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分配可能額を超えた当期の中間配当金と自己株式取得に関する 第三者委員会の調査結果及び再発防止策について(力の源ホールディングス)

分配可能額を超えた当期の中間配当金と自己株式取得に関する第三者委員会の調査結果及び再発防止策について(PDFファイル)

力の源ホールディングス(東証プライム)のプレスリリース(2025年2月17日)。

「当社が2024 年11 月13 日及び2024 年12 月20 日の取締役会決議に基づき、会社法及び会社計算規則により算定される分配可能額を超え、中間配当金の支払い及び自己株式の取得を実施したことに関して」第三者委員会の調査結果及び再発防止策を公表しています。

第三者委員会は同じ弁護士法人の弁護士3名から構成されています。

経緯。

「当社は、2024 年11 月13 日開催の取締役会において、総額272 百万円、1 株あたり9 円の中間配当を行うことを決議し、2024 年12 月6 日に配当金の支払いを実施いたしました(以下「本件中間配当」といいます。)。

また、2024 年12 月20 日開催の取締役会において、取得株数200,000 株(上限)、取得価格の総額200 百万円(上限)とする自己株式の取得を行うことを決議し、2024 年12 月23 日までに、72,100 株(総額70 百万円)を取得いたしました(以下「本件自己株式取得」といいます。)。

その後、会計監査人からの指摘により、本件がいずれも会社法及び会社計算規則により、算定される分配可能額を超えていたことを認識した...」(プレスリリースより)

調査結果。

「調査により判明した事実

第三者委員会の検証により判明した事実は、以下のとおりであります。

(1)担当者の知識・理解不足に起因して分配可能額の計算方法に誤解がありました。

(2)分配可能額を超えた剰余金の配当等を防止するための社内手続きを定めておらず、本件中間配当金の決議時点では、チェックリスト等による分配可能額の算定が行われていませんでした

(3)本件中間配当及び本件自己株式取得の決議の際の取締役に対する説明資料の作成にあたり、分配可能額の算定を実施していなかったことから、当該資料に取締役が分配可能額を検証できる記載がなく、取締役において分配可能額を超えていることを認識することができませんでした。

(4)当社の取締役が、分配可能額を超えていることを認識しつつ、本件中間配当及び本件自己株式取得の決議に同意したという事実は認められませんでした。」(同上)

関係者の責任については、刑事責任はなく(故意犯ではないため)、また、民事責任についても「取締役に対して民事責任を追及すべき必要性がないと判断することも、不合理とまではいえない」とされています。

十数ページの報告書が添付されています。

そのうち、監査法人が登場する箇所の一部。

「本件監査法人の担当者は、CHD との長年の関係もあり、F 氏からの開示資料の確認依頼を断ることはなく、財務諸表との関係で当該開示資料に問題点がないか確認し、都度回答していた。もっとも、F氏を含むCHDの担当者らは、本件監査法人の業務範囲について特に意識することなく、その依頼が本来の業務範囲外のものであったとしても、これに対する本件監査法人の回答を「お墨付き」のように認識していた。」

中間配当について。

「山根社長は、2025 年3 月期の中間配当について、2024 年5 月の決算短信で予測していたとおり、1株当たり9 円で実施する方針を決定し、F 氏は、これを受けて、本件中間配当に関する取締役会資料及び適時開示資料を作成した。

F 氏は、2024 年11 月8 日、山根社長の確認を得た適時開示資料のドラフトを本件監査法人の担当者にメールで送付してその内容の確認を求めた。これに対して、本件監査法人の担当者は、当初、本件中間配当が分配可能額を超えた剰余金の配当等になる可能性を指摘した。

もっとも、F 氏は、1 株当たり9 円で剰余金の配当をする場合、上記指摘を受けた時点では、(想定される超過額については誤認があったものの)分配可能額を超えた剰余金の配当等になること自体の認識はあったため、「配当可能額ですが、11 月に子会社より 430 百万円程度の配当金を受領し調整する予定です。」といった旨を説明した。なお、この430 百万円という金額は、F 氏が各子会社の財務担当者に対してCHDに配当できそうな金額を確認し、それを合計した金額である。

本件監査法人の担当者は、これに対して「11 月に受領される旨かしこまりました。」とだけ F 氏に返信し、株主総会で臨時計算書類の承認を得る等の別途の手続を踏まない限り、1 株当たり9 円の配当を行うことが分配可能額を超えた剰余金の配当に当たることを指摘しなかった。この時、本件監査法人の担当者は、分配可能額の算定の基礎となる剰余金の額が最終事業年度末日(2024 年 3 月期末)の値であって、剰余金の配当を実施する時点の値を参照するものではないことを正確に認識していなかった

この返信を受けたF 氏は、本件中間配当に関する取締役会の決議を得るための社内手続を進めた。」

自己株式取得について。

「S 氏は、分配可能額を計算したエクセルシートを作成し、F 氏を含む社内関係者の確認を得た上で、2024 年12 月16 日に、本件監査法人に内容の確認を依頼した。このエクセルシートでは、分配可能額の算定に当たって自己株式の帳簿価額が控除されていたものの、肝心の剰余金の額については、剰余金の配当等を実施する時点における値を参照したままであった。すなわち、F 氏及びS氏を含むCHDの社内関係者らは、この時点においても、分配可能額の算定の基礎となる剰余金の額が最終事業年度末日(2024 年 3 月期)の剰余金の額を参照しなければならないことを理解しておらず、このまま自己株式の取得を実施してしまうと分配可能額を超過した違法な自己株式の取得になってしまうことを認識できていなかった。なお、F 氏は、自己株式の取得に関する手続を進める中で、分配可能額の算定に当たって自己株式の帳簿価額が控除されることを認識するに至ったが、剰余金の額の参照時点については誤った理解のままであった。

S氏からエクセルシートを受領した本件監査法人の担当者は、依然として分配可能額の算定の基礎となる剰余金の額が最終事業年度末日の値であって剰余金の配当等を実施する時点の値ではないことを理解していなかったため、エクセルシートの分配可能額の計算が誤っていたにもかかわらず、これを指摘せずに、問題ない旨の回答を行った。」

発覚の経緯。

「本件監査法人の担当者は、2024 年12 月26 日、S 氏から送付を受けたエクセルシートの内容を再度確認した際に、分配可能額の算定の基礎となる剰余金の額は剰余金の配当等を実施する時点ではなく最終事業年度末日の値を参照しなければならないことを認識し、同月16 日のS氏への回答が誤りであったことを認識した。

本件監査法人は、このことを山根社長に報告し、本件中間配当等が分配可能額を超えた剰余金の配当等であったことが発覚した。CHD の関係役職員は、同月 27 日までに分配可能額の算定方法について正しい認識を持つに至った。

なお、CHDの2024 年3 月期末の連結貸借対照表及びそれ以降の月次の連結貸借対照表(CHDが社内的に作成しているもの)によれば、本件中間配当等のいずれの時点においても、仮に子会社から配当金を受領した上で臨時計算書類を作成し必要な手続を実施していれば、CHD は、分配可能額を超えずに本件中間配当等を実施することが可能であった。」

監査法人をきつく批判しているような箇所はなさそうですが、監査法人とのやり取りを比較的細かく説明することにより、もっとちゃんとチェックしてほしかったというニュアンスを出そうとしているようにも感じられます。

(報告書によると、この会社には、社外取締役に、会計士と弁護士がいるのですが...)

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