IASBは金融商品会計基準の改正案を2009年7月14日に公表しました。(今週号の経営財務でも少し詳しく触れています。)
この改正は、G20や金融安定化理事会(FSB)の要望事項への対応の一環として、IAS39号の中の金融商品の分類と測定に関する部分を見直すものです。2009年末の決算に適用とのことです。
今後も見直し作業は継続され、金融商品の減損やヘッジ会計についても改正する予定です。
以下、改正案の概要資料によって、内容を簡単に見ていきます。
この改正案では、金融商品を、償却原価法によって測定するものと、時価によって測定するものに分類する基準を簡素化しています(この2つ以外の分類は認められない)。
(IASBの資料より)

まず、(1)融資の性格(元本や元本にかかる利息の支払いというキャッシュフローを生じさせる契約上の取り決め)を有する金融商品か、(2)契約上の利回りをベースにして管理されているか、という条件をクリアしていれば、償却原価法による測定となります(時価による測定のオプションもあり)。通常の貸付金、債券(国債や社債)は、(管理の仕方にもよりますが)償却原価法になります。
それ以外の債券や持分証券(株式など)はすべて時価評価となります。
(仕組み債などの?)組み込みデリバティブもこの分類に従って分類されます。「元本や元本にかかる利息の支払いというキャッシュフローを生じさせる契約上の取り決め」とはいえないケースでは時価評価となるのでしょう。
時価評価に分類された金融商品の時価の変動は、損益にすることが原則ですが、例えば戦略的持分投資などについては、配当も含めて、その他の包括利益に計上する、代替処理も認められます。この場合、いわゆるリサイクルは認められません。
日本基準でいうところのその他有価証券は、償却原価法の条件に当てはまらなければ(株式は当てはまらない)時価評価となり、損益処理ではなく直入処理を選択すれば、評価損益も、受取配当金も、売却損益も、すべて損益を通らず、包括利益に直入されることになります。
また、減損処理も不要となります。
経営財務などを読むと、リサイクルをしないことについて、批判も強いようです。しかし、減損処理(強制評価減)が不要になるのは大きなメリットです。
(日本基準と現行のIAS39号は少し違うようですが)時価の下落基準は30%か50%か、時価の回復可能性をどう判断するか、ナンピン買いした場合はどうするか、営業日が何日以上離れていないとクロス取引とみなして益出しを認めないこととするとか、減損処理や持ち合い株の売却を巡っては、いろいろと不毛な議論が多くて、企業や会計士を悩ましてきました。それがなくなるだけでも、改正案を支持する理由となります。(ASBJや会計士協会は多分反対のコメントを出すと思いますが・・・。)
ただ、いつまでたっても損益計算書に計上されないということだと、税務上はいつ益金・損金になるのかなど、細かい疑問点はわいてきます。