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会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

中国不動産王の最期、許家印の「成り上がり」人生(東洋経済より)

中国不動産王の最期、許家印の「成り上がり」人生

経営危機に陥っている中国の恒大集団の創業者を取り上げた記事。

「河南省の貧村出身の許家印は、どのように「恒大帝国」を築き上げ、中国一の富豪にのし上がったのか。そして、その金満経営はどこで破滅へと向かい始めたのか。中国の調査報道メディア「財新」が不動産王の知られざる生涯を明かす。」

恒大集団の経営手法は...

「恒大不動産が開発した最初のプロジェクトは「金碧花園」で、着工からわずか2カ月後の1997年8月に低価格で先行販売を開始し、当時最も有名な「日光盤(即日完売物件)」となった。こうして許家印と恒大は「世間での地位」を確立したのだ。

彼は後に「同年用地取得、同年建設申請、同年着工、同年完成、同年完売、同年センセーション化、同年入居、同年収益化」という「8つの同年」をまとめた。すなわち、中国の不動産業界で言う「高回転」である。

恒大不動産は急成長し、2004年には中国国内の不動産企業の売上高トップ10入りを果たした。2009年11月5日、恒大は香港証券取引所に上場。許家印は479億香港ドル(当時の為替レートで約5700億円)を手にし、同年中国本土で最も裕福な人物となった。」

多角化戦略を推進し、銀行まで取り込んだそうです。

「2016年と2019年、恒大は増資を通じて盛京銀行(遼寧省に本拠を置く都市商業銀行)の支配株主となり、持ち株比率は36.4%に達した。ここ数年、盛京銀行は直接または間接的に中国恒大に「資金を注入」し、その資金規模は1000億元(約2兆円)以上に及んだとみられる。」

EV(電気自動車)にも進出します。そのスローガンは...

「技術、人材、経験が不足していたため、許家印は、「恒大の自動車製造は独自の道を見つける必要がある」と発言。「買買買、合合合、圈圈圈、大大大、好好好(資金で技術力を買う、他社と協力する、顧客を囲い込む、会社の規模を大きくする、ベストを目指すこと)」を提唱した。」

2020年が恒大のピークだったそうです。

「財務報告書によると、2020年における恒大の売上高は7232億元(約14.5兆円)で、営業利益は5072億元(約10兆円)に達していた。」

しかし、あやしい取引(グループ内で不正に資金を融通していた?)が明らかになってきました。

「2022年3月21日、不動産管理部門を手がける恒大物業は約134億元(約2700億円)の預金が銀行によって強制的に差し押さえられ、恒大、恒大物業、恒大汽車の上場企業3社が同時に香港証券取引所から取引停止となったことを明らかにした。

2023年2月15日、恒大は2020年12月から2021年8月までの間、恒大物業の定期預金を第三者企業の銀行融資申請のための担保保証として繰り返し利用してきたことが判明した。

第三者企業は資金を得た後、その資金を借り入れまたは投資という手段を通じて恒大に返金していた。恒大の多くの幹部はこの責任を取り、辞任した。」

それぞれ上場会社ですから、勝手に親会社に資金を融通するのはまずいでしょう。

これについては、自分の責任は認めなかったそうです。

「恒大の8月25日の発表によると、許家印は資金の不正流用に関連する文書にアクセスが可能で、保管をしており、さらに一部の文書には許家印の署名もあったという。

これについて許家印は「自分は恒大の財務と資金業務を直接担当しておらず、これらの文書も自分で精査していない」と反論した。また、「決済承認のために関連文書が上がってきた際は、責任者が署名をしている。自分はこうした幹部の監督能力を信頼しており、自身の署名はプロセスの一部にすぎない」とも主張している。

しかし元従業員は、「恒大社内で幹部が許家印に隠れて100億元以上の資金を不正流用する事件を起こすとは考えがたい」とコメントし、許家印の弁明には懐疑的であった。」

会計処理にもあやしい点があったようです。

「2023年6月から8月にかけて、株取引の再開要件を満たすため、恒大の上場企業3社はそれぞれ2021年から2023年中間期までの決算報告書を多数作成した。注目すべきは、この報告書に「収益の前倒し計上」という異例の会計処理が施されていたことだ。

中国では一般的に、開発業者が物件を開発前に先行販売する。その際に受け取る前受金は通常「契約負債」勘定に含まれる。住宅の引き渡し後に初めて前受金が営業収入に振り替えられ、利益が計上される。

恒大はこれを前倒しで収益として計上することで、負債比率を大幅に低下させ、銀行からの融資を受けやすくしたとみられる。一方、監督管理委員会は複数の財務報告書に基づき、恒大の会計処理は大株主(許家印を含む)への迅速な配当分配に有利であると指摘した。」

今は大幅な債務超過なので、配当はたぶんできないのでしょうが、以前の期なら、不正な利益計上により、自分に対する配当を含む違法な配当を行うことが可能だったのかもしれません。

【解説】 中国恒大集団の破綻の恐れ、どれほど心配すべきなのか(BBC)

「恒大の問題が深刻な理由はいくつかある。

まず、多くの人が同社の不動産を購入しており、中には工事が始まる前に買った人もいる。それらの人たちは手付金を支払っているが、同社が破綻すればそれを失う可能性がある。

恒大には取引企業が多いこともある。建設会社や設計会事務所、資材サプライヤーなどは、大きな損失を被り、倒産に追い込まれるリスクに直面している。

さらに、中国の金融システムに及ぼす潜在的な影響もある。恒大が破綻すれば、銀行などの金融機関は貸し出しを減らすようになるかもしれない。

そうなると「信用収縮」の状態となり、企業は無理のない金利で借金をするのが難しくなる。

信用収縮は、世界2位の経済大国の中国にとって非常に悪いニュースとなる。借り入れをできない企業は成長が難しく、事業継続すらできなくなることもあるからだ。」

中国・恒大集団会長が拘束された「本当の理由」 “偽装離婚”した妻が「カナダへ極秘出国」情報で“瓦解”を始めた破綻処理スキーム(デイリー新潮)

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