会計士、志願2倍でも監査法人離れ 企業の引き合い強く(記事冒頭のみ)
(9月21日の日経朝刊1面に載っているものですが)公認会計士試験の志願者数は増えているのに、監査法人で働く会計士の割合は下がっていて、監査の担い手増につながっていないという記事。日経には、以前にも同じような記事が載っていました(→当サイトの関連記事)。
「公認会計士試験の志願者数が増えている。2015年を底に23年までの8年間で倍増し、12年ぶりに2万人台に乗った。非財務情報の開示強化や国際的な会計基準対応などで企業の需要が強く就職や転職しやすいためだ。一方、監査法人で働く会計士は10年間で5割から4割に下がっている。」
監査法人所属会計士の割合などは、7月に公表された公認会計士・監査審査会のモニタリングレポート(→当サイトの関連記事)に基づいた数字なのでしょう。
・志願者数は、新試験制度移行後の最低だった2015年から倍増。合格率は10%前後で難易度は変わらず。
・志願者数増の要因は、新型コロナ特需(予備校関係者)、試験に合格すれば確実に大手監査法人で働けることが伝わっていること(公認会計士・監査審査会)。
・合格者の9割強はまず監査法人に就職。転職の道も多い。
・企業側も会計士資格者を求めている。
・監査法人で働く会計士の比率は、10年で10ポイント以上下がり、40.6%(2023年3月末)。
・監査業務の負荷は重くなった。待遇面で一般企業に転職する会計士も増えている。
・働き方改革を通じて監査業務の魅力を高めることが必要。
といった内容です。
日経の主張が間違っているわけではないのでしょうが、監査法人(特に大手)が会計人材の育成・輩出機関だとすれば、監査法人在籍者の比率が低くなっているからまずいということはないでしょう。日本の大手がお手本にしていると思われる海外ビッグ4事務所は、もっと勤続年数が短く、人材の流動化が進んでいるのでは。
監査は、ITや非資格者の活用で、何とかこなしていける可能性があります(AIはまだたいした効果はないと思われますが)。監査法人も、退職率が高すぎて仕事が回らなくなるのはこまるのでしょうが、いつまでも監査法人にしがみつかれるのもいやだというのが本音かもしれません。十数年前の大リストラ期に、大手監査法人はずっと働き続ける場ではないという考え方が、業界に浸透したのでしょう。もちろん、そういう考えの裏をかいて、監査一筋で、監査法人に勤め続けるという道もありえます。
こちらは、この1面記事を少しやさしく書き直したもの。
「公認会計士になるには試験に合格した後、3年以上の実務経験が必要です。経験を積むため、試験合格者の9割強はまず監査法人に就職します。しかし、監査法人で働く会計士の比率はこの10年で5割から4割に下がりました。企業の開示情報の拡充に伴い、監査業務の負担が増していることが大きな理由です。報酬など待遇を理由に、コンサルタント業や税務関連へ転職する会計士も増えました。」
「人気の高い資格が監査の担い手増加につながらないのは市場にとってマイナスです。人工知能(AI)を活用した効率的な監査を取り入れるなど、働き方改革を通じた魅力を高めることが先決となるでしょう。」