IASBがのれんの会計処理について減損のみのアプローチを維持することを議決したことを取り上げた解説記事。
「国際会計基準(IFRS)を開発する国際会計基準審議会(IASB)は24日、のれんを定期償却しない現行ルールの維持を決め、長年の議論が一応の区切りを迎えた。「のれんと減損」を主題とする理事会では、「コストがかかる」「耐用年数を見積もれない」など、定期償却をルール化する難しさを指摘する声が相次いだ。」
日本は、のれん償却を主張していたので、「議論の様子をオンライン視聴していた日本の会計業界関係者は肩を落とした」のだそうです。
米国のFASBの動きが影響したそうです。
「収束の見えない議論の中で現行のルール維持に傾いたのは、上場企業にのれん償却を導入する方向だった米財務会計基準審議会(FASB)が、今年6月に突如議論を打ち切ったことも大きい。基準間の差異を縮める「コンバージェンス」を重視してきたIASBにとって、償却再導入の大きな動機を失った。」
日本の基準への影響も...
「監査法人トーマツの鶯地隆継パートナーは「企業から『日本も今の償却ルールを見直すべきではないか』という議論が出てきてもおかしくない」と語る。平時の利益を押し下げる償却ルールのせいで、海外企業と同条件で競争できないという不満はくすぶっていた。」
IASBは、開示充実の方向で検討するそうです。
「会計処理の議論に区切りを付けたIASBは、情報開示の充実という別の道を探る。9月にはM&A(合併・買収)に関する開示の充実を暫定決定した。実施がどんな戦略的な根拠に基づいているか、目的がどれくらい達成されているか、目的達成度を測るための指標、期待されるシナジーの定量的開示といった項目が対象になりそうだ。」
細かい見直しならともかく、定着した会計基準を大きく動かすのは、たいへんなのでしょう。
単純に考えると、「減損のみ」よりも「償却+減損」の方が、検討すべき要素が増えるわけですから、難しいはずです。日本基準は、「減損」の基準があまいから、IFRSや米国基準より楽なように感じるのかもしれません。
記事の別の箇所ででいっているように、のれんの残高が膨れあがっているのは、経済全体でみれば、リスクが高いでしょう。償却する方が健全な会計処理ですが、償却したからといって、償却年数20年の場合、10年たってものれん残高は半分にしかならないわけですから、本来は、日本基準も厳密な減損処理の基準を決めるべきでしょう。