IASBが、金融商品の時価評価方法に関して、米国会計基準と比べ不利が生じないよう規則の一部を緩和したという記事。
「企業が保有する金融商品などは売買目的の場合は時価評価が必要だが、満期保有などの場合は評価額をすぐに変えなくてもよい。国際会計基準では「売買目的」から「満期保有」などへの区分変更を認めていなかったが、米国会計基準では長期保有する際などに区分変更を認めるケースがあった。このため、国際会計基準も米国に合わせる形で、7月1日にさかのぼって区分の振り替えを認めることにした。」
IASBのサイトをみると、金融危機関連で、13日と14日にプレスリリースが出ています。13日のプレスリリースで、この日経記事でいっている区分変更のことにふれています。
たしかに、満期保有目的であれば償却原価法で評価されるので、時価評価の対象からは外れることになります。ただこれで救われるのは、満期になれば額面金額が回収できる債券だけです。本当に価値が下がってデフォルトになってしまうような債券は、評価減が必要です。
IASB amendments permit reclassification of financial instruments(10月13日のプレスリリース)
14日のプレスリリースでは、活発ではない市場における時価の算定について取り上げています。これも、時価とは何かという大きな問題にもつながるテーマですので、重要なものだと思います。
IASB provides update on applying fair value in inactive markets(10月14日のプレスリリース)
「Amongst the issues discussed at its meeting on 10 October, the Panel agreed to emphasise that the objective of a fair value measurement is the price at which an orderly transaction would take place between market participants on the measurement date, not the price that would be achieved in a forced liquidation or distress sale. The Panel reaffirmed that such transactions should not be considered in a fair value measurement, whilst also noting that even in times of market dislocation not all market activity arises from forced liquidations or distress sales.」
「時価は市場参加者間の正常な取引において成立するであろう価格であって、強制的な清算や投げ売りにおいて成立するであろう価格ではない。しかし、市場が混乱している時期であっても、すべての市場活動が強制的な清算や投げ売りから生じているものではない。」
後半部分は、今のような状況であっても、時価算定において実際の取引価格を無視すべきではないという趣旨でしょう。
米銀行協会、時価会計に関するFASB新指針を批判
当サイトの関連記事
http://ivory.ap.teacup.com/kaikeinews/2897.html
(補足)
保有区分の振替は時価で行うことになっています。「7月1日にさかのぼって区分の振り替えを認める」というのは、12月決算会社の第3四半期(3月決算であれば第2四半期)期首の時価で振り替えるということになり、現時点の時価(おそらく7月1日よりは下落している)で振り替えるよりは、損失計上が少なくてすむのかもしれません。
最近の「企業会計」カテゴリーもっと見る
大成建設が元会長から訴えられていた! 名誉顧問・山内隆司氏が16年間率いた会社を提訴した理由「社長のイエスマンしかいない。このままでは…」(文春オンラインより)

《ヤマダHDの不可解対応、中国人逃亡犯の影も》家電ネット販売「ストリーム」株主総会での“乗っ取り劇”全内幕(文春オンラインより)
宣誓書違反による再審査に係る猶予期間入り及び上場契約違約金の徴求:(株)サンウェルズ(東京証券取引所)
「東証上場会社 コーポレート・ガバナンス白書2025」の公表(東京証券取引所)

ASBJにのれんの償却見直しを要請へ 内閣府、のれんの償却費がスタートアップ企業のM&Aを阻害(T&Amasterより)

EY新日本、単体決算の監査手続きを補助するシステムがfreeeアプリストアに掲載(新日本監査法人)
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2000年
人気記事