鷹守イサヤ💞上主沙夜のブログ

乙女ノベルとライト文芸を書いてる作家です。ご依頼はメッセージから。どちらのジャンルもwelcome!

ヒーローを褒めすぎて削った部分@黒竜騎士

2017-06-29 | 番外編置き場

『黒竜騎士の悩ましき熱愛』にて、ページ数調整のため&ヒーロー持ち上げすぎやん!?と苦笑って割愛した部分です。
この世界の竜についての設定も一緒に削ってしまったのは若干悔やまれる……かな

どこらへんにつながるのかは、ま、適当に察してください



 さらには惚れ惚れするような美丈夫でもある。竜騎士には何故か美形が多いのだが(竜は美しいものを愛でるゆえ、その加護を受ける竜騎士は自然と魅力を増すのだとする説もある)、ジャスティンはその中でも群を抜いた美青年だった。いったい何の厭味ですかというくらい、欠点らしい欠点がない。
 あえて言えば少々寡黙すぎるきらいがあることくらいだが、お喋りな男よりよほどいいと、これまた美点に繰り入れられてしまう。夜会や舞踏会に滅多に姿を現さないことも、神秘的な雰囲気を醸しだす要因のひとつだ。
 当然、彼を狙う女性がわんさかいるわけだが、不思議なことに浮いた噂はひとつも聞かれなかった。騎士らしく、どんな女性に対しても礼儀正しく接するものの、まるで透明な壁でも張りめぐらせているかのように、誰とも特別に親しくすることはなかった。むろん飾り窓に足を運ぶこともない。
 音楽を好み、演奏会やオペラにはひとりでよく顔を出す。劇場ではボックス席を押さえてあるが、従僕を見張りに立たせていて、誰に頼まれようと絶対に入れない。
 そんな彼が、断りきれずに出席した夜会で、『国賊の娘』であるリーアンをエスコートしたのだから、彼を狙う令嬢たちは当然憤激した。その一方で、公正な態度や思いやりを称賛するむきもあり、ますます彼の評判は高まったのだが、結婚となれば話は別だ。美談は一気に困惑へと変わった。
 誰に反対されようと、彼は頑として信念を曲げなかった。さらに、彼の上司にあたる星竜騎士団の総長や同僚たちが傍観──つまり実質的には賛成だ──の姿勢を崩さなかったのも、反対派の気勢を削いだ。
 結局、リーアン自身には何の罪もないのだから支障はなかろうという国王のお言葉で婚約は成立した。しかし、それでも諦めの悪い一部の令嬢たちは『お祝い』と称して侯爵の屋敷に押しかけ、逆にリーアンを説得──というより脅迫して結婚を思い止まらせようとした。むげに追い返すのも気が引けて仕方なく相手をしていたが、さすがに気疲れしてついには寝込んでしまった。怒ったジャスティンは招かれざる訪問客はすべて拒否するよう使用人たちに申し渡し、固く門扉を閉ざしたのだった。
 ようやく静かな生活が戻ってきて、リーアンはホッとした。しかし、住み慣れた館でなじんだ召使たちにかしずかれて暮らしていると、逆にふっと非現実感に襲われることもある。まるで精巧に造られた美しい箱庭に閉じ込められているみたい……。それが何だか怖い。ジャスティンがいないとよけいにそんな気がしてくる。
 彼は現在、この屋敷で暮らしてはいない。住んでいるのはリーアンとルネだけだ。ジャスティンは元々の自宅で生活し、一日か二日おきに訪ねてきて晩餐をともにする。寝室は整えてあるが、泊まることはない。結婚前から同居するのは好ましくないという世間の風潮に配慮しているのはわかるけれど、何となく申し訳ない気がする。この屋敷の主はジャスティンなのだ。
 晩餐の後、居間でそんな話をすると、彼は穏やかに微笑んだ。
「気にしないで。自分の家なのだから気兼ねなくくつろいでいてください。前にも言ったでしょう? 私はここを一時的に預かっているだけのつもりでいますから」
「お気持ちは嬉しいのですけれど……、ご迷惑になりません?」
「……リーアン。私と結婚してくれますよね?」



てなわけでイチャイチャに突入なのでした

『黒竜騎士の悩ましき熱愛』


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