会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

2024 年 3 月期第 2 四半期報告書に係る四半期レビュー報告書の結論の不表明に関するお知らせ(東京産業)

2024 年 3 月期第 2 四半期報告書に係る四半期レビュー報告書の結論の不表明に関するお知らせ(適時開示より)(PDFファイル)(会社のウェブサイトには掲載されていないようです。)

東京産業(東証プライム)のプレスリリース(2024年1月15日)。

監査人であるあずさ監査法人から、2024 年 3 月期第 2 四半期の四半期連結財務諸表について、結論を表明しない旨の四半期レビュー報告書を受領したとのことです。

プレスリリースで引用されている四半期レビュー報告書の記載内容によると、問題は2つあり、ひとつ目は、長期未収入金の回収可能性(他の開示によれば太陽光発電案件の関連だそうです)、ふたつ目は、太陽光発電所建設請負工事案件の工事原価の問題です。一応別の事項として記載されていますが、どちらも太陽光発電がらみであり、関連があるのかもしれません。

「結論の不表明の根拠

追加情報(長期未収入金の回収可能性の評価等)に記載されているとおり、会社は、特定の仕入先に対する長期未収入金に対応する受入担保資産の一部が会社の承諾なく譲渡されていたことを受け、事実関係の調査及び財務諸表等への影響の検討等を目的として、2023年 11 月8日に外部調査委員会を設置している。

会社は、2024 年1月 15 日に外部調査委員会から受領した中間調査報告書の内容を踏まえ、長期未収入金の回収可能性を見直しており、前連結会計年度末において、長期未収入金4,453 百万円に対して 3,916 百万円の貸倒引当金を計上する必要があったと判断している。この長期未収入金の回収可能性を見直した影響は、前連結会計年度の連結財務諸表を訂正したうえで、当第2四半期の四半期連結財務諸表の比較情報である前連結会計年度の連結財務諸表に反映すべきところ、会社は当第2四半期連結財務諸表の期首の利益剰余金を減額している。

上記とは別に、追加情報(特定の太陽光発電所の建設請負工事案件に係る追加工事費用の会計処理)に記載されているとおり、特定の太陽光発電所の建設請負工事案件において、過年度より多額の追加費用を要する追加工事が発生しており、当該追加工事費用の負担について、会社と施主との間では追加工事費用として見込まれる金額の一部のみを施主が負担
する旨の大枠の合意が 2023 年6月にはなされていた。また、当第2四半期決算の過程で、会社は、当該工事案件を含む複数の太陽光発電所の建設請負工事案件に起用する下請先が二次下請への支払いができず、工事遂行が不可能なほどに資金繰りに窮している状況を認識した。このため、会社は追加工事費用の一部を負担すべき可能性及び工事原価総額に含め
るべき追加工事費用を適時かつ適切に集計していなかった可能性を認識した。

これを受けて会社は、建設請負工事案件において負担すべき追加工事費用が工事原価総額として適時かつ適切に集計及び見積もられていないことにより、売上高、売上原価及び工事損失引当金等の会計処理が適時かつ適切に行われていなかった可能性があると判断し、事実関係の調査及び財務諸表等への影響の検討等について、2024 年1月 15 日に外部調査委員会に追加調査を依頼した。

外部調査委員会による調査が継続しているため、当監査法人は特定の太陽光発電所の建設請負工事案件に係る会計処理の裏付けとなる十分かつ適切な証拠を入手できていない。当監査法人は、外部調査委員会による調査結果が当連結会計年度の第2四半期連結会計期間及び第2四半期連結累計期間に係る四半期連結財務諸表と比較情報との比較可能性に重要かつ広範な影響を及ぼす可能性があると判断している。

その結果、当監査法人は、会社の当連結会計年度の第2四半期連結会計期間及び第2四半期連結累計期間に係る四半期連結財務諸表に対して、結論を表明する根拠となる十分かつ適切な証拠を入手することができず、四半期連結財務諸表に重要な修正が必要かどうかについて判断することができなかった。」

2023年6月に施主との間で追加工事費用の負担について取り決めを結んでいたのに、その後の決算で工事収益や工事原価の見積りにそれを反映させていなかったとすれば、不正な会計処理ということになります。

結局、過年度財務諸表(原価に関しては当期も)に重大な影響がある事項が未解決のままなのに、見切り発車で当期第2四半期四半期報告書を提出してしまったようです。そういう状況では、監査人も不表明にしないわけにはいきません。

そもそも、重大な虚偽記載が含まれていることがほぼ確実なそういう四半期報告書を財務局は受理していいものなのでしょうか。

また、こういう場合、監査人は過年度財務諸表の監査報告書を撤回する手段はないのでしょうか。会社が監査報告書付訂正報告書を提出しない限り、過年度の財務諸表と監査報告書は、そのまま有効なものとして残ってしまいます。

2024 年 3 月期第 2 四半期報告書の提出完了に関するお知らせ(2024年1月15日)(PDFファイル)

「当社は、2023 年 11 月 14 日付け「2024 年 3 月期第 2 四半期報告書の提出期限延長申請に係る承認のお知らせ」にてお知らせしたとおり、2024 年 1 月 15 日を期限として 2024 年 3月期第 2 四半期報告書提出の延長承認を受けておりましたが、本日、当該四半期報告書を関東財務局に提出いたしましたので、お知らせいたします。」

「仮に、新規調査において他の不適切な会計処理等が発見された場合には、当該四半期報告書その他過年度の有価証券報告書等の訂正を行う可能性があります。」

外部調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ(適時開示)(2024年1月15日)(PDFファイル)(50ページほどの調査報告書が添付されています。)

外部調査委員会への新規調査の委嘱に関するお知らせ(適時開示)(2024年1月15日)(PDFファイル)

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