東芝がウエスチングハウスののれん減損処理を行わない根拠としている2029年度までに64基の原発を新規に受注するという計画は、東芝社内でも「非合理的」と認識されていたという記事。
「東芝は本誌(日経ビジネス)が指摘するまでWHの経営状況を開示せず、2012年度と2013年度に巨額減損を計上し、赤字に陥っていたことを隠蔽してきた。室町は会見で「不十分な開示姿勢を深くおわびしたい」と陳謝。2006年の買収以降、WHが2億9000万ドル(約350億円)の累積営業赤字に陥っていることも明らかにした。
一方で2014年10月の「減損テスト」の結果、東芝が連結で抱えるのれんについては減損が不要であると説明した。そのうえで発表したのが、冒頭の64基計画である。ただこの計画も、内部資料を基に分析すると“結論ありき”で策定されたものと言わざるを得ない。」
2014年に社内でやり取りされたとされるメールでは、監査人についてもふれています。
「「監査人の印象も悪くなるので、のれん減損テスト事業計画上の64基を今から減らす必要はないが、どこかの時点で冷静になってリーズナブルなレベルに見直す必要がある」
受信したのは、WH会長の岡村潔(現・東芝執行役常務)など複数のWH幹部。64基計画は“非合理的”なレベルだとして、近い将来に引き下げるべきだとCFOの立場から示唆している。この数字が生まれた背景には、WHの監査を担当する米監査法人アーンスト・アンド・ヤング(EY)との確執がある。
さらにメールを引用する。
「昨年度(2012年度)はEYが聞く耳もたずの減損ありきで割引率を上げていったので、やむを得ず苦し紛れに基数を増やす結果となってしまったと説明を受けたので、それに対してクレームしてパートナーも変えさせた」
WH単体では2012年度に約9億3000万ドル(約762億円、為替レートは当時=以下同)の減損を計上し、メール送信時点では2013年度にも減損を認識する可能性が高まっていた(実際に約394億円の減損を計上)。
WHでは主に将来の収益予測を基に減損テストを実施し、減損の要否を判定する。2012年度の監査に不満を持った久保は、EYと提携する新日本監査法人に担当を変えるよう圧力をかけた(詳細は日経ビジネス11月16日号を参照ください)。
その後もEYはWHの収益力を低く見積もり、東芝に対して減損テストの厳格化を求めた。テストの結果、東芝本体が抱えるWHののれんの減損につながれば、厳しい財務状況がさらに傷んでしまう。東芝はこれを回避するために、EYを納得させるための「苦し紛れ」の計画として、64基の新設受注計画を示したわけだ。」
ここまであばかれて、監査契約を継続できるのだろうかと思います。
不正会計の東芝に74億円前後の課徴金納付勧告へ(NHK)
課徴金を勧告する際には、当局は、虚偽記載の内容を示さなければなりません。それが、東芝の訂正報告書どおりで、WHののれんについてまったくふれないものだとしたら、当局も、のれんを減損処理しない処理を容認したことになるのでしょう。
当サイトの関連記事(11月27日の記者会見について)
記者会見の会社資料によれば、直近の減損テストでは新規受注46基相当を仮定しているといっています。
(補足)
東芝、初の原発輸出が今も「塩漬け」だった
米国でWH以外にも厳しい案件が残っている(東洋経済)
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