○8月28日
★鬼やんま少年の日の遠きかな/桑本栄太郎
ついっと目の前に現れた鬼やんま。鬼やんまはいつも魅力的だが、少年の日はさらに心躍らせるものだった。遠い少年の日が思われる。(高橋正子)
○8月25日/2句
★八月を送る花火の海遠し/小西 宏
夏の間、あちこちで花火が揚がった。八月を送る今日もも花火が揚がる。遠い海の花火だ。夏を行かすいくばくかの淋しさが海の遠花火に象徴される。(高橋正子)
★ピーマンも詰め放題の一品に/祝恵子
涼しくなりかけたころピーマンがたくさん採れる。みずみずしく新鮮なピーマンが袋にいっぱい。ピーマンの緑が爽やかだ。生活のうれしい一こま(高橋正子)
○8月22日
★篝火の昂ぶり列組む鵜飼舟/黒谷光子
篝火を燃え立たせ、列を組んで鵜飼舟が漆黒の水面に漕ぎだしてくる。四方に散る火の子、水に揺らめく火影が鵜飼の美しい光景を見せている。(高橋正子)
○8月21日
★濠の水空を映せば秋めける/多田有花
濠の水を覗くと空が映っている。空が映るだけで、秋めいた感じがする。それは、空に秋が始まっているからとも言える。からりとして、軽みのある句。(高橋正子)
○8月19日/2句
★機関車の煙り湖北の秋空へ/黒谷光子
機関車の煙が澄んだ秋空へ消えてゆく景色。静かで、ゆっくり過ぎる湖北秋が懐かしく思える。(高橋正子)
★イサキ釣る活断層帯は海深く/古田敬二
福島第一原子力発電所の事故以来、「活断層帯」が話題に上っている。釣りをしていても、この青い海の底に活断層帯があるのかと想いが至る。神秘的な海の深さに、釣りは楽しいとばかりはいかない。(高橋正子)
○8月18日
★遠雷の響く深山や山葵取る/安藤智久
深山で山葵を取るとき、遠雷が聞こえるが、この遠雷いつ近づくかもしれない。驟雨を連れて来るかもしれない。遠く雷を遊ばせつつも、雷への肌身に感じる実感がある。(高橋正子)
○8月15日
★あけぼのの青田へあふる蜻蛉かな/小口泰與
青田のあけぼのは、広々としてさわやかである。蜻蛉も青田の上に集いあふれ、あけぼのの涼しさを満喫している。(高橋正子)
○8月12日
★大花火百余の小舟照らさるる/佃 康水
海に打ち揚げられた花火。その明かりで海に点在する小舟がぱっと浮き上がる。瀬戸内海の穏やかな海に散らばる小舟と仰ぐ空の大輪の花火が、なにか平家の栄花物語を見るように思える。(高橋正子)
○8月10日
★花火待つ人らの声と星空と/安藤智久
花火の打ち揚げを待っている人々の何気ない会話の声を耳に、目を空に向けると星空が広がっている。花火に飾られる前の星空がロマンティックだ。(高橋正子)
○8月8日
★風少し軽くなりたり長崎忌/多田有花
長崎忌は、8月9日。広島の原爆忌は8月6日で灼熱の太陽の照りつける日であった。それから3日後に長崎に原爆が投下されたが、立秋を過ぎた長崎忌は、風が少し軽く感じられる。やりきれなさが少し昇華されたであろうか。(高橋正子)
○8月6日
★新駅の高架工事や稲の花/桑本栄太郎
新駅は田園の中に建てられ、高架工事が進んでいる。おりしも田んぼには稲の花が咲き、暑さのなかにも秋の気配が漂う。開発が自然を押しやって進んでいるのも現代の景色だ。(高橋正子)
○8月4日
★崖濡れて山百合のほか色もなし/小西 宏
切り立った崖は、水がしみ出て濡れいる。崖には危なっかしげに根を止めている木や草がある。そこに山百合が大振りの斑のある白い花を掲げてている。それだけに、山百合の花が印象に強く残るのだ。「山百合の花」を「色」と見たのは、ユニーク。(高橋正子)
○8月3日
★メダカ売る一筆描きの絵を添えて/祝恵子
メダカが売られている。 一筆書きのメダカの絵まで添えている。売る人の心意気だが、ユーモアがあって楽しい。透き通った水に目を凝らして見るメダカがいっそう、涼しそうだ。(高橋正子)