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Applying IFRS: コロナウイルス感染拡大におけるIFRS会計上の留意点 2020年7月(新日本監査法人)

Applying IFRS: コロナウイルス感染拡大におけるIFRS会計上の留意点 2020年7月

新日本監査法人から、「Applying IFRS: コロナウイルス感染拡大におけるIFRS会計上の留意点 2020年7月」と題する小冊子が公開されました。

2019年12月期向けに「Applying IFRS-コロナウイルス感染拡大におけるIFRS会計上の留意点」を2月に公表していますが、今回のものは...

「本稿は、2020年に終了するIFRSの年次財務諸表及び期中財務報告を作成する際に、新型コロナウイルスのパンデミックに関する財務上の影響に対処するにあたり、企業が考慮すべき会計上の留意点をあらためて説明するためにアップデートしたものである。さらに、期中財務報告に関する開示上の留意点についても本稿では取り上げている。」

50ページ弱のものです。

原文である英語版へのリンクも同じページに掲載されており親切です。翻訳がわかりにくい箇所は原文で確認することができそうです。

以下のような論点を取り上げています。

・ 継続企業
• 金融商品
• 非金融資産の減損
• 政府補助金
• 法人所得税
• 保険契約から生じる負債
• リース
• 保険による回収
• 不利な契約に関する引当金
• 公正価値測定
• 収益認識
• 棚卸資産
• 後発事象
• 財務諸表に関するその他の開示規定
• その他の会計上の見積り
• 代替的な業績測定値及び開示

例えば「金融商品」のうち「予想信用損失(ECL)の評価 」については...

「欧州銀行監督局(EBA)、欧州中央銀行(ECB)、欧州証券市場監督局(ESMA)及び英国の健全性規制機構(PRA)をはじめとする数多くの健全性及び証券規制当局(以下、規制当局)が、パンデミックの規制上及び会計上の影響に関するガイダンスを公表している。2020 年 3 月、国際会計基準審議会(以下、IASB 又は審議会)は、ECL に関し一貫性のある会計基準を適用できるよう、教育文書を公表した。当該文書は、規制当局からのガイダンスとほぼ一致しており、IFRS 第 9 号は、信用リスクの著しい増大(SICR)が存在するかどうかを判断する明確な基準又は機械的なアプローチを定めておらず、また企業が ECL を測定するための将来に関するシナリオを決定する際の厳格な基準を定めている訳ではない、と強調している。」(一部を抜粋、以下同じ)

「政府補助金」については...

「企業は政府補助金の付帯条件を遵守すること及び補助金が受領されることについて合理的な保証がある場合にのみ、政府補助金を資産として認識する。」

「政府補助金は、企業が、補助金が補填を意図する関連コストを費用として認識する期間にわたって規則的に純損益に認識しなければならない。...補助金がすでに発生している費用や損失に関係する、又は将来的に関連するコストが発生することはないと見込まれる企業に緊急の財務支援を提供するためのものである場合、補助金は受け取りが可能になった時点で収益に認識しなければならない。当該補助金が受け取り可能になった期間の収益として計上される場合、企業は、その影響を明瞭に理解できるように開示しなければならない。」

「収益認識」については...

「パンデミックを受けて行われる意思決定(例:契約の変更、回収可能性に懸念がある顧客との取引、設定価格の変更)は、既存の及び将来の契約の会計処理及び開示に影響を及ぼす可能性がある。」

「棚卸資産」については、「正味実現可能価額の決定」のほかにも...

「例えば、需要の低下又はロックダウン期間中の強制的な閉鎖により、生産水準が低下した、又は工場の操業が停止した企業も存在する。生産量が平均を下回る場合、各生産単位に配分する固定製造間接費を増やしてはならない。代わりに、配賦されなかった間接費は、発生した期間に費用として認識する。逆に、例えば買い占めなどにより、企業が通常より高い水準で生産を行うこともある。こうした状況では、棚卸資産が取得原価を上回る形で測定されることがないように、各生産単位に配分される固定製造間接費の金額を引き下げる必要がある。」

「代替的な業績測定値(APMs)及び開示」については...

「例えば、証券監督者国際機構(IOSCO)は、2020 年 5 月 29 日に声明を公表し、他の注意事項とあわせて、パンデミックによるすべての影響が非経常とは限らないないため、企業は調整された利益指標やAPM の適切性を、注意深く評価すべきであると強調している。企業は、財務諸表利用者の誤解を避けるため、調整額が具体的にどのようにパンデミックに関連付けられたかを説明する必要がある。さらに、IOSCO は、“新型コロナウイルス関連と特徴付けらえた仮定の売上高や利益指標(例えば、新型コロナウイルスの影響がなければ、企業の売上高や利益は XX%増加していた、といったもの)を非 GAAP 測定値とするのは適切ではない”と強調している。」

これはIFRS適用会社に限らない話でしょう。IOSCOに加盟している日本の金融庁から、何か注意喚起しないのでしょうか。

全体的には、金融商品(銀行向けの解説を含む)やリースなどが、比較的詳しいようです。
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