特別損失計上でも2期連続で最高益を更新へ
積水ハウスが、土地買収をめぐる詐欺(当サイトでも取り上げました)の被害に遭い、多額の損失を計上したにもかかわらず、業績が好調であるという記事。
詐欺被害について...
「絶好調の業績に影を落とすかと思われた“あの事件”とは、東京のJR五反田駅から目と鼻の先に位置し、すでに廃業して数年経つ日本旅館「海喜館」の土地を巡る詐欺被害のことだ。
今年6月、積水ハウスは同地の所有者を名乗る人物に63億円を支払い、分譲マンション用地として購入した。購入代金の決済日に所有権移転登記の申請をしたが、所有者側の提出書類に偽造書類が含まれており、登記申請が却下された。それ以降、所有者を名乗る人物と連絡すら取れなくなったというのだ。」
「不動産にかかわる詐欺事件として警察へ届け出たが、63億円はほぼ回収不能とみられる。このため所有者を名乗る人物からの預かり金7.5億円を相殺し、第2四半期に55.5億円の特別損失を計上した。」
「犯罪に巻き込まれた可能性が高いとする一方で、リスク管理上の問題点を調査・検証するために第三者委員会を立ち上げ、原因究明と再発防止策の検討を進める。」
「...ある大手ゼネコンの役員は、「バブル期には同様な事件が多発していた。昔はそれが経験となって、怪しい取引に対して勘が働いたものだ。世代が替わり、鼻の効く人が減っていることが原因ではないか」と指摘する。」
業績の方は...
「同社が9月7日に発表した2018年1月期の上期業績は、売上高が1兆0094億円、営業利益が903億円で着地した。期初の会社計画と比較しても、売上高は約400億円、営業利益も約150億円の上振れとなった。
さらに詐欺事件に伴う特別損失55億円強を計上したにもかかわらず、当期純益は前年同期比17.2%増の610億円と、半期での過去最高を更新した。」
特に賃貸住宅が好調なのだそうです。
平成30年1月期 第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)(積水ハウス)(PDFファイル)
詐欺事件関連の注記。
「(四半期連結損益計算書関係)
貸倒損失
分譲マンション用地購入時の取引事故により発生した未回収額について、特別損失を計上しています。」
詐欺犯人に対するカネを返せという債権があって、それが現時点では回収不能となっていると考えれば「貸倒損失」という科目名で間違いではないのでしょうが、そもそもなぜ詐欺犯人に対する金銭債権が発生してしまったのかを考えると、もっと適切な科目名がありそうなものです。
分譲マンション用地の取引事故に関する調査対策委員会の設置について (積水ハウス)(PDFファイル)
分譲マンション用地の購入に関する取引事故につきまして(8月2日)(積水ハウス)(PDFファイル)(再掲)
探偵が調査。積水ハウスから63億円を騙し取った「地面師」の黒幕(MAG2NEWS)
「積水ハウス側は、この件は刑事事件として被害を届け出ているからと沈黙を貫くが、唯一公表したことは、この件に関わった責任者が自殺をしたという噂は、そうしたことはないということであった。
しかし、上場企業でもある「積水ハウス」ともあろう不動産のプロが、ここまで杜撰な取引を行ったことは、誰が見ても不自然さが残るのだ。実際、「海喜館」周囲のお店などで確認を行えば、すぐに本人ではないと見抜けたはずなのだ。ところが、足を使った調査活動は、どこにいっても確認できない状況であったから、十分な調査を蹴飛ばして、取引を強引に進めた、ということがわかる。
それにしても、ほとんど調査をしていない上に、所有者のS子さんではない人物と取引をしてしまったということを認知したのは、仮登記をしてしばらく経ってから、土地の測量を始めて「海喜館」の周辺にパイロンなどを起き始めてから、S子氏側の弁護士に阻まれてからなのだ。
その様子を近くで見ていた近所の住人によれば、積水ハウスの担当者は真っ赤な顔をしながら、「この人S子さんですよね?」と確認を取ってきたそうだ。「違うよ」と答えると、みるみるうちに顔面が蒼白になり、その場で呆然としていたということであった。」
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