(1週間ほど前の記事ですが)金融庁長官にスルガ銀行の事件について聞いたインタビューをまとめた記事。反省すべきを反省すると言っていますが...
「金融庁の遠藤俊英長官(59)は9日の朝日新聞のインタビューで、シェアハウス融資などで多数の不正が発覚して一部業務停止命令を出したスルガ銀行(静岡県沼津市)について、「(不正の)端緒を次のステップに結びつけられなかった」とし、「今回の事案を真摯(しんし)に受け止めて、反省すべきを反省する」と語った。今後は内部告発などの情報を詳しく調べるなど、検査の体制を見直す。」
なぜ検査で指摘できなかったのかについて、ちらっとふれています。
「スルガ銀のシェアハウス融資をめぐる不正は今年初めに発覚した。ただ金融庁には不正に関する情報やシェアハウスを巡る苦情がそれ以前から寄せられていたという。「『点』だった情報を『線』でなぜ結びつけられなかったのか精査しないといけない」とし、「何が金融庁に欠けていたのか、スルガ銀がこれほどひどい状況になる前にどうすれば対応できたのか、改めて体制を構築する。第三者の目で取締役会の議論を確認し、経営者の目指す理念や戦略が営業の現場で生かされているかも検証していく」と語った。」
不正に関する情報が金融庁まで届いていたのに、検査に生かされなかった「根本原因」は何だったのでしょう。外部の専門家を入れて、徹底的に検証すべきでは。
金融庁長官「スルガ銀の苦情あったが、端緒深められず」(朝日)(記事冒頭のみ)
検査チームが無能だったような言い方です。
産経の論説記事は、金融庁に対して厳しいことをいってます。
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【一筆多論】不正許した金融庁の責任(産経)
「ただ、そうだとしても今回の処分には釈然としない思いが残る。これほどの不正がありながら見抜けなかった金融庁の責任だ。果たして金融庁にスルガ銀を断罪する資格があるのか。
もちろん、そう考えるのは、個人向けに軸足を置いて高成長を続けたスルガ銀を「地銀の優等生」と持ち上げてきたのが、他ならぬ金融庁だったからだ。
森信親前長官が昨春の講演で「特異なビジネスモデルで継続して高い収益を挙げている」と礼賛したことはよく知られる。こうした金融庁の姿勢が暴走を煽(あお)った面はなかったか。
「金融庁は昨年、カードローンに特化した立ち入り検査を行った。5、6年前も2度の検査を実施した。いずれも今回不正が発覚した投資用不動産向け融資は対象ではなかったが、それは言い訳にならない。
経営を直接調べる機会を生かせず、異様な実態を放置したのである。業界内では、突出した高収益を出すスルガ銀の不自然さを指摘する声が以前からあった。これを拾い上げて質(ただ)す責務を怠っていたのなら、あまりにも手ぬるい。」
「まずやるべきことは、スルガ銀に対する「不作為」を自ら徹底検証することだ。森氏は7月に退任し、米コロンビア大学国際公共政策大学院で教壇に立つというが、これで終わりにするわけにはいかない。スルガ銀を持ち上げた責任について語るべきだ。」
こちらはスルガ銀行に対して厳しい記事。
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スルガ銀行に「退場の道」を用意せよ(DOL)
「スルガ銀行の不正は、大規模であり意図的なものだ。率直に言って、処分は軽すぎるのではないか。
スルガ銀行にとって、投資用不動産への融資は、預金額のざっと半分の1兆9000億円にも及ぶ残高を持つメインのビジネスなので、これを半年間止められることは痛手にはちがいないが、もともとこのビジネスをこれ以上拡大するのは危険すぎる。
直接の比較は難しいのだが、筆者の頭に浮かぶのは、山一證券の「自主廃業」(決定は1997年11月。廃業は1998年3月末)だ。山一は、二千数百億円に及ぶ含み損を「飛ばし」ていたことで、当時の大蔵省はこれを許せないと判断して廃業させることにした。
スルガ銀行は、銀行の信用で預かった預金を、十分な返済能力のない先に意図的に貸し込んでいたのだから、銀行として最もやるべきではない種類の犯罪に大規模かつ組織的に手を染めていた。山一證券の「飛ばし」に十分匹敵する悪事ではないかと思うのだが、どうだろうか。
一時、スルガ銀行のビジネスモデルを賞賛していた前金融庁長官の森信親氏、また不正が行われた時期に検査局長、監督局長を務めた現長官の遠藤俊英氏の責任を問う声もある中で、金融庁がスルガ銀行に厳しい処分を下すのはやりにくいのかもしれない。しかし、これだけの事実が明らかになったのだから、手の平を返すように厳罰を下してもいいのではないか。その方が、金融庁への評価はむしろ改善するのではないか。」
家賃保証 実勢の2倍超も スルガ銀シェアハウス問題
将来性 過大評価し算出 高額契約促す材料に (日経)(記事冒頭のみ)
ところで、最近読んだこの本(少し前の本です)によると、大手都市銀行でも、パワハラ的ノルマ強要、顧客無視の営業、融資先の粉飾決算の黙認(粉飾決算書類に基づく融資)、震災保証融資のための書類改ざんなどが横行していたそうです。スルガ銀行ほどの悪質さはなかったとしても、共通する部分が多いように思われます(虚偽書類による融資という点など)。
(この本自体は、特捜部の実績作りの犠牲になった中小企業経営者とコンサルタントを取り上げています。まったく「ひどい捜査」だと感じました。)