2月12日に開催された金融庁の「サステナビリティ情報の保証に関する専門グループ」(会議資料など→当サイトの関連記事)の模様などを伝える記事。
「金融庁は12日、一部上場企業に義務化されるサステナビリティ開示での監査法人などによる保証基準について議論を始めた。同日に有識者会議の初会合を開き、保証の担い手に上場会社の監査人と同等の管理体制や業務制限などを課す方針を確認した。」
「保証に必要な倫理や独立性を監督したり検査したりする仕組みについては、自主規制団体の設立や日本公認会計士協会の活用などを軸に次会合以降で議論する。」
記事の見出しでは「保証基準策定へ議論」とありますが、保証基準や品質管理基準、職業倫理の基準は、海外基準をほぼそのまま取り入れる方向で決まっているのでしょう。
結論がまだ見えていないのは、会計士・監査法人以外の専門家が、サステナ保証業務を行う際の監督などをどうするのかという点でしょう。会計士・監査法人だけが行うのであれば、上場会社の会計監査に対する監督の仕組みをそのまま使えるわけですが、その他の専門家までカバーするためには、別の方法を考えないといけません。
会計監査の場合は、会計士協会が自主規制を行った上で、金融庁がそれを利用して監督を行っているわけですが、会計士協会が会員でもない専門家を監督する権限もありませんし、その他専門家の自主規制のコストを負担する理由もありません。日経記事では、「自主規制団体の設立や日本公認会計士協会の活用など」といっていますが、「自主規制団体の設立」だと、会計士以外の専門家が加わった組織に会計士・監査法人が監督されるという建て付けになり、会計士・監査法人側はおもしろくないかもしれません。同じことはその他の専門家側も同じでしょう。そもそも、新たな団体を作るほどのニーズがあるのかもわかりません。
後者の「日本公認会計士協会の活用」は、コスト分担の問題のほか、会計士協会が主導する形になるのは、その他専門家側からは反発があるかもしれません。
いろいろ考えてみると、会計士・監査法人は会計士協会の自主規制、その他の専門家は、別に組織を作って、そこが自主規制するというのがよいのではないでしょうか。金融庁は、両者の上にいて、レベルに差が出ないよう、調整すればよいでしょう。弁護士会は複数あるわけですし、宅建業の業界団体も複数あるようです。業界団体が複数あるから監督(あるいは自主規制)できないということはないでしょう。
なお、協会と関係が深い「日本公認会計士政治連盟」では、サステナ保証は、会計士・監査法人だけにやらせろと主張しています(→当サイトの関連記事)。そういう政治的な話は、有識者会議ではやらないのでしょう。