トレーニングを中断すべきかどうか迷ったら

2014年05月30日 | Competitor Running
【今朝の体組成】
体脂肪量  :
6.1kg
除脂肪体重:58.4kg
------------------------------
体重    :
64.5kg
体脂肪率 :9.5%

今朝はスケジュール通りとして、朝稽古はお休みしました。

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標記の件に関する、"Competitor Runnning"誌の記事です。

難しい問題です。
日本人なら選択肢①という人が多いでしょう。
ただ、体調が良くない時に頑張っても、それ程追い込めるわけでもない、というのも真実です。
結局、経験を重ねて判断力を向上させるしか無いのでしょうね。

吾輩としては、「サボりたいというココロ」が原因の場合もあるので、取り敢えず頑張ってみるというのを心がけてます。

トレーニングを継続すべきかどうか迷ったら
by Matt Fitzgerald


 全てのトレーニングセッションが成功裏に終わることは無い。最もキツいと考えられる高強度ランは、時には予想以上にキツいかもしれない。というのも、そのようなトレーニングは文字通り身体能力の限界を試すものであり、それ故、心身両面に於いて過去に経験したことの無い適応能力を必要とする(べき)ものだからである。競技経験を積み重ねるに連れ、トレーニング/休養のバランスをどう保つのが最適であるかが理解出来、その結果として「上手く行かなかった」トレーニングの回数は減らせる。しかしそれでも、時にはトレーニングが上手く出来なかったという日が生ずるのは不可避である。

 では、そのような場合に直面したらどうすれば良いのだろうか?。無理やり続行するべきなのだろうか?。それともトレーニング負荷を落とすのがいいのだろうか?。思い切ってトレーニングを中止して帰宅するのがいいのだろうか?。これらはいずれも正解である。言い換えると、個々の状況に応じて対処すべきなのだ。

 一般的なルールとしては、まずは頑張ってトレーニングを継続しようとすべきである。しかし、それが必ずしも常に賢明とは限らないし、第一可能かどうかすら分からない。そのような場合、考慮すべき他の選択肢も存在する。そのような選択肢について検討する。

選択肢①:無理やり続行する

 ウォームアップを終え、メインとなるトレーニング種目に移行した時点で調子が上がらない(≒悪くもない)事に気付いた場合は、予定通りトレーニングを遂行するのが最適だろう。そのような状態でトレーニングを続行するのは余り気持ちが良いものでもないし、もしかすると目標とするペース/心拍域に到達出来ないかもしれない。しかし、トレーニングによる刺激(=ストレス)はある程度得られる。また、「頑張った!」という自己満足感も得られる。そして筆者の経験では、次回のトレーニングはより良い状態で迎えられる例が多かった。

選択肢②:心拍計etc.を無視する
 普段と同じ負荷のトレーニングを遂行出来ない、という日もあり得る。それ自体はおかしな事では無い。脚の調子が少し落ちているだけである。そのような状態で高負荷のトレーニングを行った挙句、目標とするペース/心拍域に達していないのを認知するのはストレスが溜まる。でもそのような場合は、敢えて心拍計etc.の表示を無視し、感覚を基準にトレーニングを予定通り遂行するのが望ましい。トレーニングを中止するよりかは、何らかの効果は得られるのだから。この方法は、ウォームアップを終えてメインとなるトレーニング種目に移行した時点に於いて、目標とするペース/心拍域にはとても到達出来ないと感じるものの、知覚的には目標とする強度のトレーニングが遂行出来ると感じた場合に有効である。

選択肢③:トレーニング内容を見直す
 ウォームアップを終えた時点で体の調子が上向かず、予定していた強度のトレーニングが遂行出来ないと認知することもあるだろう。しかしそのような場合でも、トレーニングを中止して帰宅するというのも、気分的には良くない。そのような場合は、トレーニング内容を高強度×短期間のインターバル走に切り替えるのも一つの方法である。例えば、「乳酸閾値近辺での強度で3分間走×5本」を予定していたとすれば、それを「最大スピードの95%程度で30秒ダッシュ×8本」に変更する等、である。この方法が有効なのは、主に用いるエネルギー供給系と疲労の間に関係が認められるからである。つまり、有酸素運動による疲労は無酸素運動に影響を及ぼさない。この現象を上手く利用するのも一考である。

選択肢④:トレーニング量を減らす
 疲労が有酸素運動に由来するのであれば、トレーニング内容を比較的短時間×低強度のものに変更するのも選択肢の一つである。競技経験を重ねるに従い、
・高強度の有酸素運動は出来ないが、数本のスプリント走なら出来る状態
・いかなる高強度のトレーニングも出来ない状態
を体調から区別/判断出来るようになる。なお、この判別が出来ない内は、選択肢③かもしくは選択肢⑤のいずれかを選択するのが最も賢明である。

選択肢⑤:トレーニングを中止し、帰宅する
 ウォームアップ中から体調が良くない/筋肉痛が酷い/何らかの故障の初期症状が認められるという場合は、潔くトレーニングを中止しよう。そのような選択も適切である。「何かしないと身体能力が著しく低下するかも」という不安感に囚われてはいけない。次回のトレーニングで頑張ればいいのだ。

 
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内分泌物質(ホルモン)とランニングの関係

2014年05月23日 | Competitor Running
【今朝の体組成】
体脂肪量  :
6.6kg
除脂肪体重:58.3kg
------------------------------
体重    :
64.9kg
体脂肪率 :10.2%

昨夜の時点では、今朝は自転車ロード練習@箕面と考えていたのですが、記憶を失ってしまい、気が付いたら7時でした。なので、お休みしました。
やはり、オッサンにとっては5日/週の有酸素運動が限界みたいです。ここは年齢に抗わず、素直に生きようと思います。

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標記の件に関する、"Competitor Running"誌の記事です。

やはり、自然のシステムには逆らわない方が良さそうです。

ランニングに於ける内分泌物質(ホルモン)の役割について
by Kelly O'Mara


 真剣にトレーニングに取り組むほど、内分泌物質/内分泌系に何らかの影響が及ぶのは不可避である。しかし、テストステロンやヒト成長ホルモンの血中濃度を上げようという考えは、いわば内分泌系を台無しにすることに他ならず、その結果は悲惨なものとなる。

 ノースカロライナ大学で運動生理学を研究し、「運動内分泌学("Sports Endocrinology")(第二版)」の共著者でもあるAnthony Hackney教授は、「中途半端な知識は危険である」と警告している。

 Hackney教授は、内分泌物質同士のバランスを理解することが大切だと強調する。アスリートとして知っておくべき内分泌物質は、
・成長ホルモン(ヒト成長ホルモン、Human Growth Hormone)
・インスリン及びインスリン様成長因子
・コルチゾール
・テストステロン
である。

 シアトルを拠点とする"Club Northwest"でランニングコーチを務めるTom Cotner (Ph.D)は、成長ホルモンは筋肉の適応反応を誘起すると指摘する。成長ホルモンはタンパク同化ホルモンであり、成長を促進する作用がある。具体的には、運動によるストレスを受けた筋肉/細胞に働きかけ、ストレスに適応出来るようにする。実際に筋肉がストレスに適応するのは、回復期間に於いてである。

 人間では、睡眠中に脳波がデルタ波を示す期間に分泌される。ただ、加齢に伴い、睡眠中に脳波がデルタ波を示す期間は短くなる。また運動中にも成長ホルモンは分泌されるが、量としては少ない。Cotnerによると、成長ホルモンがその効力を発揮するのは、運動後10~75分の間である。

 成長ホルモンはエネルギーの消費に反応して脳下垂体から分泌されるので、Cotnerによるとその系を「騙す」ことは可能である。例えば、
・1回/日以上トレーニングをする
・より強度の高いトレーニングをする
・トレーニング後に水風呂で身体を冷却する
等でエネルギーを消費する、といった方法によってである。

 しかし、週単位でトレーニングを積み重ねていく内に、1回のトレーニングに伴い分泌される成長ホルモンの量は徐々に減少する。これは、肉体がトレーニングに伴いもたらされるストレスに適応した結果である。Hackney教授によると、成長ホルモンの効果を実感したいのであれば、それこそ体調が絶不調となる迄追い込み、その状態でトレーニングを行う必要があるのだそうだ。

 運動に関連する内分泌物質の中で最も見落とされているのは、インスリン/インスリン様成長因子である。インスリン様成長因子は成長ホルモンによって活性化され、細胞に付着し、細胞の成長/代謝を調節する。インスリンは細胞によるグルコースの取り込み/グリコーゲンの貯蔵を調節する。この調節作用は、運動時にエネルギー代謝系が正しく活動するのに必要となる。

 食事/休養/運動が規則正しく行われていれば、内分泌物質の間には相互調節作用が作動し、それらの均衡が維持される。Hackneyに言わせると、「(内分泌物質の)あるものは増加し、あるものは減少する」となる。

 しかしオーバートレーニング状態になると、内分泌物質間の均衡が崩れる。Cotnerは「内分泌系に過剰な負荷を掛けるのは可能である」と指摘する。

 コルチゾールは副腎で分泌され、抗炎症作用/細胞を破壊する異化作用を有する内分泌物質である。人間では通常、コルチゾールは筋タンパク質を1%/日のペースで破壊し、一方で成長ホルモン/インスリン様成長因子が破壊された筋タンパク質を再生/置換している。継続的にトレーニングをしていると、コルチゾールによる筋タンパク質の破壊量は3~5%/日に増大する。つまり、トレーニング量が増えるに伴い、コルチゾールの分泌量も増大し、その結果として筋タンパク質の破壊量も(基本的に)増大する。

 トレーニング量が過剰になると、体内のテストステロン濃度も減少する。テストステロンは性別に関係無く体内に存在し、筋肉量の増大/回復に要する時間の減少に寄与している。テストステロン濃度はトレーニング強度と関係する。具体的には、トレーニング強度が高くなるとテストステロン濃度は増大し、逆に長時間×低強度のトレーニングではテストステロン濃度は減少する。

 アスリートの場合、内分泌物質の均衡が崩れる第一の理由はオーバートレーニングである。内分泌物質の均衡が崩れた結果、オーバートレーニングに伴う様々な現象(不眠/酷い筋肉痛/安静時心拍数の上昇/全身的な疲労感等)が発現する。一般的には、このような現象が見られる場合、トレーニングを始めとする生活全般を見直す必要がある。ただ、どれ位のトレーニング量が適切かを正確に知ることは困難である。

 Hackney教授は、「どれ位のトレーニング量が適切かを正確に予測出来るのであれば、私はもっとお金を稼げただろう」と笑いながら語る。

 内分泌物質の均衡に影響を及ぼす他の要因に、日常生活で受けるストレスが挙げられる。それらはコルチゾール/エピネフリンノルエピネフリンの分泌を誘起する。Cotnerによると、睡眠不足/アルコール摂取によっても成長ホルモンの分泌が抑制される。アルコール摂取に関しては、ビール一杯(訳者注:正確な量は記載されていません)を飲むと、成長ホルモンの分泌量が25%減少するとのことである。また、加齢に伴い内分泌系の活動は低下し、成長ホルモンの分泌量は減少する。これがいわゆる「遅発痛」の原因と考えられている。なお、この遅発痛は、元々成長ホルモン/テストステロンの分泌量が少ない女性にも見られる現象である。

 摂取エネルギー量が充分でない場合、内分泌系全体の活動が阻害されるという問題が発生し得る。これは女性アスリートにとっては深刻な問題となる。運動直後の「回復の為の時間帯」に(タンパク質6g+炭水化物30g)を摂るとコルチゾールの分泌が遅延される。また、体内で産生されるEPOによる調節作用が働いて赤血球が産生される為には、鉄分を充分に摂取する必要がある。そして、何らかの疾患等が発症している状態では、内分泌系はそれらへの対処を優先する。

 特定の内分泌物質だけをより多く分泌させようとする方法は様々である。例えば、低酸素室で寝ると、EPOの血中濃度が自然に増大する。また、テストステロンやヒト成長ホルモン(HGH)の血中濃度を増大させる市販薬も存在する。しかしそれらも「やり過ぎは効かない」とHackneyは警告する。

 特定の内分泌物質の血中濃度を短期的に操作する有効な方法は確かに存在する。例えば筋力トレーニングを行うと、成長ホルモン/テストステロン/インスリン様成長因子の血中濃度が短期的には増大する。しかしそれらが長距離走に有効=速く走られるようになる、ということは立証されていない。

 違法なドーピング手法によって内分泌物質の血中濃度を増大させ、その結果として身体能力を向上させることが可能という点については、HackneyとCotnerも同意している。しかしあくまでもそれらは違法であると共に、健康上重大な問題を引き起こす。内分泌物質の均衡を人為的に操作することは、場合によっては死につながることもある。内分泌系は複雑な系なので、あくまでも固有の自己調節機構に任せるのが適切である。また、その複雑な系の一部を人為的に操作することでどのような副作用が現れるかを完全な把握することは不可能である。

 Cotnerは「全ての内分泌物質を同等に扱うことは不可能である」と指摘する。 
 
 
 
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心拍トレーニングについて、注意したいこと

2014年05月05日 | Competitor Running
【今朝の体組成】
(今日もデータを自宅に忘れたので、割愛させていただきます)

こどもの日は天気予報通り、10時前から雨@大阪市でした。
なので、朝稽古もお休みです。晴走雨読です。
こんな日は休養/ケアに充てるのが賢明です。

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久々の"Competitor Running"誌の記事です。

(3)~(5)は大事ですね。(1)と(2)は、やっている内に分かることだと思います。

心拍トレーニングについての注意事項
By Alan Culpepper, Apr. 30, 2014


 心拍トレーニングは、持久力系競技におけるより科学的なトレーニング方法として1990年代中盤に発展した。トレーニング/レース中の心拍数データを記録し、それを解析することで重要な知見が得られた。それらの殆どは現在においても、トレーニング理論として通用する。

 技術の進歩に伴って新しいトレーニング方法が考案されると共に、道具がより使い易くなり、より個人の実情に合わせた応用も可能となった。しかしそれでも、限界は存在する。まさに「何とかとハサミは使いよう」である。以下に、心拍トレーニングを利用するに当たり考慮すべき幾つかの注意点について述べる。

(1)個人差を考慮する
 心臓の能力/作用には個人差が存在する。心拍数を基準にしたトレーニングゾーン(以下「心拍ゾーン」)は、大多数の人にある程度共通するように設定されてはいるが、細部においては個人差がある。これは、外見上の運動能力が同レベル、という人同士においても見られる。
 また、加齢に伴い心臓自体が変化(成長/成熟)するので、心拍ゾーンは都度見直す必要がある。最も正確に心拍ゾーンを設定する方法は、大学等の研究機関/公共施設で最大酸素摂取量/最大心拍数を測定し、その結果を基準とする方法である。

(2)トレーニング内容に合わせる
 トレーニング内容が高度化するに連れ、トレーニングに関する要素全てがより細分化/個別化/特化する。心拍トレーニングを始めたばかりの初心者が3~4回/週走るというレベルであれば、広めの心拍ゾーンでトレーニングしても問題無い。しかしトレーニングが進展するに連れ、その強度/量も増大する。それに合わせ、心拍ゾーンもより厳密に設定する必要が生じる。ある一定の心拍域内でトレーニングを継続しているのを確認する必要もあるし、時にはその単位時間当たりの変動を確認する必要もある。

(3)安静時心拍数を確認し、適宜フィードバックする
 安静時心拍数の変化は病気/オーバートレーニング/疲労の蓄積/(場合によっては)妊娠の兆候であり得る。気分/自覚としては問題無くとも、トレーニングを開始した途端に心拍数が著しく増加するという場合もある。そのような場合、大抵は数日後に病気が発症する。安静時心拍数は毎日の起床時に測定し、その変化を確認するべきである。そして通常時に比べ著しく(訳者注:+10拍/分程度)増加した場合は、トレーニング量/強度を減らすか、思い切って休養日とするのが望ましい。

(4)水分はきちんと摂取する
 早朝にラントレーニングするランナーでは、走り始めてから最初の20分間は心拍数が高く、その後通常状態に迄低下すると言われる。この現象は、身体が脱水状態にあるか、もしくは体液が安定した状態に無い事に起因する。長距離ランの後半に於いて心拍数が徐々に増加していくのも同じ現象である。その場合、ペース(速度)を落としても、心拍数は増加し続ける。その理由は、体液バランスが適切で無い為、血液の粘度が増大するからである。

(5)心拍数を重視し過ぎない
 勿論、心拍数は有用な情報となり得るが、レースの際は心拍数に余り囚われないのも大切である。レースで好成績を収めるには、体調を自覚し、それを基に走る能力が重要となる。なので、トレーニングを通じそのような能力を養成するのが、レースで好成績を収めることにつながる。レースにおいて心拍数を確認し、それをもって自覚した体調を再確認のは良いことかもしれないが、心拍数を体調の絶対的な基準としてはならない。
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トレイルランニングへの移行準備

2014年04月21日 | Competitor Running
…という"Competitor Running"誌の記事です。

「裸足で筋力トレーニングをすることで、足関節の安定性が向上する」という点には注目しています。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
トレイルランニングへの移行準備
by Jeremey DuVall


 気温が上がるに連れ、特に夏場は舗装路から不整地(以下トレイル)へとランニングコースを変えようと考えるランナーは多い。トレイルランニングは、身体に加わる衝撃は少ないし、コースは多様だし、風景は素晴らしいという点で関心が高まっている。舗装路でのラントレーニング→トレイルランニングへきちんと移行出来れば、トレーニングのバリエーションは増えるし、やる気も再生することであろう。しかし準備不足だと、怪我で残りのシーズンを棒に振るだけ、となりかねない。

 舗装路→トレイルへとランコースを変更するのは、肉体にとっては試練となり得る。トレイルでは、どの一歩も同じとはならない。捻って、切り返して、コーナーを曲がって、岩/木の根っ子を飛び越えねばならない。それらにきちんと対応出来るようになり、トレイルランニングで怪我をしないようにする為には、以下のトレーニングでバランス能力/筋力を向上させる必要がある。

(1)ジャンプ系の種目に取り組む

 比較的平坦な舗装路でのランとは異なり、トレイルでは路面状態がしょっちゅう変化する。それはそれで単調さとは無縁であるが、肉体にとっては大きな試練ともなる。特に下り坂でのランは、身体に大きな負担がかかるという点でハードである。トレイルランニングに対応出来る身体を作るには、爆発的なパワー発揮("Plyometrics")を目的とした種目に定期的に取り組むのが望ましい。

 まずは、ボックスジャンプから始めよう。2~3回/週(連日は行わない)で充分である。爆発的に筋力を発揮し、一回で箱(高さは10~60cm)に跳び乗る事に集中する。基本的なボックスジャンプに習熟したら、次はデプス・ジャンプ("depth jumps"、箱から跳び下りる)に取り組もう。デプス・ジャンプでは、ボックスジャンプに比べ身体に加わる衝撃が増大するので、トレイルランニングでの下り坂対応として適している。

 デプス・ジャンプでは、最初に箱の上に立つ(膝関節は伸ばしたまま)。そこから飛び降り、両脚同時に着地する。着地の際は膝関節を軽く屈曲し、出来る限り衝撃を和らげることに留意する。3~5回/セットとし、適宜休息しながら反復する。適当な箱が無い場合は、縄跳びやスキップ等でも同様の効果が期待出来る。それらを行う場合でも、着地時の衝撃を少なくすることに留意したい。

(2)足関節の安定性を向上させる

  トレイルランニングでは、路面状態が不整なので、足関節を捻挫する危険性が増大する。なので、トレイルランニングを行う前には、足関節の安定性を向上させるトレーニング種目に取り組むのが望ましい。

 バランス能力/足関節の安定性を向上させるには、緩斜面/バランスディスク等を用いるのも良い。しかしまずは、裸足でトレーニングするのが一番有効である。まずは、自体重のみを負荷とし、裸足でスクワット/ランジ/腕立て伏せなどをすることから始めよう。それらに慣れたら、次は片足スクワットや裸足での(1)に挑戦しよう。

 バランスディスクetc.の道具が好きな人は、それらを用いるのも良い。ただ、それらを用いる際は、負荷は自体重のみとし、筋力トレーニングの最後に実施するのが良い。バランスディスクetc.を用いると足元が不安定になり、発揮出来る筋力が低下することから、バーベルetc.の負荷を追加するのは好ましくない。第一、それらはバランス能力を向上させるという目的に合致しない。

(3)時間をかけて徐々に移行する

  春シーズンに於いて走り込んだ距離が長いからといって、すんなりトレイルランニングに移行出来るかどうかは別である。既述の通り、トレイルと舗装路は全く別物だからである。なので、いきなり舗装路→トレイルへとコースを変更するのでなく、徐々に移行するようにしたい。

 最初は、舗装路でのラントレーニングの最後に不整地(芝生の上など)を走るところから始める。その際には、不整地に足を馴らすと共に、フォーム等にも注意しよう。次は、イージーランをトレイルで行うようにする。その際は、スピード/距離でトレーニング内容を考えないようにする。トレーニング内容は時間で規定すること。スピード/距離については、足がトレイルに馴れるに連れ、自然と増えるに任せれば良い。

 トレイルで5~6km程度を気持ち良く走られるようになれば、本格的にトレイルランニングに移行しても大丈夫である。
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ハーフマラソンに向けた(13+1)個のアドバイス

2014年03月05日 | Competitor Running
…という"Competitor Running"誌の記事です。

確かに、ハーフマラソンはフルに比べ敷居が低そうです。
フルマラソンだと、1回/週は3時間走or30km走をするべきだ、と言われていますし…。

マラソンを専門に取り組むならともかく、自転車ロードetc.と組み合わせて楽しもうという人にとっては、ハーフ位の方が面白そうです。
それに、競技時間はヒルクライム/ハーフマラソン共に1時間ちょうど~1時間30分程度なので、トレーニングでも相乗効果が期待できそうですし。

と、色々考えてしまいます。

ハーフマラソンに役立つ13+1のアドバイス
by Mario Fraioli, Mar. 04, 2014


 最近、アメリカではハーフマラソンの人気が高まっている。2012年にハーフマラソンに出場した人の数は185万人であるが、これは2011年に比べ約15%増である(Running USA調べ)。

 何故人気が高いのか?。理由は、多くのランナーにとって、ハーフマラソンは「手の届く挑戦」だからである。ゴール後に得られる高揚感はフルマラソンと同じ程度である一方、レース(及びその為のトレーニング)でも身体にフルマラソン程の負担がかからない。更に、レース後の疲労もそんなに残らないので、年に1~2回以上レースに出るのも無茶ではない。

 ビギナーもベテランも、今年はハーフマラソンに挑戦してみてはいかがだろうか?。以下に、ハーフマラソンに役立つ13+1のアドバイスを掲載する。

(1)「ハーフマラソンを走る理由」を明確にする
 ベテランランナーにとっても、長距離のレースに備えトレーニングする/実際にレースに出場するのは、努力を要求する挑戦である。なので、ビギナーもベテランも、まずは「何故ハーフマラソンを走るのか?」と自らに問うてみよう。この問いに答えることは、自らの選択に対する理由を付与することであると同時に、トレーニング~レースを通じた動機付けになる。
 ランニングを始める理由は人様々だろうが、必ず理由はある。例えば、何か新しいことを始めたい/モテる為にまずは痩せたい/チャリティー目的だ/自己新記録を樹立したい、等々。ただ理由が何であれ、それを常に意識し、ハーフマラソンを完走することがどういう意味を持つのかを忘れないようにしたい。

(2)少なくとも13週間はトレーニングする

 単純計算すれば、1.6km/週づつ走行距離を延ばすことになる。これは一見珍しく思われるだろうが、ハーフマラソンに備えたトレーニング期間としては十分である一方、トレーニングがマンネリになってやる気が失せてしまうことも無いだけの期間でもある。ビギナーであれば、過去に走った最長距離はせいぜい6~8km程度であろう。ここから13週間かけて、1.6km/週づつ走行距離を増やしていけば、レース当日には完走する自信は十分に有しているであろう。ベテランランナーでハーフマラソンを完走する自信が既にあるという人は、レースを意識したトレーニングに挑戦しよう。そうすれば、自己新記録が樹立できる可能性も出てくる。なお、過去にハーフマラソンを完走した経験があるランナーは、トレーニング期間を10週間に短縮しても構わない。

(3)シューズは2組用意する
 (2)でトレーニング期間は少なくとも13週間≒3ヶ月としたい、と書いた。それだけのトレーニング期間を1足のランニングシューズで間に合わせるのは良くない。シューズを2足用意しておくと、シューズの回復期間を十分設定出来るので、各々のシューズの使用可能期間が延ばせられる。これは、強度の高いトレーニングの後に肉体を回復させる必要があるのと同様である。また、最近の研究結果では、シューズを2足用意し、それらを交互に履くことで、筋骨格系にかかる負荷が低減され、ひいてはランニングに伴う故障の発生リスクも低減させられる事が明らかとなっている。確かにシューズを2足用意するのは金銭的には痛手だろうが、投資に対する収益も大きい。シューズを2足用意することは、身体/目的に対する投資と考えてもらいたい。

(4)他者と一緒にトレーニングする
 一人でトレーニングするより、仲間と一緒にトレーニングする方が良い。仲間と一緒にトレーニングするのは楽しいし、走行距離を延ばす/より強度の高いトレーニング種目に取り組む/動機が萎えてくる、といった時に役立つ。また、トレーニング~レースの経験を共有すれば、レース後に喜びを分かち合えるだろう。逆に一人でトレーニングしていれば、寒い朝にはついトレーニングをサボってしまうだろうが、仲間とトレーニングをする約束をしていれば、頑張ってトレーニングしようという気にもなる(はずである)。自己新記録を目指すのであれば、出来れば自分より速い人と一緒にトレーニングし、その人を目標として頑張ろう。

(5)トレーニングの一環として5,000m/10,000mのレースに出場する
 ハーフマラソンのレースまでまだ3ヶ月もある、と思えば気が遠くなりそうだ。なので、トレーニング期間中に5,000m/10,000mのレースに出ることでやる気を維持すると共に、トレーニングの成果をチェックするのも良い。トレーニングを開始してから1ヶ月目に5,000mのレースに出場し、2ヶ月目に10,000mのレースに出場するのが、動機の維持/身体能力の向上/トレーニングの成果確認等に適している。また、そのようなレースに出場することは、ハーフマラソン本番の予行演習にもなる。これは、ビギナーにとって重要である。というのも、ビギナーがいきなり本番のレースに出場すると、初めての事だらけでパニックになるかもしれないからだ。

(6)時にはいつもと違う路面を走ってみる
 毎日同じコースを走るのは楽ちんだし、ジムのトレッドミルばかり利用するのは便利だろう。しかし、可能な限り、様々な路面を走ってもらいたい。芝生の上や未舗装路を走るのは衝撃が少ないので回復ランに適している。特に未舗装路を走ることは、下肢全体の筋力強化にもなり得る。舗装路を走るのは脚の筋力強化/レースペースの把握に役立つが、トレッドミルを利用するとペースが文字通り正確に設定出来る。そして、様々な路面を走ることで、ランニングに関連する、オーバーユースによる故障が回避出来る。

(7)まずはペースを上げる
 自己新記録の樹立が目標というベテランランナーは、トレーニング期間の最初の4~6週間は、5,000m/10,000m走のランナーのように短距離におけるペースを上げる為のトレーニングに取り組もう。長距離走etc.で走行距離を増やす前に、短距離のインターバル走/テンポ走に集中的に取り組もう。そうすることでペース/ランニング効率が著しく向上すると共に、その後のハーフマラソンに特化したトレーニング(5~6週間)が格段に有効なものとなる。5,000m~10,000mがより速く走られるようになれば、ハーフマラソン全体のレースペースのコントロールがより容易になる。

(8)レースペースで走る練習をする

 そんなの当たり前と思われるだろう。しかし多くのランナー(ベテランを含む)は、ハーフマラソンでのレースペースより著しく遅いかもしくは速いペースでトレーニングしている。そして、トレーニングでのペースでレースを走られないことに悩んでしまう。人生におけるその他の事柄と同様、事前準備していれば本番は完璧である。レース本番の6~8週間前からは、テンポ走(距離は6~12kmとする)/インターバル走/長距離走の最後の3~6kmは、レースペースで走ってみよう。

(9)栄養補給も実験しておく
 科学実験程厳密でなくていいが、レース本番までに栄養/水分補給を試しておくのは重要である。レース本番で胃腸の調子が崩れることだけは避けたい。自前で補給食を用意しないのであれば、エイドステーションでどのブランドのスポーツドリンク/ジェル食品が提供されるかを事前に調べ、それらを試食しておこう。ハーフマラソンではハンガーノックに陥る可能性もあるので、事前にきちんと食事を摂っておくこと/レース中に何を・どれだけ摂るべきかを把握しておくことは重要である。

(10)過度の長距離を走らない
 ハーフマラソンに備えたトレーニングを考える時、最初に頭に浮かぶのは長距離走である。それのどこが間違っているのか?。ハーフマラソンは充分に長距離だ!。ごもっとも、である。勿論、ハーフマラソンの為のトレーニングにおいて長距離走は重要であるが、問題は「過度の」長距離走である。ビギナーでは、レース2週間前に16~19km走られるのを目標とし、同じくベテランでは21~26km走られれば十分である。

(11)コースを研究する
 戦場を知らずに戦争する将軍がいないのと同様、初めて走るコースを研究せずにレースを走るランナーもいない。出場するレースのコースを出来る限り詳細に調べ、それをトレーニングでシミュレートするのが良い。コースはアップダウンがキツい/ほぼフラットなのか、コーナーは多いのか、途中に道幅が狭くなる箇所はあるのか、向かい風はきつそうなのか、等々。これらは全て事前に調べておきたい事項である。事前にコースを研究しておけば、レース当日に慌てることも無い。

(12)ココロも鍛える
 レースで最も大切なものは、目標を達成する為の準備を尽くしたという「自信」である。トレーニングでレースペースで走った/きつい坂道に挑戦したとか等と同様に、ココロも鍛えることは重要である。トレーニングにおいても、レース当日を想像しよう。つまり、レースペースで走る際の体調を確認し、栄養補給を試し、(出来れば)脚が痙攣した時にどうするかも考えておこう。目標を達成する為に出来ること全てをやっておくことが自信を生む。

(13)序盤は抑え目に走る
 ハーフマラソンを走る全てのランナーが考えるのは、ペースを徐々に上げてゴールすることである。ペースを徐々に上げてゴールするのは気持ちが良いだけでなく、序盤を抑え目に走るのは筋グリコーゲンの急激な枯渇を防止する。理想は、スタートから3kmは平均ペースより6~9秒/km遅く走り、5kmからは平均ペースで、そして最後の5kmは平均ペースより速く走るというレースプランである。これはビギナーのみに対するアドバイスではない。ハーフマラソンで世界記録を樹立した殆ど全てのランナーはこのように走っていたのだ。

(13+1)次のレースにも申し込む!
 ハーフマラソンを完走された方、おめでとう!。ビギナーであれベテランであれ、完走は素晴らしいことである。しかし、そこで満足してはならない。完走の余韻に浸り、トレーニングの成果を評価したら、次のハーフマラソンに備えて準備を始めよう。誰もがまだまだ成長する余地を有する。そして、新たな自己新記録を追求するにせよ、トレーニングで弱点を克服するのに努めるにせよ、それらは全て新しい挑戦である。ハーフマラソンは、一度完走すればそれでおしまい、というものではない。トレーニング計画を立案し、実際にトレーニングし、そしてレースを走るということ全てがいわば「生き方」である。ハーフマラソンのいいところは、フルマラソンと異なり、一年の内に複数回挑戦出来ることである。まぁ、そこまで重く考える必要は無い。次のハーフマラソンは、休暇の一部として取り組むのもいいだろう。


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今日は朝稽古休み/ラントレーニング温故知新

2014年03月03日 | Competitor Running
【今朝の体組成】
体脂肪量  :5.4kg(前日比
±0.0kg
除脂肪体重:56.5kg(前日比
±0.0kg
------------------------------
体重    :61.9kg(前日比
±0.0kg
※体脂肪率:8.7%

月曜日は朝稽古お休みです。
金曜日~日曜日と三連走したおかげで、右アキレス腱が軽く筋肉痛になりました。
当然?ですが、自分で鍼治療しました。
明日は走られそうです。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ラントレーニングに関する流行り廃りを論じた"Competitor Running"誌の記事です。
新しいのが良いとは一概には言えませんが、試してみて取捨選択するのは大切です。

トレーニング:古い方法と新しい方法
by Jason R. Karp, Ph.D., Feb. 20, 2014


 何事においても、流行はある。例えば、
・ウォークマンにカセットテープを入れて音楽を聞く
・モデムを介してインターネットに接続する
・レッグウォーマーを履いてトレッドミルで走る
なんてのは古臭い方法である。同様に、トレーニング界にも流行はある。古い方法にしがみついていると、目標は達成出来ないかもしれない。以下に「新しい方法」を紹介するので、それらによってトレーニングが改善し、より速く走られるようになったら幸いである。

【長距離走】
古い方法:LSDラン
新しい方法:LSDラン/有酸素運動閾値ランの組み合わせ

 経験の長いランナーであれば、長距離走トレをLSDラン+有酸素運動閾値ラン(≒乳酸閾値近辺でのラン)とすることで、より質の高いトレーニングとなり、マンネリ状態を脱せられる。LSDランと有酸素運動閾値ランを組み合わせることで、
・マラソン感覚が研ぎ澄まされる
・筋グリコーゲンの消費スピードが上がる
・脚が疲労した状態でより速く走られるようになる
といった効果が期待出来る。具体的な方法は、例えばトータルで19~26km走るのであれば、スタートからの16~19kmはLSDランとし、そこからゴール迄の3~7kmを有酸素運動閾値ランとする、というものである。なお、有酸素運動閾値ランでのスピード=有酸素運動が維持出来る上限のスピード(≒10,000m走でのペースから6~9秒/km遅い程度)とする。

【インターバル走】
古い方法:5,000m走のペースで走る
新しい方法:トレーニングの目的を認識する
 
 トレーニングの目的をきちんと理解することで、トレーニングはより目標に合致したものとなる。有酸素運動閾値ランの能力(≒スピード)を向上させたいのであれば、有酸素運動閾値近辺のスピード(≒10,000m走のペースから6~9秒/km減、もしくは5,000m走のペースから13~16秒減程度)でトレーニングする。最大酸素摂取量(VO2max)を増大させ、筋肉へ酸素を供給する能力を向上させたいのであれば、2.4~3.2km走のペースで3~5分間(≒800~1,200m程度)を走るインターバル走をする。無酸素運動域での持久力を向上させたいのであれば、1.6km走のペースで45~90秒間(≒300~500m程度)を走るインターバル走をする。
 トレーニングの成果を100%得るには、設定されたペースより速く走ってはならない。長距離ランナーとしては、トレーニングでより速く走るのが目的ではない。あくまでも将来より速く走る為に、身体の生理学的特質を向上させるのがトレーニングの目的である。身体能力が向上してきたら、インターバル走の反復回数を増やす/一回当たりの走行距離を延ばす/リカバリーに掛ける時間を短くするという形で負荷を増やす。間違っても、ペースを上げることで負荷を増やそうとしてはならない。ペースを上げていいのは、レースの成績が向上した後だけである。

【筋力トレーニング】
古い方法:マシンetc.を使う
新しい方法:プライオメトリクス(爆発的パワーを養成するトレーニング)
 
 従来の筋力トレーニングでは筋力・パワーの向上/故障発生リスクの低減といった補助的効果を目的としたものであるが、それによっては「より速く走る」という目的に関する重要な要因は改善しない。具体的な要因は、
・心拍出量:1分間に心臓から拍出される血液量
・血液中のヘモグロビン量:血液が運搬する酸素の量に関連する
・筋肉中の毛細血管密度:筋肉に届けられる酸素の量に関連する
・筋肉中のミトコンドリア量:筋肉がエネルギーを産生する為に利用する酸素の量に関連する
・筋肉が脂肪をエネルギー源として利用する能力
等である。

 一方で、プライオメトリクス(跳躍etc.で”爆発的な”パワーを発揮させる事を主内容としたトレーニング)では、筋肉の伸展性を開発することで筋力を向上させ、その結果として跳躍力(≒地面を蹴る力)の発揮スピードを向上させるのが主眼である。筋肉が蓄えている「伸展エネルギー」の放出を最大化させるには、各種目で足が接地している時間を出来る限り短くしたい。以下で紹介する各種目を、まずは硬くない地面(芝生の上/陸上トラック/ジムのマット等)で試してもらいたい。

※プライオメトリクスの種目例
・片脚ジャンプ(Single leg hops):これには、その場で跳躍/前後に跳躍/左右に跳躍などのバリエーションが考えられる。
・両脚ジャンプ(Double leg bound):スクワットの姿勢から、前方へ出来るだけ遠く跳ぶ。
・スキップ(Alternate leg bound)
・ジャンピングスクワット(Squat jumps):スクワットの姿勢で両手を臀部に当て、そのまま真上に出来る限り高く跳ぶ。
・跳び下り(Depth jumps):30cm程度の高さの台に乗り、そこから地面に跳び下りる。着地時にはスクワット姿勢になる。そのスクワット姿勢から、出来るだけ高く跳ぶ。
・ボックスジャンプ(Box jumps):両脚で、高さ30cm程度の台に跳び乗る。台に跳び乗ったら直ちに上方へ跳び、地面に着地する。慣れてきたら、片脚でやるのも良い。

【トレーニングの期分け】
古い方法:年間を通じて同じ種類のトレーニングをする
新しい方法:年間を幾つかの期間に分ける(期分け)
 
 人間とは習慣を尊ぶ生き物である。人間は何度も何度も同じことを繰り返す。しかし、同じことを繰り返していたら、得られる結果も不変である。「期分け」という考え方は1910年代のヨーロッパで生まれた。これは、ある一定期間を更に細かい期間に分け、各期間に適切なトレーニング内容を割り当てることで身体能力を最大限向上させようというものである。言い換えると、一期間に於いて1~2種の特定の目標/目的を設定し、期間毎にその目標/目的を変えることでトレーニング期間/計画全体で身体能力を最大化させようというものである。実際は、まずは最も重要視しているレースを設定し、そこから逆算してトレーニング期間を細分化し、各々の期に適切なトレーニングを実践することになる。各期に於けるトレーニングの目的は異なってくるので、ある期は多く走るし、別の期は走る量が少なくなる。また、ある期はトレーニング強度が高くなったり、別の期はトレーニング強度が低くなることもある。

【ストレッチ】
古い方法:トレーニング前後にストレッチする
新しい方法:トレーニングと関係無い時間にストレッチする
 
 ラントレーニング前後に大腿後部(ハムストリング)/大腿四頭筋をストレッチするのは気持ち良いが、トレーニング前後にストレッチすることで故障発生率の低減/運動能力の向上が図られるという事を支持する科学的事実は無い。ストレッチが最も役立つのは、それを柔軟トレーニングの一環として行い、関節の機能的可動域を向上させる場合である。そのようなストレッチにより、例えば座りっぱなしに伴う筋肉の硬化が解消されると共に、故障の発生率低減が期待出来る。ストレッチで関節の機能的可動域を向上させるならば、ラントレーニングとは別に実行することでその効果が最大限得られると思われる。

【トレーニングの意義】
古い方法:仕事を終えてからトレーニングする
新しい方法:仕事の前にトレーニングする
 
 目まぐるしく変化する現代において、自分の為だけの時間を持つのは困難だろう。仕事の後にトレーニングするというのは、一日にスケジュールをどうするかということでしか無い。逆に、必ずトレーニングを実行したいのであれば、ランニングを最優先事項とするのが最も有効である。つまり、ラントレーニングをその運動的利点からのみ考えるのでなく、その心理的利点についても考慮するのが良い。ランニング中に仕事etc.のアイデアが湧くこともあるし、気分がスッキリすることもある。なので、仕事の後でなく、仕事の前にラントレーニングをしよう。

 トレーニングの効果を最大限得る為には、何かを変えるのも必要である。古い方法を捨て、新しい方法を採用することで、より良い結果が得られるかもしれないし、「古臭い」と見られることもなくなるだろう。
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ランナーにとっての「精神的な強さ」とは?

2014年02月13日 | Competitor Running
…という、"Competitor Running"誌の記事です。

ランナーに限らず役立つかも、と思う内容です。
ま、これを全て兼ね備え他人って凄過ぎると思いますが。

あと、こういった精神的な要素も要求される点が、ランニングが人気を博す理由かもしれません。

精神的に強いランナーに見られる、7つの特徴
by JoAnn Dahlkoetter, PhD, Mar. 26, 2013


 トレーニング/レースが思い通りに行かなかった時、ランナーを精神的に強くするものは何かご存知だろうか?。厳しい状況に追い込まれた時に役立つ「回復力」を強化する最良の方法は知っているだろうか?。これらの問いに答えるには、まずはランナーにとって精神的な強さとは何か?を理解する必要がある。

ランナーにとって精神的な強さとは何か?
 精神的な強さとは、外界の状況/気を散らすものの存在/自らの感情等に関係無く、確実にベストパフォーマンスを発揮する能力である。

 スポーツ心理学者として、オリンピックに出場するエリートランナーからホビーランナー迄あらゆるレベルのアスリートを長年に渡り観察した結果から、筆者は精神的な強さを決定する幾つかの特徴を見出した。

 生まれながらに精神的に強い人なんていない。精神的な強さは後天的に獲得する特徴である。精神的な強さを獲得する為に、日常生活を危険に晒すような経験をする必要も無い。毎日のトレーニングを通じて、精神的な強さを学習/獲得するのは可能である。ランニングにおいてゴールを目指して前進する過程で、精神的な強さは何度も試される。経験を積む毎に、精神的にはますます強くなる。

精神的に強いランナーに見られる特徴は何だろうか?
 以下に、筆者が成功したランナーに共通して見られる特徴をまとめた。精神的な強さを形成する特徴は複数存在する。トレーニングなどでどのような状況に置かれようとも、精神的な強さを獲得し、それを自らの”武器”とすることは可能である。

(1)回復力:逆境/苦痛/残念な成績を跳ね返す能力である。精神的に強いランナーは誤りに気づいてそれを認め、機会を喪失したことを理解し、そこから何かを学習し、そして直ぐに直近の目標へ注意を向ける。

(2)集中力:好ましくない/予想していなかった状況を直視し、対処する能力である。精神的に強いランナーは自らの置かれた環境から逃げようとせず直視し、それを正しい方向へ修正しようとする。例えば、あなたはマラソンで40km過ぎを走っているとしよう。もう死ぬかと思う程疲れているだろうし、身体のあちこちが痛いだろうし、もう止めたいと思っているだろう。ここで大切なのが集中力である。「私は前進せねばならない。一歩ずつ前へ進もう」と自らに言い聞かせよう。このように精神的に強ければ、やがてはゴールラインに到達出来る。

(3)胆力:事態が予想していない方向へ展開した場合に、落ち着いて対処し、それを継続する能力である。精神的に強いランナーはこの胆力と柔軟な思考を併せ持ち、どのような状況が発生しようとも的確に対応可能である。

(4)準備力:将来の状況を予測し、それに対する万全な行動計画を作成する能力。精神的に強いランナーは、危機に際してもパニックに陥らない。例えば、レースの際、他者が先行したとしよう。準備力に優れたランナーはまずは心を落ち着け、自らのペースを修正し、事前に作成した行動計画に基づき対応する。

(5)洞察力:ゴールに近づいているという明確な兆候が無くとも、自らの目標へ向かって前進し続ける能力。精神的に強いランナーは目標達成迄の明確な”絵”を描き、それを頻繁に想像(視覚化)し、そのイメージを最優先に行動する。また、可能性がある全てのシナリオを想像し、その中で最も成功しそうなものに基づいて計画を作成する。

(6)寛容さ:物事を学習し、全ての可能性に対し心を開く能力である。精神的に強いランナーは身体の内外からの情報に耳を傾け、そこから何らかを学習しようと努め、何が起こっているかを知る。

(7)信任力: 自分自身を信じる能力である。精神的に強いランナーは、レースの時に身体は自然に反応するはずだとしてそれを信用することを学習している。また、これ迄 やってきたトレーニング全てを信用する。そして、コーチを信用する。誰も励ましてくれなくとも、自分自身を信用する。レースであなたをサポートする耐性が 存在していなくても、自らの知識を基にレースを遂行する。たとえゴールラインが遥か彼方にあるように思えても、強い気持ちを持ち続け、前進する。自分自身 に「一歩ずつ前へ進む毎に、ゴールに近づきつつある」と声をかけて励ます。
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オーバートレーニングの原因/兆候/解決方法

2014年02月07日 | Competitor Running
…という、"Competitor Running"誌の記事です。

真面目な人ほどオーバートレーニングに陥り易いので、注意が必要です。
ご参考まで。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
オーバートレーニング:その原因/判定/解決について
by Jeff Gaudette, Jan. 22, 2014


ランナーの半分以上が、競技人生において少なくとも一度は経験している


 オーバートレーニングという単語に恐れをなすランナーは多いだろう。ある研究によると、真剣にランニングに取り組んでいる人の約61%は、その競技人生において一度はオーバートレーニングを経験している。尤も、目的達成の為に自らを限界まで追い込むランナーにとっては何の役にも立たない研究結果だろうが。

 オーバートレーニングが恐ろしいのは、自分がその状態に陥っていることを判定/測定する方法が殆ど無い、ということである。疲労骨折みたいにきちんと判断出来ないし、ハンガーノックみたいに明確に苦痛が知覚出来るものでもない。オーバートレーニングが原因で、痛みを始めとする何らかの兆候が表出することはない。研究室レベルでは、カテコールアミンの分泌量や筋神経系の活動パターンを測定して判定することも可能であるが、一般のランナーにとって、トレーニングに伴う単なる疲労とオーバートレーニングを区別するのは困難である。オーバートレーニングに伴う兆候は明確ではないが、
どのような行動がオーバートレーニングを招くかを同定し、オーバートレーニングに陥る一歩手前で現れる微かな兆候を認識するのは可能である。そこで本稿では、それらを紹介すると共に、オーバートレーニングに陥った場合にその状態から脱出する方法を考察する。

オーバートレーニングの原因
 オーバートレーニングの根本的な原因は、反復/継続して運動を実践している場合、身体が充分に回復しないまま次の運動を行うことである。熱心なアスリート程、身体が充分に回復しないまま自らを限界まで追い込む傾向があるが、研究者らはオーバートレーニングを発生させ易い特徴を幾つか特定している。それらは以下の通りである。

(1)一回のトレーニング期間での負荷が大き過ぎる
 筆者の経験からすると、オーバートレーニングの一般的な原因は、自己記録を更新しようとして一回のトレーニング期間で過大な負荷をかけることである。ランナーにとっては、ステップ・バイ・ステップで基礎能力を向上させることが大切である。それを怠ることがオーバートレーニングにつながり易い。

 Jack Danielsが著書「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」(ベースボールマガジン社刊)で公開したVDOT表によって、適切なトレーニング負荷とその進展方法が明確になった。また、ランナーが自らのランニング能力を評価することも可能となった。彼は上述の著書において、ランナーは現時点でのレースでの成績を基にトレーニングするべきであり、それを超えて新しい段階に至るのは、レースで自己新記録を出してから、と主張している。というのも、レースで自己新記録を出すということは、身体能力が新しい段階に到達したことの証明だからである。筆者の経験からも、そうすることは最も安全/確実に身体能力を向上させる方法であると共に、オーバートレーニングを避ける事にもつながると考える。

(2)トレーニング間で適切な休養を取らない
 オーバートレーニングのもう一つの原因は、トレーニング(期間)間で充分な休養を取らない事である。アスリートの多くは、トレーニング(期間)間で休養を殆ど取らないか、取っても短過ぎて身体を回復させるのには不充分である。大抵の場合、トレーニング/レースで肉体を限界迄追い込み、その後休む間もなく次の目標へ向けて強度の高いトレーニングを再開する、といった感じである。その結果、身体は疲労から完全に回復することは無い。常に疲労を覚えた状態となり、オーバートレーニングに陥る危険性が劇的に増大する。

 身体能力を長期的に向上させるには、トレーニング/レースの後には適切な休養期間を設定し、身体を回復させるのが必要である。筆者としては、適切な休養期間とは
・5,000m程度のレース後    :1週間程度
・10,000m~ハーフマラソンの後:1~2週間
・フルマラソンの後        :2週間
であると考えている。長過ぎると感じるランナーもいるだろうが、大事なのは身体能力を長期的に向上させることである。

(3)強度の高いスピード練習の頻度が多い/期間が長い

 スピード練習/最大酸素摂取量でのトレーニングの頻度が多過ぎる/期間が長過ぎると、オーバートレーニングに陥る危険性が増大することは既に立証されている。運動生理学者達は、スピード練習を8週間以上に渡って実践したランナーでオーバートレーニングの兆候が多く見られたが、その原因は血液のpH上昇/血中乳酸濃度の低迷ではないかという仮説を提唱している。
 
 強度の高いスピード練習を多く行うことに伴うオーバートレーニングを回避する為には、そのようなトレーニングを行う前に既に強固な基礎的有酸素運動能力を構築/維持するのが大切となる。

オーバートレーニングの兆候
 既に説明した通り、オーバートレーニングに陥っているか否かを正確に判定するには、様々な機器が必要である。しかし、身体が完全に回復しているかどうかを判断するのに役立つ判断基準が幾つかあるので、紹介する。

(1)心拍数
 オーバートレーニングに陥った状態では、安静時心拍数が通常より高くなる。起床直後には安静時心拍数を測定→記録するのを習慣にしよう。安静時心拍数が通常より高い状態が継続する場合、オーバートレーニングに陥った可能性が疑われる。

注意:心拍数に影響を及ぼす因子は、トレーニング以外にも無数にある。例えば、ストレス/体の水分状態/カフェイン/睡眠時間等である。なので、日間変動は余り気にする必要は無い。あくまでも中長期的な傾向に着目する。

(2)イライラ感

 オーバートレーニングは内分泌物質(特にカテコールアミン)の生成量減少を誘発する。カテコールアミンの生成量が減少すると、交感神経系に影響が及ぶ。その結果、被抑圧感/イライラ感が増大する。そのような感情が増大していると認知したら、それはオーバートレーニングの兆候である可能性が考えられる。

(3)病気になり易い
 オーバートレーニングによって免疫力が低下し、その結果風邪/インフルエンザを始めとする感染症に罹患し易くなる。普段より病気になり易いかな?と感じたら、それはオーバートレーニングの兆候であるかも知れない。

(4)睡眠パターンが安定しない
 オーバートレーニングに陥ると概日リズムが乱れ、睡眠障害が発生する場合がある。具体的には、起床時刻が格段に早くなる/熟睡出来ないといった状態になる。

注意:概日リズムは、日照量の季節的変化の影響も受ける。季節の変わり目に睡眠障害が発生した場合、それは日の出/日の入り時刻に対する自然な反応かもしれない。

 勿論、これらの兆候は単独ではオーバートレーニングの明確な判断基準とはならないが、複数の兆候を認知したならば、オーバートレーニングに陥った事を疑い、適宜休養するのが望ましい。

オーバートレーニングの自己解決方法
 これまでオーバートレーニングの原因/兆候について述べてきたが、次にその解決方法を端的に紹介する。オーバートレーニングに陥った場合、休養/回復に専念する必要がある。

(1)どれ位休むべきなのか?
 残念ながら、オーバートレーニング状態から脱出する為に必要な休養期間については、研究者/コーチの間でも見解が分かれる。基本的には、休養期間はオーバートレーニングに伴う症状の深刻度や、それに対する身体の反応能力に左右される。筆者としては、オーバートレーニングに陥った場合、ラントレーニング再開まで最低3週間は休養すべきと考える。一般的には、身体を完全に回復させるには最低6~8週間の休養が必要と考えられている。身体の状態を的確に判断することが重要である。そして、時には「休む我慢」に耐えるのも必要である。

(2)回復過程を加速させるには
 健康的な食生活を維持することが大切である。つまり、栄養に富む食材を必要十分量摂取することである。その他にも、ストレッチする/マッサージをしてもらう/しっかり睡眠する等も役立つ。

 一般的なオーバートレーニングの原因について学習し、その徴候を早期に認知することで、オーバートレーニングに陥ることが回避可能となるし、仮にオーバートレーニングに陥ったとしても、早期に回復することが可能となる。

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いよいよ冬将軍様の大将がお出ましか?

2014年02月07日 | Competitor Running
【今朝の体組成】
体脂肪量  :4.6kg(前日比
-0.5kg
除脂肪体重:56.3kg(前日比
+0.3kg
------------------------------
体重    :60.9kg(前日比
-0.2kg

昨日は朝稽古していないし、食事内容も何らいじっていないので、体脂肪量の急減はタニタの体脂肪計が何らかの理由で変な数字を出したためと思われます。
これを喜んでいたらアホです。

昨夜から気温が一気に下がってきたので、今朝はついつい朝稽古を休んでしまいました。
春にレースを予定していないのも影響しています。
逆に云えば、レースの予定を入れることは動機付けになりますね。

明日はいよいよ冬将軍の大将がお出ましになるらしく、大阪市の予報は「みぞれ/雪」だそうです。降水確率も90%なので、早々と朝稽古中止を決心しました。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
久々の"Competitor Running"誌の記事です。
栄養/食事については、余り神経質にならないのが肝心かもしれませんね。

スポーツ栄養に関する10大誤解
by Matt Fitzgerald


 世の中には、スポーツ栄養に関して悪い情報が氾濫している。身体能力(ランナーにとっては持久力能)を最大化する為にどういう食事をすればいいかについて、迷信を排し真実を知る唯一の方法は、科学的に考えること、もしくはそのような考え方をする人と友達になることである。以下で、スポーツ栄養に関しての10大誤解を紹介する。

誤解(1):運動中に単糖類を摂取するのは良くない

 糖類、特にブドウ糖(及び、ブドウ糖を筋肉中に蓄積する際の形態であるグリコーゲン)は、強度の高い持久力競技を行う際に最も重要となるエネルギー源である。運動中にブドウ糖/果糖等の単糖類を摂取することで、1時間以上に渡るトレーニング/レースの成績が向上することは数多くの研究結果を通じて立証されている。にも関わらず多くのランナーが、「単糖類は身体に良くない」という迷信を信じ、単糖類を含むスポーツドリンク/エナジージェルを避けている。「単糖類が身体に良くない」というのは、運動をしていない人に当て嵌まる。走っている最中では、単糖類は身体に良いのだ。

誤解(2):主要栄養素(炭水化物/脂質/タンパク質)の摂取量比には適正値が存在する
 あなたの食事における主要栄養素の摂取量比は、多くのスポーツ栄養専門家が推奨する”60/20/20”に則ったものだろうか?。もしくは、一般に推奨されている”40/30/30”だろうか?。それとも、持久力系競技の成績にとって最適な主要栄養素の摂取量比は他に存在するのだろうか?。実際には、そのようなものは存在しない。

 各人にとって最適な主要栄養素の摂取量比は、トレーニング量に応じて千差万別である。つまり、あるランナーにとっては60/20/20が適正であっても、他のランナーにとってはその比が適正とはならない。最も異なるのは、炭水化物の必要摂取量である。これはトレーニング量の影響を大きく受ける。炭水化物の必要摂取量については、摂取量比でなく、摂取量の絶対値で考えるべきである。平均的なランナーが必要とする炭水化物は5.6g/日であるが、20時間/週以上トレーニングするエリートランナーではその2倍近くが必要となる。

誤解(3):レースの前にはカーボローディングが必要である
 カーボローディング(レースの数日前から炭水化物の摂取量を増やす食事方法)は、大半のランナーにとって既に馴染み深い「儀式」だろう。しかし、その必要性は少ない。レース時間が90分間以内である場合、カーボローディングと成績の間には何ら関係が無いとする研究結果が報告されている。また、レース中に適量の炭水化物が摂取出来ていれば、レース時間が90分間以上となる場合でもカーボローディングの影響は軽微であるとされている。アイアンマンを6度制したDave Scottは決してカーボローディングをしなかった。勿論、カーボローディングが身体能力に悪影響を及ぼす事は無いので、それで自信が付くならやっても別に構わないが。

誤解(4):脱水症状を予防するには、水分をきちんと取らなければならない
 昔から、ちょっとでも脱水状態に陥ったら身体能力は低下し、労作性熱中症が発生する危険性が増大すると言われてきた。しかし、最近の研究では、そのようなことはなく、逆に脱水症状を予防する目的で運動中に水分を積極的に摂取することは逆効果であることが示されている。

 運動中に水分を摂取することは、ランナーにとっては特に逆効果となる。というのも、高強度のランニングをしている間では「摂取した水分が吸収されるスピード<発汗により水分が損失されるスピード」だからである。喉の渇きを覚えた時点で水分を摂取することで、発汗によって失われた水分の65~70%は補充され、その結果身体能力は最大限発揮されると同時に、熱中症になる危険性は増大しないことが複数の研究結果を通じ明らかとされている。逆に必要以上に水分を摂取すると、消化器系が不調に陥る危険性がある。

誤解(5):脂肪分をより多く摂取することで、持久力が向上する
 脂肪分の多い食事を摂取することで、筋肉は運動中のエネルギー源として脂肪に依存する割合が増大し、その結果筋肉中に蓄積されているグリコーゲン(その量には上限がある)が温存されることで持久力が向上するという考えが流行している。この考えの前半は正しいが、それが身体能力に何らかの影響を及ぼしているという証拠は報告されていない。

誤解(6):筋痙攣は脱水が原因である
 運動中に発生する筋痙攣の原因は脱水/電解質不足であるという考えは、約100年前に実施されたある研究を基にしているが、その研究自体誤りである。最近の研究では、脱水状態の程度と筋痙攣の発生率の間には相関関係が存在しないことが明確に立証されている。

 現在、筋痙攣は、不慣れな負荷(例:レース等)を筋肉に加えた結果生ずる筋神経系の疲労の兆候であり、その発生には何らかの先天的(遺伝的)要因が関与していると考えられている。水分/電解質の摂取によって、先天的に筋痙攣し易いアスリートにおけるレース時の筋痙攣発生リスクが低下するとは立証されていない。

誤解(7):スポーツドリンクは皆んな同じ
 スポーツドリンクについては、その多くで基本的な配合、つまり「効く」と立証されている成分とその配合量の組み合わせが共通である。しかしその中でも差異化が図られており、その結果「効く」ものと「効かない」ものが区別される。例えば、タンパク質(プロテイン)を少量添加しているものは、持久力の向上/トレーニングに伴う筋損傷の低減に役立つことが立証されている。但し、ランニング中に摂取したタンパク質に対する耐性が無いアスリートも僅かながらおり、彼らはタンパク質を含むスポーツドリンクの摂取を避ける必要がある。

誤解(8):大半のランナーは充分な量の炭水化物を摂取出来ている
 21世紀初頭に低炭水化物食(”low-carb diet”)が流行した結果、多くの人が、平均的なアメリカ人(特にランナー)はいわば高炭水化物食を摂取していると考えるようになってしまった。実際は、平均的なランナーが摂取するエネルギーに占める炭水化物の比率はたった50%にしか過ぎない。これは特にランニングをしていない平均的なアメリカ人と同程度である。平均的なアメリカ人にとってはこれでも炭水化物の比率は高過ぎるかもしれないが、ランナーにとっては不充分である。

 誤解(2)で見た通り、全てのランナーに当て嵌まる「適切な炭水化物摂取量比」なるものは存在しない。炭水化物摂取量については、その量比でなく、絶対量で考えるべきである。具体的には、各人の体重/活動レベルを基に決定するのが基本である。目安は一日当り4.4g/kg-体重である。また、エリートランナーでトレーニング量が多い時期では一日当り11g/kg-体重となる。

誤解(9):ランナーだからといって、特に食事内容に気をつける必要は無い
 多くのランナーは、いわゆる「カウチポテト族」より若干なりともジャンクフードを摂ってもOKだと考えがちである。しかしスポーツ栄養専門家達はこの考えが誤っていると主張している。彼らによると、飽和脂肪酸/糖類等は、ランナーであるか否かに関わらず身体に何らかの悪影響を及ぼしうる。実際、ランナーはそのことを正しく理解している。有酸素運動の量が多いと、一般的に「身体に良くない」とされている栄養成分を消費することに伴う悪影響が修正される。ランニングの恩恵の一つは、若干量/短期間であればジャンクフードを食べても良いということである。

 とは言え、現代における平均的なアメリカ人の食生活は”恐ろしい”ものであり、ランニングしているからといってそれより更に良くない食事を摂取するのははっきり言って良くない。「カウチポテト族」であっても、最低限度の健康状態を維持するにはほぼ完璧な「素晴らしい」食事を摂る必要がある。そして、頑強な身体を作り上げるには、運動は不可欠である。ランナーが摂っていいのは、ランナーでない人にとっては必須である「完璧な」食事よりほんの僅かジャンクな食事くらいである。

誤解(10):身体能力を最大限発揮するには、サプリメントが必要となる
 持久力系競技のアスリート向けに、持久力を向上させることを謳ったサプリメントが無数に販売されている。それらの中には、何らかの科学的事実の裏付けがあるものも見られるが、現時点ではサプリメントによって持久力が有意に向上する事を立証する研究結果は報告されていない。また、エリートランナーの大半はサプリメントを摂取していないのが実態である。






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慎重になって今日も休み/人類は本当に"Born to Run"なのか?

2014年02月01日 | Competitor Running
今朝は朝稽古するかどうか直前まで悩みましたが、慎重になったというか念には念を入れて休みました。
明日からボチボチと…、と思いましたが、明日は天気が余り良くなさそうで…。

こっちの方は何とかなったみたいです。
【今朝の体組成】
体脂肪量  =5.0kg(前日比
±0.0kg
除脂肪体重=56.2kg(前日比
-0.1kg
------------------------------
体重    =61.2kg(前日比
-0.1kg

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
久々の"Competitor Running"誌の記事です。
いわゆる"Born to Run"や裸足ランニングを否定する文章です。

吾輩も裸足ランニングで足関節を故障した経験が有るので、この記事にはある程度同意します。
裸足ランニングをされるなら、
(1)クッション性の高い路面≒芝生や土の上でする。
(2)あくまでも筋力トレーニングの一つとして考える≒程々(30分間/回×2~3回/週程度)で切り上げる
のがコツだと考えます。

人類は本当に「走るべく生まれた(”Born to Run”)」のか?
By Thomas C. Michaud, D.C., Jan. 23, 2014


 ランニングに関する俗説が虚偽であることを証明する証拠について述べる。

 複数の著名な古人類学者によると、我々の祖先(特にHomo erectus)は走るのに適しており、餌となる動物を数時間に渡って追いかけ、それらが疲弊したところで捕殺することが可能であった。

 裸足ランニングブームの火付け役となった論文(1)で筆者のBramble and Liebermanは、約200万年前に比較的短期間でHomo erectusの脳の大きさが約2倍となった理由について、長距離走によって獲得した動物肉を食糧とした為と主張した。彼らは、脳の消費エネルギーは筋肉の約16倍であり、一方で動物肉の有するエネルギーは同じ容量の果物の約4倍なので、急速に拡大したHomo erectusの脳に必要なエネルギーを供給するには、動物を走って追いかけて捕殺してその肉を食べる必要があったという仮説を提案した。また、Homo erectusは単純な武器を用いる能力すら有していなかったので、動物を捕殺するには数時間に渡って追いかけることが最も合理的かつ唯一の方法というのも論理的に正しいと思われた。

脳が拡大した真の理由
 Homo erectusが生活していた遺跡から動物の骨が発掘される例が多くあり、そこから脳の拡大と動物肉の消費には何らかの関係があると考えられるようになる一方で、最近Proceedings of the National Academy of Science誌で発表された論文によると、脳が拡大した理由は長距離走では無く、むしろ調理能力の発達が真の理由だと指摘している(2)。その論文の著者によると、火の発見はこれまで考えられていたよりかずっと以前であり、食材を加熱することで繊維が軟化して咀嚼/消化スピードが向上するので、食材を加熱する技術/能力の向上が脳の拡大に資したと主張した。

 また、食材を加熱調理することにより、代謝され得る割合が格段に増える。つまり、加熱調理した食材はほぼ100%消化→吸収→代謝される一方、生の食材では30~40%に過ぎない。なので、上記の論文の著者らは、人類の祖先は食材を加熱調理することで、脳の拡大に伴い必要となったエネルギーを容易に摂取出来るようになったと主張している。

 他の研究者によると、人類の祖先は火を利用することで捕食動物が夜間に接近することを防ぎ、結果として脳が拡大することが可能となったと提唱している。もう少し詳しく説明すると、睡眠の質が改善したことでREM睡眠が可能となり、脳の発達が加速した、ということである。

「人類は走るべく生まれた」という俗説に対する反例
 必ずしも全ての古人類学者が、いわゆる「人類は走るべく生まれた(”Born to Run”)」説を支持しているわけではない。サハラ砂漠以南に居住する狩猟/採集民族であるHadza族(その生活習慣/環境はヒト科の祖先に酷似しているとされる)を研究した結果として、Pickering and Bunnは、Hadza族は滅多に走らないという重要な観察結果を報告した(3)。彼らによると、Hadza族が走るのは「雨/蜂/うろつき回る象を避けようとする時だけ」とのことである。
 
 Pickering and Bunnは、餌となる動物を数時間に渡って追いかけることが狩猟の有効な方法であると主張した過去の研究結果には欠点があると強調した。具体的には、それらの研究で言及された「長距離走による狩猟」とは、TVのドキュメンタリー番組で撮影された狩猟を基にしたものである、というのだ。多くの場合、そのような狩猟は「自動車を基地とし、狩猟者は狩りの間に水分を自由に補給している」とする。そして、そのようにTVの取材班が手助けしているにも関わらず、長距離走による狩猟が成功したのは8例中3例しか無かったとしている。

 皮肉にも、Bunnとその同僚が目撃した狩猟の例(余り人の手が加わっていない)では、ある部族の狩猟者は子鹿の足跡を同定した後、その足跡を3時間に渡って歩いて追跡していた。そして狩猟者は子鹿を常に日陰の多い場所から追い出すように仕向け、最終的に子鹿が疲れ果てたところで捕殺していた。Pickering and Bunnは、走ることはエネルギーを多量に消費すると共に、脱水/熱中症に陥る危険性が格段に増大するので、人類の祖先がそのような危険/非効率な狩猟方法を選択したとは考え難いと主張した。

 長距離走が人類の進化に重要な役割を果たしたという理論を検証すべく、ハーバード大の研究グループは歩行/走行それぞれで必要とされる筋力を調べた。その結果、大腿四頭筋の活動量は、走行時は歩行時の5.2倍に達した(4)。ならば、食材≒エネルギーの収集が容易でない人類の祖先が狩猟方法として”走ること”を選択したという仮説には重大な疑問が生ずる。そして、ハーバード大の研究グループは「走ることが人類における直立/二足歩行の進化に於ける主要な選択要因だったとは考え難い」と結論付けた。

裸足ランニングは故障予防に有用なのか?

 「人類は走るべく生まれた」説を主張する人達によると、現代的なランニングシューズを履くことで足は弱くなると共に、ランニングに伴う故障の50%以上はクッション性の高いシューズが原因であるとされる。そして、裸足ランニング用シューズを用いることで足の爪先/アーチ(内側弓)が強化され、故障の予防に役立つと主張する。

 しかし逆に、最近の研究では、平均的なアスリートが裸足ランニング用シューズを使用すると故障の危険性が高まると指摘されている。2012年にブリガムヤング大学の研究グループがMedicine and Science in Sports and Exercise誌に発表した研究結果によると、裸足ランニング用シューズとして有名なビブラム・ファイブフィンガーズを使用した19名のランナーの内10名が故障した一方、一般的なランニングシューズを使用した17名のランナーで故障したのは1名だった(5)。また、2013年12月にBritish Journal of Sports Medicine誌で発表された研究結果では、103名のランナーに一般的なランニングシューズ(ナイキ・ペガサス 28)/やや裸足ランニング的なシューズ(ナイキ・フリー 3.0 V2)/裸足ランニングシューズ(ビブラム・ファイブフィンガーズ ビキラ)を無作為に割り当て、12週間トレーニングさせた。

 トレーニング終了時点では、やや裸足ランニング的シューズ/裸足ランニングシューズを使用したランナーの故障率は、一般的なランニングシューズを使用したランナーの2~3倍であった(6)

 この研究結果に対する批判として、トレーニング期間が短く、裸足ランニングシューズの使用に伴い足が受けるストレスに適応出来ないという意見がある。しかし結論から先に云えば、トレーニング期間に関係無く、大半のランナーは裸足ランニングシューズの使用に伴って足が受けるストレスに適応出来ない可能性がある。古人類学者であるTrinkaus and Shangは、人類の祖先の爪先は現代人のそれに比べ有意に幅広いと指摘している(7)。爪先が幅広であれば、爪先に加わる圧力が分散されることで前足部が外傷から保護される。しかし現代人の爪先は幅が狭いので、長時間の裸足ランニングに伴って加わる衝撃力への耐性が低い。そして成人がトレーニング量を増やしても、爪先部の骨が広がることは無い。

 もう一つ考慮すべきは、現代人は靴を履いて成長しているので、前足部が幅狭となりがちなことである。生涯を通じて裸足生活を営む人達を調べた研究結果によると、そのような人達の前足部は、靴を履いて生活する人達のそれに比べ約16%幅広であった(8)。この違いは明らかに、裸足生活に伴い前足部に加わるストレスによるものであり、それによって骨も強化される。現代人の大半は靴を履いて育ってきたので、その幅狭な前足部はクッション性の高いミッドソール(を有するシューズ)で保護する必要がある。

 灼熱のサバンナで長距離を走る能力によって人間の脳が発達したという考えは興味深いものではあるが、現時点で報告されている研究結果を基にすると、人類は「走るべく生まれた(”Born to Run”)」よりは「歩くべく生まれた(”Born to Walk”)」とするのがより適切である。そして、裸足ランニングによって足を危険な力(≒ストレス)に曝すのではなく、適切なクッション性があるミッドソールを有するランニングシューズを履くことで幅狭/厚みの薄い前足部を保護する必要がある。「適切なクッション性」と云っても、過剰である必要は無い。ミッドソールの厚みが10mm程度でも、反作用として地面から受けるエネルギーの吸収/反発には充分であり(9)、結果として故障の発生率は低下する(5,6)

【引用文献】
1. Bramble D, Lieberman D. Endurance running and the evolution of Homo. Nature. 2004;432:345-352.

2. Berna F, Goldberg P, Horwitz L, et al. Microstratigraphic evidence of in situ fire in the Acheulean strata of Wonderwerk Cave, Northern Cape province, South Africa. Proceedings of the National Academy of Sciences. April 2, 2012.

3. Pickering T, Bunn H. The endurance running hypothesis and hunting and scavenging in savanna woodlands. J Human Evolution. 2007;53:434-438.

4. Biewener A, Farley C, Roberts T, Temaner M. Muscle mechanical advantage of human walking and running: implications for energy cost. J Appl Physiol. 2004;97:2266-2274.

5. Ridge S, Johnson A, Mitchell U, et al. Foot bone marrow edema after 10-week transition to minimalist running shoes. Med Sci Sports & Exerc, 2013. Publishished Ahead of Print. DOI: 10.1249/MSS.0b013e3182874769.

6. Ryan M, Elashi M, Newsham-West R, Taunton J. Examining injury risk and pain perception in runners using minimalist footwear. Br J Sports Med; Published Online First 19 December 2013.

7. Trinkaus E, Shang H. Anatomical evidence for the antiquity of human footwear: Tianyuan and Sunghir. J Archeol Sci. 2008;35:1928-1933.

8. D’Aout K, Pataky T, DeClerq D, Aerts P. The effects of habitual footwear use:foot shape and function in native barefoot walkers. Footwear Science. 2009;Vol. 1, No. 2, June, 81–94.

9. Tung K, Franz J, Kram R. A test of the metabolic cost of cushioning hypothesis in barefoot and shod running. American Society of Biomechanics Annual Meeting. Gainesville, FL. August 2012.


 





 





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