日本公認会計士協会は、2013年10月28日付で2件の懲戒処分を公表しました。
処分を受けたのは、1件は、あずさ監査法人(戒告)と公認会計士1名(会則によって会員に与えられた権利の停止1か月)、もう1件は、公認会計士2名(会則によって会員に与えられた権利の停止1か月と戒告)です。別の会計士(故人・元会員)も関与していたようですが、処分の対象外となっています。
この2件は同じ学校法人の平成15年度と17年度の監査にかかわる処分です。平成16年度も不正は継続していたと思われますが、処分の対象にはなっていません。
まず、学校法人の行っていた不正の内容は以下のようなものでした。
「学校法人は、見せ金により大学を開学した関係で初年度の経常経費相当分6億円の存在を仮装する必要が生じ、平成14年度から平成16年度までの各年度において、架空取引の実施、 預金残高の操作等の不適正な会計処理を行っていた。平成15年度においては、A社との架空の業務委託契約を締結して業務委託費として2億円を計上し、年度末には、一時的な簿外の借入れにより、経常経費相当分4億円の資金残高があるように見せかける預金残高の操作を行っていた。」
「平成17年度においては、 4月に仮払金として2億円がA社に支出されたことになっていた。」
平成15年度の監査に関与した会計士については以下のような指摘がなされています。
「他の監査責任者である故B元会員から監査実施状況をヒアリングし、特別な問題点の説明・相談がなかったことで問題なしとし、監査調書の査閲や学校法人への往査を全く実施せず、実際の監査実施状況や内容をほとんど知らないまま監査報告書に監査責任者として署名していたものと認められる。」
あずさ監査法人については「複数監査責任者制度が実質的に機能していなかった」ことや、審査機構の不備、監査調書の整理保管状況などについて指摘されています。
平成17年度は、仮払金の監査について不備を指摘されています。
「期中監査において、当該仮払金に係る発生経緯の説明や関連証憑の提示を受けられなかったにもかかわらず、学校法人に対する問題点の指摘や調査依頼に止まっており、期中監査時点において適時に、十分かつ適切な監査手続を実施したとはいえない。
また、期末監査の終了間際に、仮払い発生当時の日付がある議事録、稟議書、金銭借用書等の書類等を提示され、1年も前から仮払金として実態が不明なまま処理されていたものが、貸付金であるとの説明を受けたことに疑問を持ったにもかかわらず、残高確認に対する回答があったこと、関連証憑類が揃っていること等をもって、学校法人の処理を認めた。 」
戒告を受けた会計士は「途中辞任した監査責任者・・・に代わって、平成18年5月20 日過ぎに監査責任者となった」にもかかわらず、引き継ぎ手続を行わないなど「監査責任者の職務遂行上、必要かつ十分な監査手続を実施したとはいえない」と指摘されています。
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