昨秋、千葉の呉服店「衣舞」さんでいただき
単衣に仕立てた黒地の小紋は……

柄を葛で伏せた、珍しい染め方。
糊やゴムとは一味違い、(いい意味で)輪郭がふんわり、ファジー。
全身はこんな感じです。

小紋ですが、和裁士さんが柄ゆきを丁寧に考えてくださって
少し附下のような風情もある、流れるようなラインに好感を持ちました。
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(ここからは美術展のレポです)
さて、6月17日まで三井記念美術館にて開催の
「大名茶人 松平不昧」展。没後200年の特別展示です。

昨年、上野の東京博物館で観た「茶の湯」展にて
小堀遠州とともに、この松平不昧の蒐集品が1コーナーとして展示されており
(遠州は知っているけれど、不昧は観たことなかったなあ)と
興味を持っていました。
松江藩7代当主の不昧は、家康の次男の三男直系。
織部や遠州とともに、大名茶(徳川家に伝わる武家茶道)として知られる石州流を学びつつ
(どうも町人たちは道具にばかりこだわって)といった批判精神を持ち、
「わび」を追求した不昧流を確立、という経緯があります。
なので、不昧好みのお道具は「わび、さび」満載。
私の好みでもう一つ付け加えるなら「男気」も


奥高麗茶碗 銘 深山路。奥高麗は唐津で焼かれたそうです。
とはいえ、「地味」とか「素朴」というのとも違い

国宝 梅花天目。
そもそもこの展示、有名な油滴天目(九州国立博物館)から始まりますので
入口から、血圧が上がり気味です(笑)。
展示会場の前半は、
松平不昧のコレクション目録をおさめた「出雲蔵帳」からの紹介が中心。
なお、蔵帳に特に多く記載されているのが
赤味と青味のほのかな釉薬に特徴がある斗々屋茶碗だそうです。
展示会場後半になると、不昧直筆の書や、
晩年、勢いある職人さんにつくらせた
不昧好みの、丁寧な仕事が目を惹くお道具の数々に圧倒されます。

竹の自然な節を利用した棗「竹中次」。
初代小島漆壺斎作。

瓢箪蒔絵弁当箱(部分)。原羊遊斎作、下絵が酒井抱一。
このように、いろいろな才能を持ったたくさんの人たちとコラボし、
後世に江戸の茶の湯文化を伝える作品をつくりだしていったことに
私はとても感心しました。
画像はないのですが、不昧は自分でも茶道具をつくっており、
「打ち水だけで十分。心の花を活けてこそ花」と
敢えて何も活けない竹筒花入や、
内側に紅葉を描き、水を満たすと揺れて見える風流な水指が
印象に残りました。
決して煌びやかではないのだけれど
かといって「見栄えせずつまらない」というものでもないのだなあ、
むしろ、高い教養、深い精神性が垣間見えて、趣があるのだなあ、というのが
今回の展示を通しての私の感想です。
ご興味ある方はぜひ。公式サイトはコチラです。