金融庁の証券取引等監視委員会が、定性的情報の開示に注目しているという記事。
「証券取引等監視委員会(SESC)が、上場企業の情報開示の審査を厳格化する構えだ。有価証券報告書の定性要因についての記述のうち、業績にかかわる部分に虚偽記載がないか厳格に見極め、不正があれば摘発する方針。近年、上場企業の粉飾決算やデータ偽装などが相次ぎ、その根本的な理由にさかのぼって改善を促すのが目的だ。」
「有価証券報告書の「事業等のリスク」「対処すべき課題」「コーポレート・ガバナンスの状況等」の項目で触れられているものもあり、適切な業務の進め方や法令を軽視する企業カルチャーが潜みやすい部分でもある。何か不祥事が持ち上がるたびに、有価証券報告書に記載されている内容と、実際の業務の進め方が大きく食い違っていることもしばしばだ。」
「...特殊な例を除けば、名の通った一般の企業の有価証券報告書の定性要因に虚偽記載があったとして摘発された例は「聞いたことがない」(証券市場に詳しい有識者)。これが摘発されるようになれば、企業に緊張を求める画期的なことであり、有価証券報告書や内部統制報告書の定性要因に関する記述は、体裁を整えるだけの空文ではいられなくなる。
SESCの関係者は、データ偽装の発覚で経営トップが引責辞任したり、経営の根幹が揺らいだ企業の名前を挙げており、これらが定性要因の虚偽記載になる可能性を見極めようとしているようだ。」
監視委からの公表物で、定性要因開示重視という趣旨のものはまだないように思われます。記事にあるように、それで摘発されたという例もほとんどありません。(アーバン・コーポレーションという会社が、財務諸表本表ではなく後発事象注記の虚偽表示で摘発された例はあります。)
監視委として、方針を変えたということでしょうか。
こういうことがなくても、格好をつけて、実態とかけ離れたことを書くのは避けた方がよいとは思いますが...。
有報だけでなく内部統制報告書にもふれています。たしかに、「虚偽記載発覚→内部統制不備が原因→内部統制報告書も虚偽記載(内部統制の評価をきちんとやっていなかったような場合)」というルートは考えられます。ただし、データ偽装のような、財務報告と直接的関係のない事件は、そもそも内部統制報告書の対象外なので、それで摘発されることはないと思います。
ちなみに、1月に公表された監視委の活動方針では、「検査・調査において、法令違反等が認められた場合、行政処分勧告等を行うだけでなく、問題の全体像を把握した上で、根本的な原因を究明・指摘し、再発防止につなげていきます」ということはいっています。
当サイトの関連記事(監視委の中期活動方針について)
その2(アーバン・コーポレーション処分事例)
最近の「企業会計」カテゴリーもっと見る
電通グループの25年12月期、3期連続最終赤字に 海外で人員削減(日経より)

会計ソフトのフリー、創業以来初の最終黒字13億円 25年6月期(日経より)

「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の開示内容の分析について≪2025年3月決算会社まで≫(東京証券取引所)
香港高裁、華南城に清算命令-資産規模では中国恒大以降で最大(ブルームバーグより)/中国不動産大手「恒大グループ」 株式の上場廃止を発表(NHKより)
創業133年の米コダック、事業停止の危機か(CNNより)
議決権行使禁止の仮処分決定の受領及びZEDホールディングス株式会社臨時株主総会開催延期に関するお知らせ(クシム)/連結子会社における仮処分の認容決定に関するお知らせ(ネクスグループ)
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2000年
人気記事