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会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

日航:歴代経営者の法的責任追及は困難 コンプラ調査委(毎日より)

日航:歴代経営者の法的責任追及は困難 コンプラ調査委

日本航空の「コンプライアンス調査委員会」が、「経営判断や企業統治の問題はあるが、歴代経営者の法的責任は認めがたい」とする報告書を公表という記事。

「報告書は、旧経営陣の責任について「財務改善や大胆なリストラの先送りなど、経営者の不作為が要因で破綻(はたん)に至った」と厳しく批判した。ただし、会計データの一部が開示されないなど調査対象が限定されたこともあり、粉飾決算や違法配当など法的責任につながる事実は確認できず、「刑事、民事上の責任は問えない」と結論づけた。」

更生計画案の提出等について(調査報告書の要旨が含まれています。)

「会計処理事項の検討結果」という項目で、マスコミ報道がなされた会計上の論点をいくつか取り上げています。(ただし、「本調査は、会計監査人の監査結果を論評するものではない」という断り書きがついています。)

そのなかでも特に詳細に検討がなされているのが「機材購入時の「クレジット・メモ」の利益計上」の問題です。

クレジット・メモとは、航空機等の売主が買主に与える金銭的な利益またはそれを通知する書面である。JALI は、このクレジット・メモのうち日本型レバレッジド・リース取引(以下「JLL 取引」という。)から発生し受領したものを「機材関連報奨額」として営業外収益に計上した。具体的には、リース会社がクレジット・メモ相当額控除前のカタログ価格で機材を取得したので、JALI は航空機メーカーからの機材調達価額とリース会社への機材売却価額との差額を受領し、営業外収益に計上したものである。」(JALI:日本航空インターナショナル)

この取引に関してこの委員会は以下のような見解を述べています。

「・・・機材に係るクレジット・メモ相当額について、JALIの会計処理は、機材リース組成時に一括して利益計上し、後にリース期間に応じてリース料に跳ね返って費用を計上する結果となっており、収益の実現という点で疑問なしとはしない。合理的な会計処理の考え方により、リース組成時の一時の収益計上とせず、負債(前受収益)として繰り延べ、リース期間にわたりリース料を減額する処理の方がより健全な処理である。」

しかし、この会計処理について、経営者に法的責任があるということはできない(すんなり責任はないとは言わずに二重否定で書いています)という結論になっています。

「・・・少なくともJALI が当該会計処理を行っていた時点において、当該会計処理とは異なる会計処理を必ず採用しなければならないとの国内航空業界の会計慣行が形成されていたとまでは認めることができない。これらの事情や、クレジット・メモをめぐる会計処理の問題が事実の存否ではなく評価の問題であって、企業が従うべき公正な会計慣行が一定の幅のある概念であることなどを考慮すると、当該会計処理の採用によって、JALI が有価証券報告書に虚偽の記載をしたと断定することは困難である上、担当した会社役員らに虚偽の認識があったとも認められない。」

「・・・クレジット・メモの会計処理を担当した会社役員や担当者らに、刑事上及び民事上の法的責任があるということはできない。」

この報告書の結論自体はおそらく妥当なものなのでしょう。しかし、機材を買っただけで利益が出るというのは、だれが見てもおかしな処理です。それが業界の会計慣行ということで長年にわたって容認されてきたという点に、日本の会計制度の弱点があります。

日航が152億円で買った土地、価値は24億円 和歌山(朝日より)

この件も報告書で取り上げられています。以下のような結論です。

「本件土地の購入に関する根拠が不明であり、不当に高額で本件土地が購入された疑いが存するものの、既に本件土地の取得から約19 年が経過しており、本件に関する社内資料からは当時の土地取得の具体的な経緯が明らかとはいえないこと、その後の航空行政の変更や路便の縮小等が事業計画の見直しに与えた影響も大きいこと、当時は不動産バブルの最盛期であり一定の面積の土地を取得するには困難な事情もあったことが推測されることなどを総合すると、現時点で当時の取締役に法令上の義務違反があったと評価することは困難である。」

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