会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

関空2期島、完成遅らせ納税回避 土盛り60センチ残す(朝日より)

関空2期島、完成遅らせ納税回避 土盛り60センチ残す

関西国際空港会社が、関空2期島の用地のうち半分弱の分の工事を、完成直前で中断させているという記事。記事によれば、固定資産税の回避と支払利子の原価算入が目的だそうです。

「関空会社と子会社・関西国際空港用地造成会社(KALD)は、1999年から2期島の工事を始めた。うち291ヘクタールについては完成させ、2007年から第2滑走路や誘導路などとして運用を開始。将来は駐機場などに活用される残りの237ヘクタールも同年までに埋め立てをほぼ完了した。

 公有水面埋立法は、免許で指定された高さまで埋め立てた時点で、速やかに工事完了の手続きを行うよう規定。2期島の場合は標高7.5メートルが完成ラインで、必要な土砂も島内に搬入されていた。しかしKALDは、237ヘクタール分については最後の約60センチ分の土盛りを残して埋め立てを中断。その後は、護岸の一部で工事を続けている。」

「・・・2期島造成のため金融機関などから借り入れた資金の金利負担は、完成後は同社の費用として決算に計上されるが、造成中であれば一時的に別勘定(建設仮勘定)に入り、費用を実際より少なく見せる会計上の効果もあるという。」

支払利息の原価算入について、会計基準のレベルできちんと定めたものはありませんが、たぶん、会計士協会の「不動産開発事業を行う場合の支払利子の監査上の取扱い」という報告書が実務上の指針になっていると思います。

この報告書によれば、原価算入が認められる要件のひとつとして「正常な開発期間の支払利子であること」が挙げられています。本当にこの要件に合致しているのかどうかについて、会社は説明する必要があるでしょう。当然、監査人も検討しているはずです。

ちなみに、手元の参考書によれば、IFRSでも、開発活動が中断している期間は資産化(取得原価への借入費用の原価算入)を中止するそうです。意図的に一部の工事をだらだらと継続しているだけだとしたら、実質的には「中断」とみなすべきでしょう。

「関空会社の幹部は、朝日新聞の取材に「埋め立て中の部分は土地利用の見通しがまだ立っておらず、いま工事を仕上げる必要性はない。2期島は護岸工事などが継続しているため、建設仮勘定で会計処理している。黒字にすることを念頭にしているわけではない」と話した。」

利用見込みが立っていないために、あえて工事を完成させないのであれば、「中断」と判断せざるを得ません。
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