中国恒大集団の監査をめぐり、香港の監督当局が、監査人であったPwCを調査するという記事。
「香港の会計・財務報告局(AFRC)は19日、中国不動産大手の中国恒大集団(3333.HK)に関するプライスウォーターハウスクーパース(PwC)の監査業務を調査すると発表した。メディアで伝えられている内部告発の内容が対象になる。
香港上場企業の監査を行う会計士の監督機関であるAFRCは声明で、報道によって、中国恒大の監査の質を巡ってPwCの組織に欠陥が存在するのではないかとの重大な懸念が明らかになっていると述べた。」
上記記事原文。
Hong Kong's audit watchdog to investigate PwC audit role in Evergrande(ロイター)
香港当局、PwCを調査 中国恒大集団の監査で内部告発(日経)(記事冒頭のみ)
「PwC幹部が中国恒大の不正会計を看過したとする内部告発が調査対象となっている。
AFRCは会計事務所や会計士を監督する法定機関。」
香港の新聞(ウィキペディアによるとアリババが保有しているようです)の記事。
Hong Kong accounting watchdog initiates probe into PwC audits of bankrupt developer Evergrande(サウスチャイナ・モーニング・ポスト)
当局は、処分を行うことに躊躇しないといっているそうです。
Hong Kong’s accounting watchdog said it will investigate accounting firm PwC for alleged auditing fraud related to bankrupt Chinese developer China Evergrande Group, adding that it would not hesitate to take enforcement action.
内部告発は、PwCの品質管理システムと恒大集団の監査に質に不備の懸念があるという匿名の書簡だそうです。
An anonymous letter expressed concerns regarding potential alleged deficiencies in PwC’s systems of quality management and the quality of Evergrande’s audit, the AFRC said.
もう少し具体的には、有効な品質管理システムの確立・維持ができていなかったこと、恒大集団とのクライアント関係を行う際に専門的基準に準拠していなかったこと、主要な職位への人員配置が不十分だったこと、恒大集団の監査手続が不十分だったことなどです。
The AFRC noted that the allegations made by the whistleblower include PwC’s failure to establish and maintain an effective system of quality control, non-compliance with professional standards when conducting client relationships with Evergrande, inadequate personnel assignments in key positions, and insufficient audit procedures for Evergrande’s audits.
記事を読む限りでは、品質管理や監査手続の不備を指摘しているだけであり、意図的な不正(例えば、虚偽記載があると知っていて何もしなかった、会社からわいろを受け取っていたなど)があったという告発ではなさそうです。
PwCは、すでに、告発に対して、反論しているそうです。告発は、明らかに事実に反しており、この虚偽情報の出所を調べるための手段を執るとPwCは述べているそうです。
The move came after PwC refuted the accusations in the letter. On Tuesday, PwC said that the claims were “clearly contradictory to the facts” and that it has taken measures to investigate the origins of the “false information”.
この記事の下に、少し前の4月16日付記事も掲載されています(China Evergrande: PwC refutes letter claiming fraud tied to indebted developer, vows to investigate ‘fabricated’ claims)。
それによると、「誰がPwCを恒大という火の中に引きずりこんだのか」と題する匿名の書簡が、今週(現時点からすれば先週)、中国のソーシャルメディアに出回り始めたそうです。
The anonymous letter, titled “Who dragged PwC into the fire pit of Evergrande”, began circulating on Chinese social media earlier this week.
PwCは、公式WeChatアカウントに、反論を投稿したそうです。
The claims made in the letter against the auditing company and its partners were “clearly contradictory to the facts” and had “severely encroached upon PwC’s business reputation and legal rights, causing adverse impact”, PwC said in a post on its official WeChat account on Tuesday.
当局がPwCを調べているというのは、先月報じられていました(→当サイトの関連記事)。
いずれにしても、恒大集団の巨額粉飾決算が本当だとすれば、監査人であったPwCは(最終年度は(意見を出さずに?)退任したとはいえ)無傷ではいられないでしょう。
万一、PwCが中国や香港から追放されるようなことがあったら...
かつて、PwC傘下の中央青山を日本の金融庁が消滅させたという歴史もあります。