日本公認会計士協会は、監査時間数や監査報酬などを調査した「監査実施状況調査(平成23年度)」の概要を公表しました。
平成23年4月期から平成24年3月期までの監査が対象です。
さまざまな種類の監査について調査していますが、そのうち「金商法(連結あり)」をみてみると、1社当たり平均監査報酬46,334千円(前年度47,854千円)、時間当たり平均単価 11,686円(同12,641円)となっています。前年度と比較して、平均報酬額、単価とも低下しています(平均報酬は3.2%減、単価は7.6%減)。
監査報酬総額(「金商法(連結あり)」)も150,261百万円(前年度157,008百万円)となり、約4.3%減です。
単価が大幅減となったのは、大手監査法人が請求単価の高い社員や職員を大量リストラした影響もあるのでしょうか。(リストラしたので低い報酬を提示できるようになったのか、あるいは、低い報酬になったのでリストラしたのか、どちらの要因もあるとは思いますが)
しかし、下落幅からすると、ダンピング競争で報酬が急落しているというほどの状況でもないと思われます。デフレ経済下ではこれが常態かもしれません。
本当に厳しい競争が行われた場合、監査報酬はどこまで下がるのでしょうか。監査区分別の調査結果をみると、時間当たり平均単価が、独立行政法人は10,176円(金商法(連結あり)の87%)、国立大学法人等は9,126円(同78%)となっています。独立行政法人や国立大学法人は、何年かおきに入札で監査人を決めており、かなり厳しい競争が行われているといえます。これらの監査の単価が金商法監査より1割あるいは2割低いのは、競争ののためだとすると、今後、定期的に入札で監査人を決めるような慣行あるいは制度となった場合には、1割~2割は単価が下がるのではないかと推測されます。(独立行政法人などは倒産のリスクがないだけ低くなっているという理由も考えられますが、倒産リスクは時間単価ではなく時間数に反映されていると考えました。)
当サイトの関連記事(平成22年度調査について)
「監査実施状況調査」は協会に提出された監査概要書(写)や監査実施報告書により調査したものですが、会計・監査ジャーナル2013年3月号には、有価証券報告書に開示されたデータをもとにした監査報酬の実態調査について解説が掲載されています(「監査報酬の実態調査結果について」)。
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