新首相が8日の所信表明演説で四半期開示を見直すと述べたことについて、9日の日経朝刊ではほとんどふれていませんでしたが、電子版では、投資家の声という形で反対論を述べています。
「岸田文雄首相が8日の所信表明演説で、企業が3カ月ごとの業績などを公表する「四半期開示」の見直しに言及した。首相は「非財務情報の充実や四半期開示の見直しなど、環境整備を進める」と述べた。投資家からは「開示の頻度が減れば情報格差が広がる」と四半期開示の継続を求める声が出ている。
岸田首相は演説で「企業が長期的な視点にたって、株主だけでなく、従業員も取引先も恩恵を受けられる『三方良し』の経営を行うことが重要」と強調した。見直しに言及しただけで、具体策は分からない。」
「ある国内大手機関投資家は「欧米は四半期開示をしている企業が多い。日本が見直せば海外投資家の日本市場回避は加速するだろう」と指摘する。」
四半期開示が取り上げられた背景には、経産省の暗躍があるようです。
「四半期開示見直しがなぜこのタイミングで浮上したのか。市場関係者には「岸田政権で存在感を増した経済産業省の影響があるのでは」との見方もある。
岸田首相は自民党幹事長の甘利明氏や筆頭首相秘書官の嶋田隆氏ら経済産業省と関わりの深い政治家や官僚を要所に起用した。経産省は5月に「サステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する対話研究会」を立ち上げた。非財務情報開示の充実のほか、企業の長期ビジョンの重要性を議論しており、関係者は「四半期開示に批判的な産業界の本音がにじんでいる」とみる。」
今後の議論の進め方は...
「議論は金融審議会で進むとみられる。決算短信の内容の自由度を上げるといった検討は現状でも課題になっており、同庁からは「議論をするのは必要」との声が出ている。一方で「法改正が必要。反発が強く、すぐに実現するのは難しい」との声も漏れる。国内では欧米と足並みをそろえて開示内容をより充実させようとする議論が進む。その最中に四半期開示の間隔を長くするようなことになれば、日本が「後ろ向き」との印象を国際社会に与えかねない。」
金融庁は、経産省が余計なことをしてくれたと思っているでしょう。
なお、経産省では上記研究会の他、「非財務情報の開示指針研究会」というのをやっており、10月下旬に報告書を出すようです。
(補足)
日本は「四半期資本主義」か 首相、市場ルール再考提唱
金融PLUS 金融グループ長 河浪武史(日経)(記事冒頭のみ)
「日本経済の競争力低下の理由が、企業や投資家の「短期主義(ショートターミズム)」にあるとは言いがたい。市場ルールを見直すのであれば、人的投資を促すさらなる情報開示こそ、岸田政権の「成長と分配の好循環」の早道となる。」
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