■今週の秀句7月/高橋正子選

2012-07-15 13:19:20 | 日記
◆7月22日~31日◆

★雲白く映し睡蓮ひらきけり/川名ますみ
睡蓮の咲く水に白い雲が映り、きよらかで、可憐な景色が生まれて、いかにも涼しげである。(高橋正子)

★汐入りの空を多彩に揚花火/小川和子
「汐入り」が効いた。潮の香がかすかに届くところの華やかな揚花火に、ひと時が夢のようだ。(高橋正子)

★葛饅頭笹の葉濡らし受け皿に/佃 康水
葛饅頭を包む笹の葉が濡れて、目にも涼しさを呼ぶ。濡れた笹の葉の涼感がよく伝わってくる。(高橋正子)

★蓮池をみずうみからの風通る/黒谷光子
★釘打つ音木を切る音や夏旺ん/多田有花
★わが背より高き向日葵南向く/高橋秀之
★ひるがえり水玉こぼすはちすかな/小口泰與
★かくも白湯甘し西日の家に着き/小西 宏
★掌にあふれる太さの茄子をもぐ/古田敬二
★涼しさの皿のさみどり山葵擦る/藤田 洋子
★遮断機の向こう夏山あ​おあおと/藤田裕子

◆7月15日~21日◆

★梅雨明けて木の家一軒建ち上がる/小西 宏
梅雨明けとともに木の家が立ち上がり完成した。木の家のからっとしたところがよく、これは日本の心。(高橋正子)

★ヨット帆を揚げて沖の明るさへ/多田有花
ヨットが帆を揚げて、明るい沖へと向かう。光に満ちた夏の沖とヨットの帆が明るさをくれる爽快な句。(高橋正子)

★カヌー漕ぐ櫂の響きや山の湖/河野啓一
山の湖でカヌーを漕ぐ櫂の音のみが響く静けさ、そして涼しさ。静・涼を合わせて感じさせてくれる。(高橋正子)

★初蝉や不ぞろいの声鳴き止まず/高橋秀之‏
鳴き始めた蝉があちこちから、それぞれの鳴き方で鳴く。不ぞろいながらも鳴きやむことはなく、われらの季節を迎えた蝉の意志あるごとき元気さがあかるい。(高橋正子)

★羅を畳めば風の纏いつく/黒谷光子
★片陰のベンチに冷水分かち飲む/小川和子
★遠き日も今も安らぎを葭簀張り/藤田裕子(正子添削)
★トーストの焦げの網目や蝉しぐれ/桑本栄太郎
★お棚経今年も僧のよき声に/川名ますみ(正子添削)
★夕烏鳴く丘の辺や合歓の花/佃 康水


◆7月8日~14日◆

★ゆく雲に向日葵の苗のびゆける/小西 宏
向日葵の生長が楽しみな句。空をゆく雲を見上げ向日葵の苗がどんどん伸びる。咲いた時の花の明るさ空の広さが思われる。(高橋正子)

★蓮の葉の少し傾き影を生む/上島祥子
日盛り、大きな蓮の葉の緑が少し傾いて、道にでもはみ出たのであろう、影を作っている。その影も涼しそうだ。(高橋正子)

★せせらぎの木陰のめだか動かずに/高橋秀之
せせらぎの木陰はすずしそうだ。涼しさを喜んで、目高が活発に泳ぐかと思えばそうではない。じっとして、木陰の水の涼しさを体で享受しているようだ。(高橋正子)

★花火の音不意に届きて知る夜市/藤田裕子(正子添削)
★蝉音涼し浅間に夕日落ちたれば/小口泰與(正子添削)
★門火焚き何処にも音のない心地/川名ますみ
★開け放ち涼しい風を仏にも/黒谷光子
★遠くまで行きたる心地昼寝覚め/多田有花
★青空を映して山の植田かな/河野啓一
★姉妹して眩しき街へ白日傘/佃 康水

◆7月1日~7日◆

★目高の子ぐいと水面を走りけり/小口泰與
平明な句で句意がはっきりしている。目高の子が水面を「ぐい」と蹴るように走る。目高の子の力強さが、生き生きとして涼しさを与えてくれる。命の涼しさ。(高橋正子)

★万緑を映して湖の彩の濃し/黒谷光子(正子添削)
誰でもが気づいている景色なのだが、それを言葉に表わし、はっきりと景色として切り取ったのがよい。辺りの万緑を映して、湖はいままで以上に彩が濃く夏の湖となった。(高橋正子)

★道ぬれて涼しき朝の葉擦れかな/小西 宏
★合歓咲くや遠く修理の天守閣/多田有花
★梅雨の音聞きつつ選ぶ朝の曲/安藤智久
★フラミンゴ群れてのどかな涼しき色/河野啓一
★雷雨あとの川幅広し風通る/藤田洋子(信之添削)