■今日の秀句8月/高橋正子選

2012-08-31 09:15:31 | 日記

○8月28日
★鬼やんま少年の日の遠きかな/桑本栄太郎
ついっと目の前に現れた鬼やんま。鬼やんまはいつも魅力的だが、少年の日はさらに心躍らせるものだった。遠い少年の日が思われる。(高橋正子)

○8月25日/2句
★八月を送る花火の海遠し/小西 宏‏
夏の間、あちこちで花火が揚がった。八月を送る今日もも花火が揚がる。遠い海の花火だ。夏を行かすいくばくかの淋しさが海の遠花火に象徴される。(高橋正子)

★ピーマンも詰め放題の一品に/祝恵子‏
涼しくなりかけたころピーマンがたくさん採れる。みずみずしく新鮮なピーマンが袋にいっぱい。ピーマンの緑が爽やかだ。生活のうれしい一こま(高橋正子)

○8月22日
★篝火の昂ぶり列組む鵜飼舟/黒谷光子
篝火を燃え立たせ、列を組んで鵜飼舟が漆黒の水面に漕ぎだしてくる。四方に散る火の子、水に揺らめく火影が鵜飼の美しい光景を見せている。(高橋正子)

○8月21日
★濠の水空を映せば秋めける/多田有花
濠の水を覗くと空が映っている。空が映るだけで、秋めいた感じがする。それは、空に秋が始まっているからとも言える。からりとして、軽みのある句。(高橋正子)

○8月19日/2句
★機関車の煙り湖北の秋空へ/黒谷光子
機関車の煙が澄んだ秋空へ消えてゆく景色。静かで、ゆっくり過ぎる湖北秋が懐かしく思える。(高橋正子)

★イサキ釣る活断層帯は海深く/古田敬二
福島第一原子力発電所の事故以来、「活断層帯」が話題に上っている。釣りをしていても、この青い海の底に活断層帯があるのかと想いが至る。神秘的な海の深さに、釣りは楽しいとばかりはいかない。(高橋正子)

○8月18日
★遠雷の響く深山や山葵取る/安藤智久
深山で山葵を取るとき、遠雷が聞こえるが、この遠雷いつ近づくかもしれない。驟雨を連れて来るかもしれない。遠く雷を遊ばせつつも、雷への肌身に感じる実感がある。(高橋正子)

○8月15日
★あけぼのの青田へあふる蜻蛉かな/小口泰與
青田のあけぼのは、広々としてさわやかである。蜻蛉も青田の上に集いあふれ、あけぼのの涼しさを満喫している。(高橋正子)

○8月12日
★大花火百余の小舟照らさるる/佃 康水
海に打ち揚げられた花火。その明かりで海に点在する小舟がぱっと浮き上がる。瀬戸内海の穏やかな海に散らばる小舟と仰ぐ空の大輪の花火が、なにか平家の栄花物語を見るように思える。(高橋正子)

○8月10日
★花火待つ人らの声と星空と/安藤智久
花火の打ち揚げを待っている人々の何気ない会話の声を耳に、目を空に向けると星空が広がっている。花火に飾られる前の星空がロマンティックだ。(高橋正子)

○8月8日
★風少し軽くなりたり長崎忌/多田有花
長崎忌は、8月9日。広島の原爆忌は8月6日で灼熱の太陽の照りつける日であった。それから3日後に長崎に原爆が投下されたが、立秋を過ぎた長崎忌は、風が少し軽く感じられる。やりきれなさが少し昇華されたであろうか。(高橋正子)

○8月6日
★新駅の高架工事や稲の花/桑本栄太郎
新駅は田園の中に建てられ、高架工事が進んでいる。おりしも田んぼには稲の花が咲き、暑さのなかにも秋の気配が漂う。開発が自然を押しやって進んでいるのも現代の景色だ。(高橋正子)

○8月4日
★崖濡れて山百合のほか色もなし/小西 宏
切り立った崖は、水がしみ出て濡れいる。崖には危なっかしげに根を止めている木や草がある。そこに山百合が大振りの斑のある白い花を掲げてている。それだけに、山百合の花が印象に強く残るのだ。「山百合の花」を「色」と見たのは、ユニーク。(高橋正子)

○8月3日
★メダカ売る一筆描きの絵を添えて/祝恵子
メダカが売られている。 一筆書きのメダカの絵まで添えている。売る人の心意気だが、ユーモアがあって楽しい。透き通った水に目を凝らして見るメダカがいっそう、涼しそうだ。(高橋正子)

■今週の秀句7月/高橋正子選

2012-07-15 13:19:20 | 日記
◆7月22日~31日◆

★雲白く映し睡蓮ひらきけり/川名ますみ
睡蓮の咲く水に白い雲が映り、きよらかで、可憐な景色が生まれて、いかにも涼しげである。(高橋正子)

★汐入りの空を多彩に揚花火/小川和子
「汐入り」が効いた。潮の香がかすかに届くところの華やかな揚花火に、ひと時が夢のようだ。(高橋正子)

★葛饅頭笹の葉濡らし受け皿に/佃 康水
葛饅頭を包む笹の葉が濡れて、目にも涼しさを呼ぶ。濡れた笹の葉の涼感がよく伝わってくる。(高橋正子)

★蓮池をみずうみからの風通る/黒谷光子
★釘打つ音木を切る音や夏旺ん/多田有花
★わが背より高き向日葵南向く/高橋秀之
★ひるがえり水玉こぼすはちすかな/小口泰與
★かくも白湯甘し西日の家に着き/小西 宏
★掌にあふれる太さの茄子をもぐ/古田敬二
★涼しさの皿のさみどり山葵擦る/藤田 洋子
★遮断機の向こう夏山あ​おあおと/藤田裕子

◆7月15日~21日◆

★梅雨明けて木の家一軒建ち上がる/小西 宏
梅雨明けとともに木の家が立ち上がり完成した。木の家のからっとしたところがよく、これは日本の心。(高橋正子)

★ヨット帆を揚げて沖の明るさへ/多田有花
ヨットが帆を揚げて、明るい沖へと向かう。光に満ちた夏の沖とヨットの帆が明るさをくれる爽快な句。(高橋正子)

★カヌー漕ぐ櫂の響きや山の湖/河野啓一
山の湖でカヌーを漕ぐ櫂の音のみが響く静けさ、そして涼しさ。静・涼を合わせて感じさせてくれる。(高橋正子)

★初蝉や不ぞろいの声鳴き止まず/高橋秀之‏
鳴き始めた蝉があちこちから、それぞれの鳴き方で鳴く。不ぞろいながらも鳴きやむことはなく、われらの季節を迎えた蝉の意志あるごとき元気さがあかるい。(高橋正子)

★羅を畳めば風の纏いつく/黒谷光子
★片陰のベンチに冷水分かち飲む/小川和子
★遠き日も今も安らぎを葭簀張り/藤田裕子(正子添削)
★トーストの焦げの網目や蝉しぐれ/桑本栄太郎
★お棚経今年も僧のよき声に/川名ますみ(正子添削)
★夕烏鳴く丘の辺や合歓の花/佃 康水


◆7月8日~14日◆

★ゆく雲に向日葵の苗のびゆける/小西 宏
向日葵の生長が楽しみな句。空をゆく雲を見上げ向日葵の苗がどんどん伸びる。咲いた時の花の明るさ空の広さが思われる。(高橋正子)

★蓮の葉の少し傾き影を生む/上島祥子
日盛り、大きな蓮の葉の緑が少し傾いて、道にでもはみ出たのであろう、影を作っている。その影も涼しそうだ。(高橋正子)

★せせらぎの木陰のめだか動かずに/高橋秀之
せせらぎの木陰はすずしそうだ。涼しさを喜んで、目高が活発に泳ぐかと思えばそうではない。じっとして、木陰の水の涼しさを体で享受しているようだ。(高橋正子)

★花火の音不意に届きて知る夜市/藤田裕子(正子添削)
★蝉音涼し浅間に夕日落ちたれば/小口泰與(正子添削)
★門火焚き何処にも音のない心地/川名ますみ
★開け放ち涼しい風を仏にも/黒谷光子
★遠くまで行きたる心地昼寝覚め/多田有花
★青空を映して山の植田かな/河野啓一
★姉妹して眩しき街へ白日傘/佃 康水

◆7月1日~7日◆

★目高の子ぐいと水面を走りけり/小口泰與
平明な句で句意がはっきりしている。目高の子が水面を「ぐい」と蹴るように走る。目高の子の力強さが、生き生きとして涼しさを与えてくれる。命の涼しさ。(高橋正子)

★万緑を映して湖の彩の濃し/黒谷光子(正子添削)
誰でもが気づいている景色なのだが、それを言葉に表わし、はっきりと景色として切り取ったのがよい。辺りの万緑を映して、湖はいままで以上に彩が濃く夏の湖となった。(高橋正子)

★道ぬれて涼しき朝の葉擦れかな/小西 宏
★合歓咲くや遠く修理の天守閣/多田有花
★梅雨の音聞きつつ選ぶ朝の曲/安藤智久
★フラミンゴ群れてのどかな涼しき色/河野啓一
★雷雨あとの川幅広し風通る/藤田洋子(信之添削)

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2012-07-08 14:14:13 | 日記
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