企業会計基準委員会は、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」の改正基準、及び企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」(新設)を、2008年3月10日付で公表しました。
会計処理に関する改正ではなく、「金融商品に関する定性的情報や時価情報等の開示の充実を図る」ための改正です。2010年3月31日以後終了する事業年度から適用されます(四半期は翌事業年度から適用)。一部の規定についてはさらに1年適用を遅らせることもできます。
具体的には、改正会計基準の中で、注記事項という以下のような規定が新設されています。
「40-2.金融商品に係る次の事項について注記する。ただし、重要性が乏しいものは注記を省略することができる。なお、連結財務諸表において注記している場合には、個別財務諸表において記載することを要しない。
(1)金融商品の状況に関する事項
1) 金融商品に対する取組方針
2) 金融商品の内容及びそのリスク
3) 金融商品に係るリスク管理体制
4) 金融商品の時価等に関する事項についての補足説明
(2)金融商品の時価等に関する事項
なお、時価を把握することが極めて困難と認められるため、時価を注記していない金融商品については、当該金融商品の概要、貸借対照表計上額及びその理由を注記する。」
注記方法や時価の算定方法については、適用指針で詳しく規定しています。有価証券やデリバティブだけでなく金銭債権や金銭債務も時価情報の開示対象に含めるというのが、大きな変更点です。
また、定性的情報として「金融商品の状況に関する事項」が詳しく開示されるようになります。特に金融機関は「金融商品に係るリスク管理体制」について、市場リスクに関する定量的分析を利用しているか否かに応じて、(i) 定量的分析に基づく情報及びこれに関連する情報(利用している場合)、(ii) リスク変数の変動を合理的な範囲で想定した場合における貸借対照表日の時価の増減額及びこれに関連する情報等(利用していない場合)、の注記が求められています。
実務に影響を与える箇所ではありませんが、従来「市場価格のない」金融商品といっていたのを「時価を把握することが極めて困難と認められる」金融商品という表現に直しています。いまだに「時価のない有価証券」といった表現が財務諸表の注記などに見受けられますが、金融商品なのですから、時価や市場価格がないということはありえず(値段がなければどうやって取り引きするのでしょうか)、単にそれを把握することが難しいだけだということです。
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