金融庁は、金融機関等へのヒアリング等を通じたモニタリングに関する外部評価を実施した結果をとりまとめた報告書を、2018年7月3日に公表しました。
プロティビティ合同会社に委託した50ページほどのものです(ただし、ウェブサイトに掲載されているのは「報告書概要」)。
冒頭のまとめのページを見ると、「金融機関側から全般的に肯定的な評価を受けている」、「金融機関におけるモニタリングに対する満足度は高い(しかし過渡期と認識されている)」といった結論になっていますが、個々の項目を見ると、マイナス評価もあるようです。
以下マイナス評価から適宜抜粋。
「水平レビューの考え方は、各社のビジネスの創意工夫とは逆行し、業界で画一的施策に陥るおそれがある。」
「公表文書で発せられる各種施策や用語は、抽象概念や情緒的で文学的な表現が多く、分かりにくい。定義が曖昧であることにより解釈に自由度が生まれると、過剰な反応や行き過ぎが発生するおそれがある。行政が発する一言一句の重みを認識すべきである。」
「データから異常値等を分析する能力、あるいは、マーケットを監視するシステムが金融庁側に不足していると感じる。」
「金融庁より、当行独自にシミュレーションを実施するよう指示があったが、金融庁側のシミュレーションがベストとのスタンスであった。金融庁側のシミュレーションを批判した者が本庁に呼び出され詰問されたという事例を耳にしているため、当行では異論のある点についても表立って反論することができない。」
「マクロの視点に偏重しており、ミクロの視点が不足している。地域の特性や歴史、また、現場で起こっていることへの理解が不十分であり、結果として分析根拠に説得力がない。より複眼的であるべきである。」
「プリンシプルとはいっても、各論に入ると金融庁側には正解となる回答イメージがあり、その「正解」と合致する回答をしない限り、繰り返し同じ質問を投げかけてくるといったことがよくある。自由な議論ができないのであれば、指針となる基準を提示すべきである。」
「特定の仮説に誘導していこうとする姿勢を感じた(「評価損を出していること自体悪である」、「収益は清く正しく稼ぐべき」、「カードローンビジネスは縮小すべきである」、「貸出利息および手数料以外は不適切な利益である」、「地銀には外債等のリスク管理能力はないため外債投資は縮小すべきである」等)。」
「マクロ分析に基づき得られた仮説を全国の金融機関に一律に適合させようとしており、「中央の目線」の押しつけを感じた。」
「あまり「対話」を感じられなかった。仮説ありき、結論ありきの証拠集めのための対話であり形式的と感じた。」
「フィードバックは、インタビュー結果のみに基づいているように思われ、提出資料・データを十分に分析している証跡が見当たらない。」
「フィードバックを受けてはいるが、新しい気付きなど有益な情報は得ていない。当社において既に気付いている課題を改めて指摘・書面化されるのみである。」
「事業性評価による融資拡大は本業収益拡大につながるものではなく、実務未経験者による机上の空論である。」
「モニタリングの質が個人の能力に依存していることに不安を感じている。現在のような人事ローテーションでは金融庁側に専門性が育たないのではと思料。組織として引継ぎを確り行うことと、長期的視点で人材育成を行うことの2点を要望したい。」
「担当官は、マーケットや証券業務の知見をあまり持っていないという印象である。また、リスク商品の購入を含めた中長期分散投資の経験がないものと思料。」
「金融庁内での幹部や上席を意識した発言が多く(「幹部がこのように言っている」等)、現場担当官には裁量の余地がないのではないかと感じた。」
厳しい意見もあるようですが、外部評価を実施しただけでも、進歩なのでしょう。
ただし、検査や監査する側が、検査・監査を受ける側からの評価が高すぎるのも、気味が悪い話で、少し嫌われるぐらいがいいのかもしれません。
監査事務所への金融庁検査についても、こういう調査をやってみては。
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FSA
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