特別調査委員会の調査報告書(開示版)公表に関するお知らせ(PDFファイル)
DTS(東証プライム)のプレスリリース(2024年8月6日)。
海外子会社(所在国(報告書ではY国)や会社名(X社)は伏せられています)における顧客関係者へのキックバックや不正な支払い(わいろ?)の疑惑について調べていた特別調査委員会の報告書を公表するとのことです。開示版の調査報告書(60ページほどのもの)が添付されています。
また、2024年3月期決算については、有価証券報告書の提出が遅れていますが、延長後の提出期限である2024 年8月 15 日に向けて、準備を進めているとのことです。
主に、「金融関連事業における顧客関係者に対する不適切な支払い」(報告書25ページ~)と「税務当局関係者等に対する不適切な支払い」(報告書27ページ~)が認定されています。
不正支出の金額は約1億円で、大半は顧客関係者へのキックバックだったようです。
X社への出資の際のDD の実施状況などについてもふれています(見落としているかもしれませんが出資の時期は明示していない模様)(報告書17ページ~)。出資規模が小さく限定的なDDを実施したそうです。出資後は、2020 年 3 月期に
売上 28.5 百万円の前倒し計上があり、CEOが交代しています(報告書19ページ)。
監査人は2021 年 3 月期以降新日本で、それ以前はトーマツでした(報告書13ページ)。
X社に対する新日本の監査手続は...
「(7) EY 新日本による監査の状況
EY 新日本は、X 社に対しては、DTS 社の連結財務諸表に与える相対的な規模が極めて僅少であったため、現地の法定監査人に対する指示書の送付・成果物のレビューは実施せず、プライマリーチームによるグループ・レベルの分析的手続のみを実施していた。
なお、2023 年 3 月期において、DTS 社経理部が X 社における収益認識及び退職給付会計の内容を確認することを目的として、EY 新日本のメンバーファームである現地会計事務所が X 社に現地往査し、収益認識及び退職給付会計に関する項目について合意された手続を実施した。」(報告書24ページ)
ただし、現地監査人による会計監査は受けていたそうです。
「X 社は、DTS 社の子会社となる前の 2011 年 3 月期から、Y 国の会社法上の法定監査人及び所得税法上の税務監査人として、F 社を選任している。当委員会が確認した過去 5 年間、X 社は、いずれも適正意見の監査報告を受けている。」(報告書21ページ)
内部通報後の新日本とのやりとりについても、詳しめに記述されています(報告書34ページ~)。
新日本とのコミュニケーションは必ずしもうまくいっていなかったようですが、「DTS 社の役職員において、本事案の存在を意図的に EY 新日本に隠蔽し、あるいは報告を先延ばしする動機はなく、そうした事実は認められない」とされています(36ページ)。