会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

2018 年8月期第1四半期報告書の提出期限延長に係る承認申請書提出及び承認のお知らせ(メタップス)

2018 年8月期第1四半期報告書の提出期限延長に係る承認申請書提出及び承認のお知らせ(PDFファイル)

東証マザーズ上場のメタップスが、2018 年8月期第1四半期報告書の提出期限延期を申請し、承認されたというプレスリリース。延期されたのは財務局に提出する四半期報告書だけで、四半期の決算発表については、15日深夜に実施済みです。

延期理由は...

「当社の連結子会社である Metaps Plus Inc.(韓国)は、2017 年9月 26 日から 10 月 10 日を販売期間として、ICO(注)を実施しました。(一般に、ICO とは、企業等が電子的にトークン(証票)を発行して、公衆から資金調達を行う行為の総称です。トークンセールと呼ばれることもあります。(「ICO について~利用者及び事業者に対する注意喚起~」2017 年 10 月27 日金融庁より))。Metaps Plus Inc.は、当該 ICO により、新規発行トークンであるプラスコインの販売を実施し、その対価として仮想通貨の一種であるイーサリアムを受領いたしました。また、Metaps Plus Inc.は、2017 年 11 月 11 日に、韓国における仮想通貨取引所“CoinRoom”を設立し、同取引所において、当該 ICO における新規発行トークンであるプラスコインの取引を開始しました。

韓国における ICO をめぐって、2017 年9月ごろから、ICO に対する規制について報道や発表がたびたび行われています。現段階において具体的な規制内容は決まっておらず、当社としては、本 ICO 及び“CoinRoom”への影響は限定的と考えているものの、例えば 2018 年 1 月11 日に韓国政府が「仮想通貨取引禁止特別法」を準備していると発表したといった報道がなされており、継続的にこれらの最新の情報に基づく評価を続けています。

監査法人は、当該 ICO や関連するトークン、仮想通貨取引等に関し、ICO という行為の新規性、関連する技術基盤や法律関係・規制における特殊性やリスク、対応する当社の内部統制等を踏まえ、IFRS に基づく貸借対照表項目、損益及び開示について、四半期レビュー基準に基づく手続を実施しており、入手した証拠や法・規制や技術に係る直近時点の情報を踏まえた評価を完了していません

監査法人からは、具体的には、レビュー意見日後の韓国における法制度に関する議論を踏まえた当該 ICO の法律関係・規制についての状況把握と内容の検討に、2週間から3週間要するとともに、仮想通貨の実在性やセキュリティに関して、現在、当社が構築している内部統制の状況から2週間ほど検討に要すると説明を受けております。
(以下省略)」

このプレスリリースでも最近の状況も含めて説明はしていますが、去年9月から10月にかけて実施した取引に関連するリスクや内部統制を、いまごろ調べているというのは、ちょっと不自然です。

(前期の有報を見ると、監査人はあらたのようです。)

ICOの会計処理に関するプレスリリースも出しています。

(開示事項の経過)当社連結子会社の ICO に伴う会計処理について(メタップス)(PDFファイル)

「本 ICO は、仮想通貨 Pluscoin(PLC)の販売であり、本 ICO において受領した対価は収益として認識いたします。但し、収益認識の方法やタイミングについては引き続き協議中ですが、本四半期においては、監査法人との協議の結果、受領した対価の全額を負債(前受金)として計上するのが妥当であると判断しております。

本 ICO において受領したイーサリアム(ETH)をはじめ、保有する仮想通貨については、四半期末時点の公正価値評価を行わず、取得原価をもって無形資産または棚卸資産(“CoinRoom”の保有分)として計上します。当該無形資産は、売却時に簿価との差額を損益計上いたします。また、当該棚卸資産は、売却時に売却価額を売上高、帳簿価額を売上原価に計上いたします。仮に仮想通貨の処分見込価額が取得原価を相当程度下回った場合は該当会計期間において差額を費用として認識いたします。

自社保有分の PLC については、帳簿価格 0 円として無形資産または棚卸資産として計上いたします。」(“CoinRoom”は韓国子会社が設立した仮想通貨取引所)

発行した仮想通貨が、会社にとって何らかの義務を表すものではないとすれば、負債に計上する必要はないということになり、対価として受け取った仮想通貨(このケースではイーサリアム)の金額(=受領時の時価?)がまるまる利益という、まさに錬金術のような取引ということになります(仮想通貨発行にかかった経費があるでしょうから実際には丸儲けではないのでしょうが)。さらに、受領した仮想通貨を保有し続け、その時価が上がった場合には、評価益も計上できます。

そんなうまい話が本当にあるのか、監査人として慎重に調べたくなるのもわかります。会社が発表した決算では、まだ利益計上はしていないようですが、会社説明によれば、タイミングの問題だけなので、いずれは利益に計上するつもりなのでしょう。

メタップス、深夜に決算発表 仮想通貨イーサリアムは価値5倍も時価評価せず(ダイアログニュース)

「メタップスは韓国の子会社が仮想通貨技術を使った資金調達(イニシャル・コイン・オファリング=ICO)を2017年9月26日から2017年10月10日を販売期間として実施した。

プラスコインというICOにより調達した資金は貸借対照表(BS=バランスシート)で資産側は無形資産、負債側は預り金と計上していったんは収益には反映させなかった。

メタップスはイーサリアム(ETH)をはじめとする仮想通貨を保有しているものの、四半期末時点では時価評価を行わず取得価格で評価したという。

メタップスはICO完了時には時価で10億円相当のイーサリアムを受理、価格は直近で約5倍になったと主張している。」

当サイトの関連記事(ICOのリスクなどについて)
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