LIXILグループの決算発表の記事。
「LIXILグループ(5938)は8日、2016年3月期の連結純利益が前期比86%減の30億円となる見通しだと発表した。破産手続きに入った中国の水栓金具子会社「ジョウユウ」の債務保証の330億円を特別損失に織り込んだ。」
「同日発表した15年3月期の純利益は前の期比5%増の220億円、売上高は3%増の1兆6734億円となった。」
当サイトで先日もふれましたが、この債務保証の損失が2016年3月期の損失になるというのが、よく理解できないところです。
2015年3月末時点で問題の子会社に関連して債務保証を行っていたのであれば、当然、2015年3月期決算で損失を見積もって計上しなければなりません。
報道によれば、2015年3月期中に、問題の子会社(当時は関連会社)の事業に対して、日本のメガバンクから融資が行われており、常識的には、その時点で、メガバンクに対して、会社が責任を負うという何らかの約束がなされたと推測されます。その形態は、債務保証ではないのかもしれませんが、会計士協会の実務指針によれば、保証予約や経営指導念書等であっても、債務保証と同様に扱う場合があります。
しかし、会社は、2016年3月期の損失としています。ということは、今年の4月以降に債務保証を行ったことになりますが、4月の段階では、すでに問題の子会社が危ない財政状態であったことはわかっていたはずですから、普通であれば、新たに債務保証をするはずがありません。したとすれば、それは、債権者である銀行への贈与(寄付金)であり、会社への背任行為しょう。
平成27年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)(PDFファイル)
ジョウユウ関連の損失600億円超(見込み)のうち、債務保証分300億円超は未計上であり、約240億円は過年度訂正で2014年3月期の損失としているので、2015年3月期には100億円程度しか損益計算書に計上されていません。
過年度に係る有価証券報告書等及び決算短信等の訂正に関するお知らせ(PDFファイル)
当社海外子会社における不適切な会計処理に関する調査経過について(PDFファイル)
当サイトの関連記事
海外買収のつまずきから学ぶ(日経社説)
「 住設機器最大手のLIXILグループは、M&Aで一気に国際化した代表的な日本企業だ。13年に米アメリカンスタンダード、14年に独グローエを買収。しかし、16年3月期は中国で事業を営む傘下のジョウユウの破産に伴い最大330億円の損失を計上し、9割近い最終減益の見通しとなった。
もともとジョウユウはグローエの子会社だった。LIXILが今年4月にグローエ株を買い増しジョウユウも連結対象となったが、その直後に金融機関の指摘をきっかけに、巨額の簿外債務を抱えていることが分かった。
こうした経緯が示すのは、資産査定の重要性だ。LIXILはグローエ買収時にジョウユウの工場などを調べたが、その時は会計操作を発見できなかった。海外企業の全容を把握することの難しさを物語る。経験の浅い企業が海外で買収をする場合はなおさら、外部の専門家を活用した入念な査定が不可欠となる。」
まだ「計上し」ておらず、当期に計上を予定しているにすぎません。
(補足)
あるブログを見ていたら、グローエの買収について、以下の記事にふれていました。少し複雑なスキームだったようです。
膨張するLIXIL?積極果敢な海外企業買収で高まる財務リスク、効果に疑問の声も(2013年11月)(ビジネス・ジャーナル)
「LIXILはまず、日本政策投資銀行と議決権折半でSPC(特別目的会社)を設立。14年前半をめどに、SPC経由でグローエ株の87.5%を取得する。そしてこのSPCに対し、LIXILが普通株と優先株を合わせて992億円、政投銀が議決権付き優先株で500億円、三菱東京UFJ銀行など国内メガバンクが議決権なしの優先株490億円を出資する。
一方、グローエが抱えている約1600億円の負債は、国内金融機関が組成するノンリコースローン(非遡及型融資)に切り替える。返済原資はグローエが生み出すキャッシュフローに限定されるので、LIXILは返済義務を負わずに済む。この負債を含めた買収額が約3800億円になる。M&Aの専門家は、この複雑なスキームを「自社のバランスシートや格付けを悪化させることなく大型買収を行える絶妙な手法」と評価している。」
このとおりに実行されたのかどうかは未確認です。
保証債務による損失をいつ計上するのかについては、本来、買収スキームにさかのぼって検討する必要があるのでしょう。
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