ジェネリック医薬品の日医工(東証プライム)が、「事業再生ADR」を申請し、受理されたという記事。
「主力工場での品質不正問題で、令和3年3月に富山県から業務停止命令を受け、業績が悪化。4年3月期連結決算の最終損益が1048億円の赤字になったと開示した。
申請先はADRを扱う国認定の専門機関「事業再生実務家協会」。」
日医工 経営再建を目指し「事業再生ADR」の手続き申請(NHK)
「富山市に本社を置くジェネリック医薬品大手の「日医工」は、去年3月、国が承認していない工程で製造した、医薬品を出荷するなどの品質管理をめぐる問題で、富山県から業務停止命令を受け、業績が大きく悪化しています。」
ジェネリック医薬品の信用失墜招いた日医工、社長居座りで経営破綻(Business Journal)
現社長は拡大路線だったようです。
「田村社長は「売り上げ至上主義者」(日医工の関係者)とみられていた。M&A(合併・買収)を繰り返し、急成長を遂げる。04年、マルコ製薬の事業を引き継いだ(現・愛知工場)のを手始めに、08年、テイコクメディックスを子会社にした(現・埼玉工場)。14年、アステラス製薬子会社の工場を取得(現・静岡工場)。16年には米国市場を開拓するため、ジェネリック注射剤製造の米セージェント・ファーマシューティカルズを手に入れた。続く18年、エーザイの子会社のエルメッドエーザイを約170億円で買収。まず株式の20%を握り、19年4月、完全子会社にした。エルメッドエーザイの売上高は280億円。買収により日医工の国内シェアは15.8%となる。業界トップの沢井製薬をかわして1位の座を固めるのが狙いだった。」
現社長になってから、売上は、20年3月期には1900億円と19倍にもなったそうです。
「日医工はM&Aで自社にない医薬品を手に入れた結果、製品のラインアップは約1220品目にまで膨らんだが、これが足かせとなった。700品目後半の沢井製薬や東和薬品を6割程度上回る。他社が撤退した低採算の医薬品を多く製造していることから、規模の大きさが利益に結びつかないと指摘されていた。M&Aでひたすら規模を追い求めてきた拡大路線が、大規模な自主回収を繰り返し、業務停止命令を受ける原因となった。」
【詳しく】製薬会社の行政処分相次ぐ メーカーに何が?(更新)(NHK)
「全国の薬局や医療機関ではかつてない医薬品の供給不足が続いています。
発端はジェネリック医薬品メーカーで製造上の不正が発覚したことで、この1年余りの間に各地のメーカーが業務停止命令の処分を相次いで受ける異例の事態となっています。」
「協会(日本ジェネリック製薬協会)では不正が見つかった事案の検証も進めてきました。去年10月に発表した検証結果では「小林化工」や「日医工」の問題が起きた要因の1つとして「不健全な企業文化」があったとして次のように指摘しています。
「上位者の指示は絶対であって下からの問題提起が許されない風土」
「経営者は従業員を管理の対象としか考えておらず、育成の対象と考えていなかった」」
監査業界に当てはめると、ジェネリック=中小監査事務所、でしょうか。最先端の業務は狙わず、事務所の立地も地味で、グローバルネットワークへの上納金(特許料みたいなもの)もないので、低コストが強みですが、低採算クライアントが多く、待遇はさほど上がらない、たまに、品質不良を当局から指摘され、ひどい場合には業務停止処分を受けて、お手上げになってしまうといったところが似ています。もちろん、ジェネリック医薬品でも、きちんと経営している会社があるように、中小監査事務所も強みを活かしたまともなところが多いとは思いますが...。
会社のプレスリリース。
事業再生ADR手続の正式申込及び受理に関するお知らせ(PDFファイル)
同じ日に、2022年3月期の決算発表も行っています。
2022年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)
継続企業の前提に関する注記がなされています。
「(継続企業の前提に関する注記)
当社グループでは2021年4月以降、富山第一工場でのFMEA等での厳しい品質チェック等を行いながら、順次、生産・出荷を再開してはおりますが、同工場ではいまだ一部の製造予定品目については出荷再開には至っておりません。加えて、薬価改定による薬価引き下げや製造委託先での生産・出荷停止などに起因して製品売上が減少しております。このような状況を改善すべく当社グループの主力工場であります富山第一工場での製造品について、適正な生産体制・規模適正化を目的とし、製造再開に時間を要する製品の識別、同種同効成分製剤への統合、改善措置を図る製品の整理などの施策を実施しており、その結果、今後廃棄となる可能性が高いと見込まれる原材料、仕掛品等について評価損を計上致しました。更にこれまで進めてきた開発投資の見直しとそれに伴う海外子会社ののれんの減損及び国内収益状況減退に伴う国内固定資産の減損処理を行ったこと等から、当連結会計年度において109,970百万円の営業損失及び104,874百万円の親会社の所有者に帰属する当期損失を計上致しました。
以上のことから、多額の営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローの支出超過となっていることから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象等が存在する状況となっております。(以下省略)」
第3四半期までは付けていなかったようです。監査人はあずさです。
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