中小企業などが為替デリバティブで生じた損害の賠償を金融機関に求める「金融ADR」を申し出るケースが急増しているという記事。
「対応に苦慮した中小企業は、解約清算金の免除や損害の賠償を銀行に求めるため、全国銀行協会の紛争解決機関に斡旋を申し立てるケースが急増している。09年度の申し立て件数は36件だったものが、10年度に172件に急増し、今年度は4~6月の3カ月で、すでに110件に達している。
一方、金融ADRを通じて和解に至ったケースは、今年4~6月で50件と昨年の10倍以上に膨れ上がっている。金融ADRには、裁判のような公開の原則がないため、和解内容がどのようなものであったか詳細は不明であるが、「1件当たりの和解で生じる銀行の負担は1~2億円程度。解約清算金の全額と損害の半額以上を銀行が負担するのが大半で、損失の7~8割の負担を強いられるケースも少なくない」(メガバンク関係者)という。その潜在的な負担総額は2兆円にのぼるとも試算されている。」
そのうち、消費者金融の利息返還引当金と同様に、引当て計上しなければならなくなるのでは・・・。各銀行とも、中小企業が損害を被った(あるいは現在の為替レートで損害を被りそうな)デリバティブ取引は把握しているでしょうから、その損害額にADRや裁判に持ち込まれると予想される率と、銀行負担割合を乗じることによって、引当金の額は合理的に見積もることができそうです。
「「通貨オプション」といわれる為替デリバティブでは、中小企業があらかじめ設定された為替レートで外貨を買う権利(コールオプション)を購入する一方、銀行に同じ為替レートで外貨を売る権利(プットオプション)を売却する。プットオプションはコールオプションの取引額の2~3倍に設定されるのが一般的。このレバレッジ(てこの原理)で、円高が進むと損失額が2~3倍に膨れ上がる。
銀行は、この一連の通貨オプション取引により、かなり率の高い手数料が手に入る。さらに、その手数料は「アップフロント」と呼ばれ、取引が組まれた当該期の収益として前倒し計上が可能だ。公的資金返済の原資として、まさに格好の収益源であったわけだ。」
銀行におけるデリバティブ取引の会計処理はよく知りませんが、会計基準では時価評価が原則なので、中小企業を言いくるめて、自行に有利な条件で契約すれば、ただちに多額の利益を計上することができたのでしょう。期間の経過に応じて利益を計上していくしかない通常の融資とは大きく異なります。
金融庁のホームページをみると、昨年9月末現在の調査結果が掲載されています。
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中小企業向け為替デリバティブ取引状況(米ドル/円)に関する調査の結果について(速報値)
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