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会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

四半期決算の義務付け廃止を 関経連が緊急提言(SankeiBizより)

四半期決算の義務付け廃止を 関経連が緊急提言

関西経済連合会が、企業の四半期開示の義務付けを廃止すべきだとする緊急提言を発表したという記事。

「提言では、金融商品取引法で平成20年から義務化されている四半期決算の開示について「企業ごとの実態を考慮せず、短期的かつ一律的な財務情報の開示を促す制度であり、企業経営者や投資家の短期的利益志向を助長している」と指摘した。」

「その上で、「3カ月ごとの決算開示に膨大な人的資源を投入する現行の制度は、人的資源の効率的投入や長時間労働の是正の観点からも問題がある」などとして、義務付けを廃止すべきだと主張している。」

経団連は、四半期短信と四半期報告書の一本化(四半期短信は残す?)という意見が主流のようですが、関経連は、一本化では生ぬるいということなのか、義務付け廃止(四半期決算短信も任意化?)という主張のようです。

提言書はこちら。

「四半期開示制度の義務付け廃止に向けた緊急提言」の取りまとめについて(関経連)(PDFファイル)

「わが国伝統の経営哲学や多様なステークホルダーを重視する世界的な潮流を踏まえると、企業ごとの実態を考慮せず、短期的かつ一律的な財務情報の開示を促す現行の四半期開示制度は、企業経営者や投資家の短期的利益志向を助長しているとの懸念があることから、開示の義務付けは廃止すべきである。」

「投資家・アナリストを公開ランキングなどでクラス分けした場合に、高いクラスにあるとみなされる投資家・アナリストほど、投資に際して四半期開示を重視しない状況においては、むしろ、中長期の視点で企業を評価するような制度を整備し、それに基づき企業の取組みを促す仕組みが求められる。加えて、3カ月ごとの決算開示に膨大な人的資源を投入する現行の四半期開示制度は、人的資源の効率的投入や長時間労働の是正の観点からも問題であると考える。」

「現在、四半期開示の見直し議論では、四半期決算報告書と四半期決算短信を一本化し、監査人によるレビューを義務付けるといった議論も見受けられるが、これでは四半期開示の見直しが十分に実現しないものと考える。」

一本化論者も、一本化した場合にレビューをどうするかについては、まだ議論していないように思われます。実務上、短信に一本化した場合には、開示スケジュール的にレビューは無理なのでは。

また、任意化された欧州の状況は...

「欧州では 2013 年に四半期開示義務が廃止されて以降、任意で四半期開示(財務諸表付き)を続けている上場企業は英国やフランスではほとんど存在せず、ドイツでは半数程度との調査結果がある。」

この研究です。

「早稲田大学教授のスズキトモ氏の研究室における調査(2022 年1 月)によると、欧州において、四半期開示の廃止以降、わが国同様に損益計算書および貸借対照表の両方を任意で開示している上場企業の割合は、英国で 7.8%、フランスで4.0%にすぎない。また、ドイツでは上場企業のうち 53.2%が任意で開示を続けているが、上場企業全体約570 社のうち半数程度が開示を義務付けられているプライム市場の区分の企業であるからにすぎない。」(脚注より)

当サイトの関連記事(経団連と金融庁の意見交換会について)

その2(早稲田の学生による四半期開示見直しに関する日経投稿欄への記事について)(関経連の提言で参照されている調査と関係がありそうです。)

こちらは、首相のブレーンだといわれている人物へのインタビュー記事。

株主偏重の転換を、「新しい資本主義」へ具体案必要=原・元内閣府参与(ロイター)

「「株主資本主義」から「公益資本主義」への転換を訴える原氏は、岸田首相が外相だったころから交流。分配を重視する岸田氏の経済政策「新しい資本主義」に影響を与えたとされる。」

「岸田氏が昨年の自民党総裁選の公約に掲げた四半期決算開示見直しも、首相が期待した方向には議論が進んでいないと原氏は指摘。「私が岸田総理に提案して公約に入れた。これは今、自民党内で明確に廃止を唱っておらず、岸田さんはいらいらしていると思う」と語った。」

日本の首相はプーチンではないので、いらいらしているからといって忖度する必要はないでしょう。きちんと議論してから決めるべき。

(補足)

関経連の提言でもその調査が参照されているスズキ・トモ教授へのインタビュー記事。

四半期開示、目標は達成できず 「見直しは新しい資本主義に合致」(日経ビジネス)(記事冒頭のみ)

海外では四半期開示はなお主流との指摘もあるようですが。(金融庁の金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループの2月18日の資料では、英・仏の6割・8割で四半期開示が継続しているという)

スズキ氏:事実誤認で、ミスリーディングなデータだと思います。日本の四半期開示制度と比較して制度の議論をするためには、少なくとも損益計算書(PL)・貸借対照表(BS)を含む開示を対象にすべきですが、欧州でそうしたレベルの開示をしている企業はほとんどありません。金融庁のデータが「開示している」というのは、いわゆる「経営者ステートメント」です。A4数枚の簡単なコメントで、PLもBSもなければ監査も伴わないものです。」

金融庁は事実誤認でミスリーディングな資料で議論していた?
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