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IHI、営業赤字に転落 工事の欠陥・遅れ発覚

asahi.com:IHI、営業赤字に転落 工事の欠陥・遅れ発覚 - ビジネス

IHI(旧石川島播磨重工業)が、08年3月期の業績予想の大幅下方修正を発表したという記事。「工事の欠陥や遅れが相次いで発覚し、多額の損失が出る見込み」とのことです。

「損失は大半が、同社の売上高の4分の1を占めるエネルギー・プラント事業で発生。新たに見込む営業損失は通期で計570億円にのぼる。うち発電用ボイラー事業などでは230億円の損失が出る見通しだ。

(中略)内需の低迷で他事業に人員を振り分けていたため、受注増に設計能力が追いつかず、生産・外注のトラブルによるやり直しや、工期の遅れが相次いだという。

 サウジアラビアで進めるセメント工場の建設では、インド系業者に下請けに出した原料貯蔵施設の工事の6割に重大な欠陥が見つかり、計130億円の損失が出た。」

このあたりは会計とは直接関係のない要因ですが、このほかに過年度の見積り誤りの疑いも浮上し、営業損失がさらに280億円分膨らむ恐れがあるそうです。

過年度決算発表訂正の可能性に関するお知らせ(PDFファイル)

このプレスリリースによると、工事進行基準における総原価見通しに織り込まれていたコストダウン施策の実現性の見積りに、あまいものがあったとのことです。

「調査委員会では,平成19年3月期決算に織り込まれたコストダウン施策を平成19年9月の時点で再評価し,実現性の低いものを損失として算定したところ,その金額は約280億円になりました。一方,平成19年3月時に作成されたプロジェクトの進捗に関する資料を再度点検したところ,見積等に甘いものがあり,その部分についてはさかのぼって訂正すべき可能性があり,したがって,約280億円の一部に平成19年3月期決算に影響するものが含まれている可能性が出てまいりました。」

請負金の見積り、総原価の見積り、進捗率の見積りという見積りの固まりみたいな会計処理が工事進行基準です。IHIのような実績のある企業ですら、プレスリリースによると、巨額の見積り誤りをしていた可能性があるわけですから、現在検討中のASBJの工事契約基準適用が、すべての上場企業・大会社に適切に導入されるのか、心配になります。

ちなみに、見積り誤りと見積りの修正は異なるものです。しかし、見積りの根拠を毎期きちんと残しておかなければ、あとの年度になって、過年度の誤りだった(遡及修正になる)のか、それとも当期の状況の変化に基づく修正(当期の損益に反映)なのかは判断がつきません。監査人にとっても判断が難しい場面が増えてくるでしょう。

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