「守秘義務違反」に当たらず
1月22日に公表された金融庁の「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」報告書関連の記事。
「決算認めないなら説明を」という見出しからは、何が何でも無限定適正を出せ、監査人が決算を認めないなどとんでもないというようなニュアンスも感じられますが、記事の内容は、比較的まともです。
「「不適正」や「意見不表明」は監査法人が決算内容を正しいと保証しないことを意味する。投資家は何が問題なのかを知りたいところだが、公認会計士法は「正当な理由がなく秘密を他に漏らしてはいけない」と規定。守秘義務に触れかねないとの懸念から、監査法人が判断の詳しい理由を説明するのをためらう要因と指摘されてきた。
公認会計士法を所管する金融庁は「本来、投資家が知るべき情報まで『秘密』と拡大解釈されてきた面がある」(幹部)とみて、報告書では未公表の情報がすべて「秘密」にあたるわけではないと指摘。そのうえで「無限定適正」でない場合、判断に至った根拠の説明は「正当な理由に該当する」とはっきり示した。」
東芝の監査にもふれています。
「金融庁には投資家の判断材料となる監査意見の詳しい理由を説明するよう促すねらいがある。たとえば東芝のように意見不表明の場合、何がネックで、どの点で会社と監査法人の意見が折り合っていないかがわかれば、投資家が問題の軽重を判断できるようになる。」
「金融庁は昨年、監査法人との対立や情報発信の不足が混乱に拍車をかけた東芝の事例を教訓に、有識者による「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」を設置、議論を進めてきた。今回の充実策とKAM記載義務付けの両輪で監査報告書の充実をめざす。」
東芝の場合は、交代後のあらた監査法人の監査で、過年度に遡るような大きな虚偽記載を発見し、そのことを監査報告書に明確に記載したわけですから、監査人の説明がどうこうという以前に、金融庁がその監査意見を受けて、徹底的に東芝の決算を調べていれば(監査人も当局の調査に対しては守秘義務は完全に解除される)、解決したはずです。それを、監査人の説明責任や守秘義務の問題にすり替えているように感じられます。金融庁がやるべきことをやっていないというのが、「根本原因」なのでは。
決算「不適正」なら、監査法人に説明責任 金融庁方針(朝日)
「上場企業などが事業年度の決算でつくる有価証券報告書で「お墨付き」となる監査法人の意見について、「不適正」などの場合は根拠を示すことが求められることになった。監査法人は守秘義務をタテに説明を拒む例が多かったが説明責任を明確にし、決算の透明性を高める。」
「米国の原発事業で巨額損失を出した東芝の2017年3月期決算では、公表が延期された末、「限定付き適正」となった。ただ、監査報告書の説明が不十分だと指摘された。」
今でも、「「不適正」などの場合」は、監査報告書に「根拠」が書かれいているのですが...。
そもそも、職業的懐疑心を発揮して異常点を発見し、「限定付」や「不適正」「不表明」の監査意見を出した場合は、説明責任を強く求め、それとは逆に、漫然と「無限定」を出し続けている場合は、特段の説明は求めないというのでは、監査品質向上には逆効果でしょう。
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