国際決済銀行の中央銀行総裁会議で議長を務めたトリシェ欧州中央銀行(ECB)総裁の記者会見の記事です(1月11日付)。
「トリシェ総裁は会議後にバーゼルで記者会見し、「市場参加者と金融機関によるリスク管理を大幅に向上させる必要がある」とし、「最重要課題だ」と語った。」
金融庁のホームページにこのときのプレスリリースが掲載されています。会計基準のことにもふれています。
中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループによるプレス・リリース「中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループがバーゼル銀行監督委員会による一連の改革案を補強」の公表について
(原文)Group of Central Bank Governors and Heads of Supervision reinforces Basel Committee reform package
(金融庁仮訳より)
「引当: 会計基準設定主体と監督当局が、期待損失に基づく真に頑健な引当手法(a truly robust provisioning approach based on expected losses (EL))を構築することが不可欠。
バーゼル委が2009年8月に発表した「IAS39号(金融商品に関する国際会計基準)の見直しに資する基本原則」を踏まえ、健全な期待損失に基づく引当手法は、以下の主要な目的を達成すべきである。
1)公正価値会計の範囲拡大を伴わない形での、発生損失アプローチの欠点への対処、
2)一貫性のある頑健な方法による、信用損失の早期特定・認識を通じた、適切かつよりフォワード・ルッキングな引当の促進、
3)現行の発生損失アプローチの下でのプロシクリカリティに対する懸念への対処、
4)より広範な定量的及び定性的な信用情報の活用、
5)銀行のリスク管理及び自己資本充実体制の活用、
6)透明性の確保と、監査人、監督当局、その他の関係者による適切な内部・外部検証の実施。
以上の原則と整合的であり、不況期に利用可能とすべく、好況期に信用エクスポージャーが拡大する時に引当を積立てることを促進する、いわゆる「景気循環を通じた(through-the-cycle)」引当手法が認識されるであろう。バーゼル委は、監督当局及び会計基準設定主体による検討に資するため、2010年3月の会合までに、これらの原則を実務的な提案へと具体化すべきである。」
また、ちょうどいいタイミングで、ASBJのサイトに、IAS39号の見直し(減損に関する部分)の公開草案の翻訳が掲載されています(1月15日)。減損といっても、株式などは時価評価(評価差額は損益またはその他の包括利益)ですから対象外であり、貸付金(又は償却原価で測定される他の金融資産)が対象になっています。
IASB、金融資産の減損についての提案を公表
(IASBプレスリリースの翻訳より)
「本提案においては、予想損失の認識は、損失事象が識別された後だけではなく、貸付金(又は償却原価で測定される他の金融資産)の存続期間にわたって行われる。これは、現状では損失事象が識別される前に発生する金利収益の前倒し計上を避け、貸出の決定をより良く反映することとなる。したがって、本提案においては、貸倒損失に対する引当は、金融資産の存続期間にわたって積み上げられていく。」
リスクの高い貸し出しはそれを織り込んで金利も高くなります。実際に相手先の破たんなどが発生するまでは、リスクが高いことによる金利の上乗せ部分も含めて収益が計上されるので、その間、収益が過大計上ではないかという理屈なのでしょう。
ただ、それでは実務上どうやればいいのかについては、検討途中のようです。
「IASBは、予想損失モデルへの移行が重大な実務上の難題であることを認識している。」
金融機関の実務は(担当していないので)よく知らないのですが、貸出した途端に、過去の貸倒率に基づく引当を行う日本基準は、もっともフォワード・ルッキングな引当といえなくもありません(たぶんIASBの案はもっと精緻なものだとは思いますが)。
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