携帯電話向け情報配信のサイバードホールディングスが、関係会社株式を再評価する結果、2007年3月期の連結最終損益が72億円の赤字になるという記事。
同社プレスリリース(PDFファイル)
これによると、まず2006年9月中間期で、持分法適用会社であるJIMO社の株式について、単独決算で評価損を計上し、その影響で持分法の投資差額を一挙に落としたことにより約20億円の影響が出ています。JIMO社は10月に株式交換によりサイバードの完全子会社となっていますが、単独で評価損を計上するのは、9月25日の上場最終日の株価が取得原価と比べて著しく下落したことによるものだとされています。
2007年3月期では、JIMO社統合の際に計上されるのれんを一挙に落とす(約46億円)予定です。これも中間期と同じ理屈のようです。
つまり、JIMO社の株価が下がったから、単独決算では金融商品会計基準にしたがって関係会社株式評価損を計上し、連結決算では、単独の株式評価損を、連結上、のれんの評価に反映させるべきという会計士協会の実務指針にしたがって、のれんの減損を計上したということでしょう。
しかし、のれんの減損は、時価ではなく回収可能価額を使って行うというのが、減損会計基準の趣旨ですから、それと反した会計処理になってしまいます。そもそも企業を買収するときには、買収対象の株価に買収する側で見込まれるシナジー効果も加味して、買収の対価を決めるのですから、時価に合わせて評価減するのでは、何もなくてものれんの減損が生じることになります。
特に株式交換の場合、買収する側の株価が下がる→交換比率が決まっていれば買収される側の株価も下がる→単独決算で評価減を計上→のれんの減損を計上、というように、買収する側の株価で決算数値が変わってしまうおそれがあります。
減損会計基準制定の際には、不動産の減損が注目され、のれんの減損はほとんど議論されていなかったように思われます。しかし、企業結合会計基準適用により、これからはそうはいかなくなるでしょう。
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