物言う株主ストラテジックC、日証金に提訴請求-不適切会計主張
物言う株主(アクティビスト)のストラテジックキャピタルが、投資先の日本証券金融の不適切会計処理を指摘したという記事。株式の売却益の表示方法を問題にしています。役員報酬の計算にも関係するのだそうです。
「ストラテジックCによると、日証金は保有する日本取引所グループ(JPX)株の売却益を、2021年3月期と22年3月期に本来計上すべき特別利益ではなく、営業収益に計上していたと指摘。その結果、経常利益が押し上げられた可能性が高く、同利益に連動する執行役の業績連動報酬も過大に支払われていたと主張した。」
決算の訂正と、訂正された決算に基づく業績連動報酬の再計算、過払い分の返還を求めているそうです。
「ストラテジックCは、日証金に対して金融商品取引法などに違反するとして決算書の訂正を求めるとともに、訂正後の決算書に基づいた業績連動報酬を再計算し、過払い分の返還を求めた。提訴を求める請求書は日証金の監査委員に対して送付。提訴請求は株主代表訴訟を起こす前の手続きとなる。」
表示方法に関しては、ストラテジックキャピタルの主張が正しいように思われますが、金融会社ということで、何か別のルールが適用されるのでしょうか。
2022年3月期の有報で役員報酬を見てみると...
たしかに、経常利益に連動する部分はあるようですが、その金額自体は、あまり大きくありません(6人で29,463千円)。他の年度は未確認です。
ちなみに、会計監査人は東陽監査法人で、1952年から継続しています(2022年3月期有報による)。
日本証券金融株式会社の執行役に対する不当利得返還を請求する訴え提起の請求について(ストラテジックキャピタル)
ストラテジックキャピタルの主張を取り上げた報道。
天下り?偶然?10代続けて日銀OBが社長の企業 問題提起したのは「物言う株主」だった(東京新聞)
「「天下り」の指摘を受けたのは、東京・兜町の東京証券取引所近くに本社を置く日本証券金融(日証金)。証券会社に取引用のお金や株式を貸し出すのが主な業務で、公共性の高い金融機関。東証最上位のプライム市場に上場している。日銀と資本関係はないが、1950年の上場以来、現在の櫛田誠希しげき社長(64)まで10代続けて日銀の理事経験者が社長になっている。
これを問題視するのは、アクティビストとして活動する投資ファンド「ストラテジックキャピタル」(SC、東京)。日証金株を約5%持つ。丸木強代表(63)が言う。「日証金の役員の席が天下りの『指定席』になっているのは明らか。株価が低迷しているのに、天下り役員は高額な報酬を得ている。天下りは社会正義に反する上、公正に役員を選ぶというガバナンスの根幹が全く機能していない」
SCの調査では、日銀OBを社長に迎えているだけではない。これまでに日銀の局長級OB計7人が常務や専務などに就いたほか、副社長や副会長になった財務省OBも計10人いた。ビジネス上関係の深い東証のOB計7人も社外取締役などになっている。会社の主要ポストへの「天下り」が70年以上にわたって連綿と続いていると訴える。」
有報を見ると、大蔵省・金融庁出身者もいます。(監視委に告発しても、無視される?)
おなじみの八田教授もコメントしています。
「企業統治に詳しい青山学院大の八田進二名誉教授(会計学)は「日本の上場企業は歴史的に間接金融や株式の持ち合いで、限られた関係者同士のなあなあな関係にあった。そこに外の目を入れ、上場会社に責任を果たさせ、機関投資家には運用先をきちんと見届ける義務があると2つのコードで明確にした」と話す。
...毒にも薬にもなりうるアクティビストとどう向き合うべきか。前出の吉川氏は「アクティビストに狙われる企業は、資金をため込み過ぎたり、不採算事業を抱え込んでいたりと、何かしら問題を抱えていることが多い。資本市場の課題意識に向き合い、真摯しんしに対応することに尽きる」。八田氏は企業側の意識変革を促す。「的を射た提案であれば、経営陣はきちんと向き合い、説明責任を果たさなければ。はなからアクティビストを悪者扱いするのはもはや時代に合わない」」