネルギー摂取を考える必要もある。インスリンはエネルギー代謝系/疲労回復に於いてとても重要な役割を担う内分泌物質である。インスリンは、血液から筋肉細胞へのグルコースの移送を促進する(そして筋肉細胞へ移送されたグルコースはエネルギー源として消費される)。また、炭水化物/インスリンは、重要な栄養成分(タンパク質を含む)を損傷した筋肉へ移送することにより、筋肉の回復過程を促進する役割をも担っている。従って、アスリートは食事を通じて炭水化物を摂取する必要がある。ランニング能力/疲労回復を考慮すれば、トレーニングの直前/直後に炭水化物を摂取するのは特に重要である。

 炭水化物サイクル摂取法は適切に実践されれば、運動で消費される貯蔵グリコーゲンが速やかに肝臓/筋肉に補われ、その結果としてランニング能力の向上/疲労回復の促進が図られる。炭水化物の摂取量を適正化すれば(=グリコーゲンの消費量と等しくする)、脂肪細胞として蓄積されることは無い(筈である)。

②炭水化物サイクル摂取法の効果


 ジェネシス予防センター(Genesis Prevention Center)が実施した研究によると、間欠的に低炭水化物食を摂ることは、継続的に低炭水化物食を摂ること/いわゆる「地中海式ダイエット」に比べ、減量/減脂肪/インスリン抵抗性の低下(低い方が良い)に於いて優れている事が明らかとなった。結果をかいつまんで紹介すると、

【体重/体脂肪の減少量(平均値)】
・間欠的な低炭水化物の摂取:約4kg
・継続的な低炭水化物の摂取:約2.4kg

【インスリン抵抗性の低下】
・間欠的な低炭水化物の摂取 :22%
・標準的な地中海式ダイエット:4% 

であった。

③ランナー向けの改良型炭水化物サイクル摂取法

 ボディビルディング界で実践されてきた炭水化物サイクル摂取法の問題点は、「かなり極端で真似するのが難しい」である。ボディビルダーと異なり、ランナーのトレーニング頻度は5~6日/週である。また、ランナーとボディビルダーでは、競技で要求されるエネルギー代謝系が若干異なる。従ってランナーがボディビルダーの真似をすると、ラントレーニングで激しく苦しむことになるのは必定である。

 しかし、炭水化物サイクル摂取法をランナー向けに改良するのは可能である。具体的には、トレーニング内容に合わせて「炭水化物非摂取日」/「低炭水化物摂取日」/「高炭水化物摂取日」を設定する。

④炭水化物サイクル摂取法の実践例

(1)炭水化物非摂取/低エネルギー摂取日

 休息日/ラントレーニングをしない日に設定/実施する。5日/週以上の頻度でラントレーニングをしている人は、回復ランの日を完全休息日に切り替えて炭水化物サイクル摂取法を実践しよう。この日の目標は、エネルギー摂取量を通常から400~600kcal減とすることである。
 各栄養成分の具体的な摂取量は、

・炭水化物 =1.1g/kg-体重
・タンパク質=2.7g/kg-体重
・脂質   =0.9g/kg-体重

である。体重=60kgの人を例にすると、各栄養成分の摂取量は

・炭水化物 =1.1g/kg-体重×60kg=66g=264kcal(総エネルギー摂取量の約19%)
・タンパク質=2.7g/kg-体重×60kg=162g=648kcal(総エネルギー摂取量の約46%)
・脂質   =0.9g/kg-体重×60kg=54g=486kcal(総エネルギー摂取量の約35%)

となる。これで総エネルギー摂取量は約1,400kcalとなるので、これだと減量は促進されるはずである。

(2)低炭水化物摂取/中程度のエネルギー摂取日
 これはベース走の日に実施する。そして、ランナーにとっての炭水化物サイクル摂取法の中核を成す。具体的には、ラントレーニングとその後の疲労回復に必要なだけのエネルギーを摂取することになる。トレーニング内容に合わせてではあるが、3~4日/週実践する例が多いだろう。高強度のトレーニング日/ロング走の日に実践してはならない。
 各栄養成分の具体的な摂取量は、

・炭水化物 =2.2g/kg-体重
・タンパク質=2.9g/kg-体重
・脂質   =1.1g/kg-体重

である。体重=60kgの人を例にすると、各栄養成分の摂取量は

・炭水化物 =2.2g/kg-体重×60kg=132g=528kcal(総摂取エネルギー量の約29%)
・タンパク質=2.9g/kg-体重×60kg=174g=696kcal(総摂取エネルギー量の約38%)
・脂質   =1.1g/kg-体重×60kg=66g=594kcal(総摂取エネルギー量の約33%)

となる。炭水化物の摂取量は比較的少ないが、総エネルギー摂取量は約1,800kcalとなり、ランニングに必要なエネルギーを摂取しつつ体重増を避ける事が可能となる。

(3)高炭水化物/高エネルギー摂取日
 これは高強度のトレーニング日/ロング走の日に実践する。スケジュール次第ではあるが、大抵は2~3日/週の頻度で行うことになるだろう。(1)(2)に比べて摂取を増やす炭水化物は、構造の複雑な炭水化物(デンプンなど)由来とし、トレーニング直前/直後に摂る。その目的は、
・トレーニングで消費したグリコーゲンを補う
・インスリンの放出を通じて同化反応を促進する
・精神的な満足感を得る
である。食事の組み立て方は、野菜類を主体とし、それに果実類/精製度の低い穀類を追加する、という形が望ましい。なお、必要に応じ、構造の単純な炭水化物(糖類等)を少量追加するのは構わない。
 各栄養成分の具体的な摂取量は、

・炭水化物 =5.6g/kg-体重
・タンパク質=3.8g/kg-体重
・脂質   =0.9g/kg-体重

である。体重=60kgの人を例にすると、各栄養成分の摂取量は

・炭水化物 =5.6g/kg-体重×60kg=336g=1,344kcal(総摂取エネルギー量の約49%)
・タンパク質=3.8g/kg-体重×60kg=228g=912kcal(総摂取エネルギー量の約33%)
・脂質   =0.9g/kg-体重×60kg=54g=486kcal(総摂取エネルギー量の約18%)

となる。これで総エネルギー摂取量は約2,800kcal/日となる。

 精力的にラントレーニングをこなしつつ減量したいという人は、この炭水化物サイクル摂取法を試してみてはいかがだろうか。ランニング同様、実践は簡単ではないし、試行錯誤を強いられるだろうが、それなりの効果は得られる。
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人体における脂質の役割

2014年04月24日 | 食事
今朝の体組成】
体脂肪量  :
6.4kg
除脂肪体重:57.6kg
------------------------------
体重    :
64.0kg
体脂肪率 :10.0%

漸く「春の陽気」という表現がピッタリ、という天候です。
陽気に誘われ、サラッとLSDランしました。

【今日の朝稽古】
内容       :脚の動くままにLSDラン
走行時間    :1時間20分25秒
走行距離    :15.4km(→
5分13秒/km)(月間累計:140.3km
消費エネルギー:973kcal(→
63.2kcal/km)(月間累計:9,290kcal

ペース(時間/km)が徐々に速くなっています。以前に比べ脚がよく動くという実感があるのですが、その理由として、
(1)暖かくなったから
(2)油脂の摂取量を増やした(0.5g→1.0g/kg-体重)→抗酸化作用が効いた
の2つではないか?と考えています。

(1)はさておき、(2)について考えてみます。

とかく目の敵にされる脂質ですが、身体にとって必要不可欠な栄養素でもあります。
その役割を挙げると
・体温調節
・血圧の維持
・内分泌物質(ホルモン)の原料
・細胞膜の構成成分
となります(「ウィダー・スポーツニュートリション・バイブル(新訂版)」より)。

その他にも、(2)のように抗酸化作用=活性酸素の除去という役割もあるのかな、と思います。

これらを考慮すると、ランナー(≒アスリート)であっても必要最小限の脂質は摂取する必要があると考えます。
逆に言えば、
・寒がりである
・皮膚が乾燥する。特に、踵がひび割れる
・やる気が出ない、常に身体が何となく重い
・(女性では)生理が不順/止まった

という人では、脂質の摂取が不足している恐れが考えられます。
因みに吾輩(男)、上記4項目の内、上位3つは当て嵌まります。

では、「必要最小限の脂質摂取量は?」ですが、"Sports Nutrition for Endurance Athletes"では1g/kg-体重/日を提唱しています。吾輩、当面はこの数値が効くかどうかを人体実験してみます。

余談ですが、「油脂」といっても「油」と「脂」は別物だそうです。「油」はさんずいへんだから常温で液体状のものを指し、「脂」はにくづきなので動物由来のもの(≒常温で固体)を指すのだとか。
「油」が常温で液体状なのは、融点が低い不飽和脂肪酸が多いからなので、摂るなら油、です。

よく見れば「脂」はにくづきに「旨い」です。確かに脂肪の多い肉って美味しいもんなー。



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運動中/後の炭水化物摂取について

2014年03月27日 | 食事
…という"Competitor Running"誌の記事です。

吾輩の持論?は「生物は生死が関わらない程度に苛めた方が育つ」です。具体的には、回復不能には至らない程度の厳しい環境に晒せば、生物はそれに適応しようと進化?するということです。
この持論?からすると、炭水化物が枯渇した状態で運動するのも一理あるかと思います。

尤も、科学的に結論が出た訳じゃないので、あくまでも各人が自らの経験を通じて結論を出す必要はあります。

栄養補給したら身体能力は低下するのか?
by Matt Fitzgerald


 かっては、運動時に「根性を鍛える為に」水を飲まないようコーチが指導する時代があった。実際には、脱水状態で運動することで得られるのは「身体能力の低下」だけである。しかし、運動中の炭水化物摂取に限れば、それを制限することで根性が鍛えられるという、古臭い理屈の正しさを裏付ける科学的証拠が報告されている。

 最近発表された研究結果では、運動中に炭水化物を摂取することにより、身体能力は短期的に向上するが、身体の運動に対する有利な適応が阻害される可能性がある、と報告されている。逆に、炭水化物が枯渇した状態で運動を行うことにより、身体には過大な負荷がかかるが、一方で身体能力を向上させるような生理学的反応を増強する効果も見られるとのことである。

科学的な証拠

 2010年に、McMaster大学の研究グループが行った実験では、炭水化物を適切に摂取した状態での運動と比較すると、炭水化物が枯渇した状態で運動することにより、ミトコンドリアの産生が促進され、その結果として(筋肉)細胞が有酸素的にエネルギーを生成する能力が増大した。ミトコンドリアは(筋肉)細胞内で有酸素的な代謝活動を行っている小器官である。ミトコンドリアの密度が増大することは、有酸素運動能力の向上を支えるもっとも重要な事象である。

 実験の具体的内容は、以下の通りである。
 被験者数は10名で、被験者にはエアロバイクを用いた高強度の運動試験を(5分間×4反復)×2回/日させた。試験間の休息は3時間とした。最初の試験日から一週間後にもう一度試験を行った。被験者をA・Bの2群に分け、最初の試験日の1回目の試験後には、A群に高炭水化物飲料(対照区)/B群にゼロカロリー飲料(試験区)を飲ませた。つまり、これにより、2回目の試験を行う際にはB群の被験者は炭水化物が枯渇した状態になっている。なお、2日目の試験日には、A/B群に与える飲料を入れ替えた。

 炭水化物が枯渇した状態で運動試験を行った群(1日目:B群、2日目:A群)の被験者では、ミトコンドリア生成の指標であるp38 MAPKという化学物質の血中濃度増大が確認された。つまり、p38 MAPKの生成と栄養(炭水化物)摂取には密接な関連があり、炭水化物が枯渇した状態で運動を行うことによりその産生が増大することが示されたことになる。

補強証拠

 炭水化物が枯渇した状態で運動を行うことが身体にとって有利であることを示す研究結果は他にも報告されている。インターロイキン6(以下IL-6)は免疫系を構成する要因の一つであると共に、運動中に筋肉/脳から血中に大量に放出される。IL-6は、運動後の身体能力(脂肪燃焼能力/筋損傷に対する抵抗力の向上等)の向上を促進する効果があると考えられている。

 運動中のIL-6放出を誘起する主要因は、グリコーゲン(筋肉/肝臓に蓄積される炭水化物)の枯渇である。なので、グリコーゲンが枯渇した状態で運動することにより、そうでない場合に比べ、運動に対する適応がより進行するという理屈が成り立つ。運動中に炭水化物を摂取した場合、筋肉からのIL-6放出が大きく抑制されるという研究結果も報告されている。

一体、どっちがいいのか?

 これらの研究結果も報告されているが、それでもいきなり「アスリートは運動中/直後に炭水化物を摂取することを避けるべきだ」と結論付けるのは早計に過ぎる。意図的に炭水化物を枯渇させた状態で運動することは、身体の有利な反応を加速させる効果があるとは思われるが、運動中/直後に炭水化物を摂取することによる効果=主に運動時に発揮される身体能力の向上/急速な疲労回復も無視出来ない。

 なので、炭水化物が枯渇した状態での運動/炭水化物が満ちた状態での運動の適切な割合が決められるだけの研究結果が得られる迄は、時々は炭水化物が枯渇した状態で運動するという程度にとどめておくのが適切と思われる。
コメント
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