公認会計士協会会長へのインタビュー記事。主に監査について聞いています。
その中から気になった部分を抜粋。
監査報告書長文化について。
「 ――監査報告書の透明化・長文化についてはどのような考えですか。シンポジウムなどで聞く限りでは、慎重な会計士も多いようです。
よく、監査はブラックボックスだと言われます。以前から、監査自体がよく理解されていないと思っていましたが、理解を促すような方策を打ち出せてきていませんでした。このことは反省しています。ただ、守秘義務を守りながらの透明性となります。その手段の一つが(監査報告の)長文化を導入することです。これはすでに国際的に議論され、仕組みが作られています。きちんと検討したいと思っています。ただ、形だけ入れて、本当に機能するのでしょうか。環境も整えていかなければいけません。長文、透明化に慎重な会計士が多いという意識は持っていません。」
賛成、反対以前に、そもそも、こういう論点があるということ自体が周知されていないようにも思われます。ただ、国際監査基準で導入済みなので、協会としては基準化する(それと同時に監査基準も改正させる)のでしょう。
監査事務所のローテーションに関しては消極的なようです。
「国際的に見ると、欧州は監査法人のローテーションに踏み込みましたが、交代時期がまだ来ていません。いったん導入したが、その後、取りやめた国もあります。多くの国で採用しているのが、パートナーのローテーションです。このパートナーのローテーションを厳しくする考えが強まっています。パートナーだけでなく、年次の高い会計士をも定期的に交代させるという流れです。法人のローテーションになると、いくつか大きな課題があります。グローバルな大企業の場合、100人以上の監査人が必要です。それも100人いればできるというものでもありません。協会が定めた倫理規則の独立性に関する指針で、1社からの報酬が事務所全体の報酬の15%を超える場合はできません。そうすると、1千人と2千人という会計士を抱えた法人となります。ローテーションの問題について、在り方懇談会で引き続き、検討することになっています。まずは市場を混乱させてはいけないと思います。」
監査時間の確保について。
「――会計士は忙しくて、「ブラック企業だ」という自嘲の声も聞きます。労働環境に問題があるのでは。
監査をしっかりやるためには、「作業を終えた」だけではいけません。考える時間が必要なんです。作業に疲れると、気がつくことも気がつかなくなります。「ある程度の余裕がないといい仕事ができない」ということが私の持論で、「監査環境の改善」は大変重要な課題です。ある程度の余裕がないといい仕事はできません。特に期末の期間が非常に短いのです。企業の人は、今までやってきたのだからと言われるが、すでに限界に来ています。会社の業務も複雑になっています。考える時間を確保するため、今、作業的な仕事を機械、ITに置き換えることを進めています。コンピューターに流して、イレギュラーの数値を出すことなどです。ただ、会社によってシステムが違うので、そこが難しい。今は過渡期です。」
「会計士の業界は今まで、守秘義務があるからと、社会に対して自分たちのことを何も言えないという感じでやってきました。そうすると、聞く方も意欲をなくし、理解しようとしません。その意味で言うと、今の状況は、ある意味、いい機会だと思います。会計士が強い危機感を覚え、関係者がたくさんの指摘をしています。」
監査の目的について。
「――監査の目的は不正の発見にあるのでしょうか。元会長がそれは目的ではないと言っておりました。
監査基準にも書かれていることですが、不正もしくは誤謬かにかかわらず、重大な虚偽表示がないことを合理的な保証することが目的です。目的が不正の発見と言われると、「小さな発見も全部見つけるのか」ということになります。もちろん、重要な虚偽表示につながるような不正は発見しないといけません。また、不正を発見するという目的では、日本公認不正検査士協会という専門的な団体もあります。元会長の発言の趣旨は、不正の発見を、それ自体を目的化するわけではないということだと受け止めています。監査は不正との戦いでもあるんです。」
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